ガザ側のラファで23日、イスラエル軍の攻撃を受けた密輸トンネルの修復にあたるパレスチナ人=田井中雅人撮影
パレスチナ自治区南端のラファにある密輸トンネルの出入り口=井上写す
【ラファ(パレスチナ自治区ガザ南端)=井上道夫】パレスチナ自治区ガザ南端とエジプトとを地下で結ぶトンネルは、今回のイスラエル軍の攻撃で大きな打撃を受けた。イスラム過激派ハマスの武器調達ルートになっているとして、集中爆撃を受けたためだ。しかし、現場では早くも、崩れたトンネルの復旧作業が始まっている。
エジプトとの境界まで約500メートル。ラファ南部に、粗末なトタンで覆われた掘っ立て小屋がずらりと並ぶ一角がある。中をのぞくと、地下への入り口がぽっかりと口を開けている。地元の顔役は「密輸はラファの主要産業だ。トンネルの建設作業員を含め数千人が携わっている」と話す。
その一つを訪ねると、地下約30メートルで作業する男性のかけ声にあわせ、土を山盛りにしたバケツが次々に地上に引き上げられていた。イスラエルが攻撃を停止した18日から8人一組、2交代制で突貫工事を続けているという。リーダー格の男性(32)によると、このトンネルの総延長は約8キロ。建設費用約9万ドル(約800万円)は10人以上の仲間が「出資」し、昨年11月に貫通したばかりだ。
密輸物資は食料品や衣服、たばこ、さらに羊などの家畜も。最初の1カ月で約1万ドルの利益が出て「1年以内に元手を回収できる」と喜んだのもつかの間、空爆で出入り口がつぶされた。地下の被害も確認中だが、「我々は、こんな攻撃ではくじけない。すぐに元通りにしてみせる」と意気軒高だ。
一帯でトンネル掘りが盛んになったのは、イスラエル軍がガザから撤退した05年以降。07年にハマスがガザを武力制圧し、イスラエルによるガザ封鎖が強化されてからは、生活物資の不足が深刻化して市民生活はすっかりトンネル頼みの状態だ。
一方、ハマスの武器密輸ルートを断ちたいイスラエル軍は今回、千カ所以上あるとされるトンネルの8割を破壊したとしている。