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聖典の発見と神聖宗教国
そんな時代が長く続き、あるとき、人民の中に「ファーウス」から不可思議な知識をえられる者が現れ始めた。彼らは「ファーウス」から得られた不可思議な情報の内、理解できるものだけを集めていき、その知識を生活に応用し始めた。度重なる成功や失敗から、彼らはそれらが古代の伝承や物語に出る力に近いことに気づいた。
しかし、その知識は周囲の者にはあまりにも理解しがたいものであり、彼らは気がふれた者として迫害された。彼らは迫害を避け、やがて同じ力を持つ者たちを集めて「ファーウス」の周辺に住むようになった。このときより、彼らは名を失った「ファーウス」を聖なる知識の源泉として太古文明語で「クラトー(元の意は原典、原点、原初、ここから「聖典」と訳す)」と呼ぶようになり、聖典のある地を彼らは「デオルタ・ハーロ(希望の光輝)」と呼んだ。
解明された聖典の力によって、彼らは惑星全土を従えた。 だが、それは武力的侵攻によるものではなかった。聖典の力を認めた多くの人民は、その力に畏怖しつつも、時に飢餓や苦難において聖典と彼らの力を求め、そして彼らもその力を惜しみなく提供した。こうしたことを永い時をかけて繰り返した結果、畏怖は崇拝へと変わって行き、聖典の元に全ての人民が集ったのである。
これが神聖宗教国の始まりと言われる。
生命船生成技術の確立
彼らは迫害されていた民から、一変して崇拝される対象へと変わった。この時より、無知であった暗黒時代から聖典の解読と応用の時代が始まったのである。彼らは、聖典を崇拝する多くの民の中から、さらに同じ能力を持つ者たちを集め、より聖典の解読を進めていった。そして古き伝説や伝承から語彙を推測し、とうとう「空飛ぶ船」の知識を得るにいたった。
これこそが第一聖典第三章「神技乃章」第二篇「力ノ舟篇」の解読であった。
しかし、それは我々地球人が、「空飛ぶ船」と聞いたときに想像する物体とは大きく異なる物であった。それは生命体であり、何よりも空ではなく宇宙を飛ぶ船であった。なんと彼らは「生きた宇宙船」を手に入れたのである。
彼らはそれを箱船や使徒船と名づけ、それを用い、空を超え宇宙へとはばたいた。そして、かつての神罰大戦で破壊された二重惑星の片側、すなわち第二母星の残骸の中で、ついに彼らの悲願であった第九聖典の破片を発見したのである。
彼らが第九聖典を欲していたのには理由が在る。第九聖典は、太古文明文字の文法や語義が記録されている想像を絶する巨大な辞書、すなわち語彙編纂であったからである。
第九聖典の破片の発見は、それまでの神聖宗教国での推測的な不完全な解読から、大きく世界を変えた。それまで未解読であった第一聖典第三章「神技乃章」第一篇第三十二節以降、すなわち「光ノ舟篇」の解読を可能にしたのである。
この解読によって得られた生命船が「主神力船」である。
しかし語彙編纂の第九聖典は破片であり、いまだ多くの語彙の意味が理解できぬままであった。また解読できたものも、神聖宗教国人に理解しがたい概念が多く「光ノ舟篇」の解読はひどく中途半端なものとなった。結局、理解できない部分は神秘的な儀式による誤魔化し的手段、要は「祈祷」や「いけにえ」といったもので彼らなりに補完されるようになった。
故に生成技術の未熟は如何ともしがたく、結果、生成された主神力船はなんとも中途半端なものであり、再現率も60%台と非常に低く、聖典中に示される「完全体」と呼ばれる本来の性能から著しく劣っていた。
それでもこの主神力船は、彼らをして驚嘆せしめるには充分な力があった。何よりもそれまでの生命船とは異なり、あらゆる物を貫徹する光の矢を放つのである。彼らの驚きはいかばかりであったか推測もつかない。
神聖宗教国の船全般に見られる白褐色~白色の船体、その主物質はほとんどが珪素ないし、鉱物によって構成されている。珪素というとどのような物質か想像がつきにくいが、地球上で言うと我々に最も身近なものは「石」である。神聖宗教国の船は、この珪素という無機物質をベースとする生命体、すなわち「無機生命体」である。
使徒船 | 主神力船 |
我々人類が、有機物質をベースとする生命体、すなわち「有機生命体」であり、有機成分による組織や器官を持つのと同様、生命船にも同様のものが存在する。特徴的なものを挙げるだけでも、
… | 循環経束 | |
… | イル・ドークト装甲 | |
| … | キルリアンビーム |
… | 主脳倉・アヴァルーン・覆水胞 | |
… | 心源 | |
… | 旋翼・球冠体 |
の各器官が存在する。以下、各器官の説明となる。
神経・エネルギー循環器官「循環経束」
生命船の神経器官は「循環経束」と呼ばれる。
通常、神経と言えば情報伝達の回路を指すが、生命船の神経は、各部位ごとに器官小脳と呼ばれる小単位の判断器官が有り、これを統括する判断器官として、船全体に対して大きな論理回路を形成しており、神経というよりもほとんど脳のそれに近い。また心源(後述)にて増幅された操者のE.S.P.やキルリアン光を諸器官にもたらす機能、すなわち循環器官をも兼ねており、人間で言えば、この器官一つで脳と神経と血管の役目を持つ。
循環経束は、モアサナイト、純粋コランダム、水晶で構成される。これらは船の主要部には導E.S.P.性・光減衰率の低いモアサナイトでできており、抹消部には純粋コランダムや水晶によってE.S.P.光が回される。判断分岐にあたる部分には、不純物構成で色の変わる純粋コランダムで構成されており、この結晶構造をE.S.P.でリアルタイムに相転移させることで、光回路として成立させている。
循環経束の器官図 中央の球体部が操者の入る主脳倉で、そこを中心として経束が伸びている。 各経束の先端部で神経が折り返してループ状になっている |
また、これら鉱物には蓄E.S.P.性があり、常に一定量のキルリアン光をこの循環経束中にバッファリングしておくことができる。これにより生命船が急にエネルギーを要求したとしても、操者に供給負担がかからないようになっている。こういった性質を持つため、我々人間の神経系と異なり、ループ状の経路となっている。
なお、この命令信号のうち、攻撃命令信号そのものを抹消器官で収束高密度化し、船体表面から撃ち出すのが後述のキルリアンビームである。
表皮装甲・推進組織「イル・ドークト装甲」
装甲(表皮)はジルコニアやシリコン・ナイトライドといった無機金属が積層生成された複合装甲である。
全長1.4Kmの生命船をカバーする表皮は、それ自体継ぎ目のないほぼ1枚板となっており、これだけのサイズの物は、どの国家でも製造は不可能なため、現状のところ神聖宗教国のみの技術となっている。
さらにこの硬い表皮の間には、珪素をベースとしたシリカ・ケトンによる軟質組織が挟まっている。この組織はE.S.P.で重合組成を変更することで、操者の意思でダンパーオイルにしたり、耐熱シリコーンにしたりと、状況に応じて可変させることが可能で、ジルコニアやシリコン・ナイトライドだけでは硬すぎて脆い欠点をカバーする構造となっている。
これだけでも優れた複合装甲となるが、これに加え、ジルコニアやシリコン・ナイトライドの分子間結合強度(=ディアスタシオン構成力)をE.S.P.で高めることで強化している。
イル・ドークト装甲表面のアップ 表面は平滑ではなくごつごつしている。 所々見える「眼」のような器官はキルリアンビーム発振器官である。 |
この構造から、操者のE.S.P.による構造保持限界が存在する耐重力特性以外ならば、耐爆発、耐ショック、耐閃光、耐ビーム、耐電、耐薬品、耐B.C.といったほとんど全ての状況に、この装甲だけで対抗が可能であり、そのためU.G.、軍事帝国のようなエネルギー障壁を持たない。(そもそも必要がない)
これが核の直撃にも耐えるとされる「イル・ドークト(冷力)装甲」である。
また、生命船がキロメートルサイズという大きさで、かつ素材が鉱石という固い物質ということもあって非常に脆く、普通であれば生命船が動いただけでも折れてしまうので、これを防ぐためイル・ドークト装甲が生命船が瓦解しないように保護する役割も兼ねている。
さらに、イル・ドークト装甲はこれ自体が推進器でもある。
装甲がディアスタシオン粒子(=三次元空間)を直接「流し」て推進する、極く低レベルなディアスタシオン粒子動推進、すなわちD.D.D.(ダイレクト・ディアスタシオン・ドライブ)である。
推進時にはE.S.P.で励起されたジルコニアがほんのりと発光し、さらに励起されたディアスタシオン粒子が光の尾となって船の後ろに流れるのが特徴である。
D.D.D.推進は推進器表面積と船の重量比によって推進力が決定される。神聖主神力船は外装のほぼ全てが推進力発生面ということもあり、全国家で最も重量のある船ではあるが、それに反して全国家で最も速度の出る船でもある。
このようにイル・ドークト装甲は、技術的に非常に優れた技術である反面、E.S.P.の依存度が過剰ともいえるほど高い。
この優れた機能を維持するため、常時E.S.P.を大量に消費する点と、その供給源を精神的・身体的に不安定な操者に頼り切っているといるのが大きな欠点となっている。
さらに追い討ちをかけるように聖典解読が不完全なため、その再現率は低く、かつ生成が不完全で、理論的に最強とされる機能は有しながらも実際の神聖主神力船は、装甲厚が薄いだけでなく、ところどころ欠如している部分もあり、高度な技術の割には強度の少ない装甲となっている。
攻撃性出力器官発振光「キルリアンビーム」
全国家中、神聖宗教国のみが保持する神聖主神力船の主力兵器が「キルリアンビーム」である。
キルリアンビームとは、攻撃性出力器官から発振される高密度収束キルリアン光のことであり、E.S.P.と微弱電流と強力な光で成り立つ混合エネルギーを発射する兵器のことである。
元となるキルリアン光はパイロットである操者より発せられる。これを後述のエネルギー発生器官「心源」で増幅し、循環経束を通して表皮部まで運び、表皮にある高密度収束器官で圧縮、収束し発射する。高密度収束器官は、表皮上に多数あるが、各々の出力は小さいことから、全器官から同時発射され、発射直後にイル・ドークト装甲のディアスタシオン粒子動制御によって、全てのキルリアンビームを前方方向に揃え、多条ビームとすることで威力を上げている。
キルリアンビームを収束発射中 |
また、キルリアンビームは、E.S.P.ビームの性質を濃く有することから、E.S.P.障壁を除く、ENDシールドや装甲といった三次元上のあらゆる障害を貫通させ、破壊することが可能である。
これは、E.S.P.というものがさまざまな種類があれど、基本的にはE.S.P.顕現者の脳内に構築されるD-holeを通じて、上位次元からディアスタシオン粒子を操作する力であるためである。
基本的に、上位次元から見た三次元上の物質は、「気体・固体」「物質・空間」といった相・種・類・質・密・性といった分類に関係なく一律に「三次元物質」であり、上位次元では意味をなさない。故にE.S.P.の顕現は、あらゆる相・種・類・質・密・性に捉われることがない。
これを兵器として使った場合に言い換えると、「E.S.P.による上位次元から操作によって、船の発射射線上の三次元物質のディアスタシオン構成力を手前から分解している」だけであり、この場合、あらゆる三次元の障害は無効となる。
このように書くと、イル・ドークト装甲と同様に最強の技術に聞こえるが、その認識は間違っていない。ただイル・ドークト装甲とまったく同じ理由で、その威力は全国家でも低い部類に入る。
制御組織「主脳倉」「アヴァルーン」「覆水胞」
操者が入り、生命船のコントロールを行う場所が主脳倉である。 主脳倉そのものは白く光る石室で、中央には前述のシリカ・ケトンで作られている操者の座席(ベッドに近い)がある。構成物質は、大半が石英と水晶(共にE.S.P.感応物質)で、主脳倉は操者から発せられた命令信号とE.S.P.を受け止める巨大な受信機の役目を担う。
一方の操者側は、生命船とのやり取りを行うインターフェースとして「アヴァルーン」を付けて主脳倉に入る。このアヴァルーンを介して、操者から発せられるキルリアン光を、思考に応じて論理信号に変換し、これにより生命船にE.S.P.の伝達とコマンドを出す。
LoLでは、アイルヤが頭に付けている髪飾りがそれにあたる。凝った造形をしているが、ダイアモンドの中にコランダムの高密度光回路をE.S.P.で編みこんだ物体である。これは人造物ではなく、生命船が操者のために生み出したものである。
アイルヤのアヴァルーン 髪飾りの形状をしている。 |
アイルヤの場合は髪飾りをしていたが、必ずそうというわけではない。
ペンダント、ブレスレット、アンクレット、バングル、チョーカーといったアクセサリー状の物から、短剣、長剣といった武器状の物、果ては手、腕、胸、背中、額、目といった操者の体に直接コランダムの光回路が埋め込んであるものまで、いろいろなものがあった。
この後の生成の項で説明するが、初めて生命船を生成した際に操者に与えられるため、それまではどんな形のものが与えられるかは不明である。
なお、ユッタは首筋の後ろに紋術型のコランダムの光回路が直接埋め込まれている。
また、アヴァルーンには、主脳倉と心源にのみ有効なテレポート機能がある。生命船は、文字通り生命体であり、主脳倉に入る入口は存在しないので、このアヴァルーンの機能を使って搭乗する。
こうして操者は生命船を操るが、主脳倉は無機質であり、生活環境が全く備わっていない生命船での長期間の航行は、そのままでは操者が身体的、精神的に耐えられない。
よって操者は、低い清明状態(ほぼ混迷に近い状態)にまで操者の意識レベルを落とし、生命維持組織に入って生命船を操る。
この生命維持組織が「覆水胞」である。
覆水胞は航行のたびに主脳倉に作られる。主脳倉には操者座席もあるので、短期間の航行時には座席を使い、長期間にわたったりE.S.P.の没入度が高い戦闘時には覆水胞に入ることが多い。
主脳倉にある覆水胞 まばゆいキルリアン光によって操者のシルエットが見える。 これは操者ケイン(後の柑玉慧)。 |
覆水胞はたんぱく質、酸素等の供給を行うことで、操者の生命を維持するほか、キチン質の特性も持ち合わせており、操者の治療や代謝の機能も持つ。また覆水胞は循環されており、代謝時の老廃物質等も排除され常に清浄な状態が保たれるようになっている。操者はこういった環境に長くさらされるため、常人よりも肌の質が高く、白い陶器のような肌を持つのが特徴である。
この覆水胞は、ひとたび戦闘でその機能が失われると、たんぱく質の成分を濃度を上げ、徐々に飴色となっていく。これは「琥珀化」と言われ、さらに時間が経過すると操者を仮死状態にし、覆水胞は硬化、結晶石化し巨大な琥珀となる。これは、操者が外界の危険に晒されるのを防ぐためである。
琥珀化が完了すると、再起動信号を含むE.S.P.が送り込まれない限り、操者は目覚めることはない。
LoLにおけるアイルヤは、封建王朝国との交戦で船を破壊され、琥珀化寸前のところをユウに保護されている。
余談だが、神聖宗教国と交戦状態にあった封建王朝国では、この巨大な琥珀を「玉」と呼び、勝利の勲章として持ち帰る習慣があった。
しかし数度にわたり、上述の再起動信号が受信された結果、封建王朝国内の操者が目覚め、国家を混乱に陥いれたことがあった。LoLより以降の話だが、特に「玉乱の変」といわれた事件では、多くの貴族大公が滅びる事態にまでなっている。
それ以来二世皇帝の厳命にて琥珀の持ち帰りが禁じられ、貴族の私兵によって持ち込まれた多くの玉は、そのほとんどが王朝によって回収され、神聖宗教国に返還された。
封建王朝国の記録上では、全部の玉が返還されたこととなっているが、実はその中でとりわけ美しい玉のいくつかは貴族・王朝も隠し持っていた。
最も有名なのが、二世皇帝が禁止令を出す前に貴族より王朝に献上された柑玉(かんぎょく)・艶青(えんせい)と呼ばれた青と赤の玉である。これは生命船1隻から対で2つ見つかるという古今例のない玉であったため、その珍しさもあって王朝で秘匿されていた。
それより後の「大空位」を経て三世皇帝となった金虎帝の時代に、この2つの玉から慧女(けいにょ 通り名は柑玉慧-かんぎょくけい-、神聖宗教国での名はケイン)・僑仔(きょうし 通り名は艶青僑-えんせいきょう-、神聖宗教国での名はキュリア)が再起されたが、両者とも神聖宗教国には戻ることなく封建王朝国に帰順し、後の金虎帝をよく支えた。
これらアイルヤ、慧女(ケイン)、僑仔(キュリア)の例が示す通り、琥珀化は神聖宗教国人の拡散につながることが多かった。
エネルギー発生器官「心源」
他の項の説明でたびたび出る「心源」が、生命船の中枢であり、全長1.4Kmの神聖主神力船を動かす膨大なエネルギーを発生させる器官である。正しくは、これだけで全て賄っているわけではなく、操者のE.S.P.やキルリアン光を増幅させることで発生させている。
アイルヤのE.S.P.の顕現力(三次元上に現れるE.S.P.力のこと。テレパスなどは三次元上に顕現しないため除外される)は、この時期のU.G.のE.S.P.数値に換算して約48000M.P.(Manifest Powerの略、顕現力の単位。ユウは400M.P.程度。)ある。
M.P.単位はU.G.で当代の最大E.S.P.能力者を「A.M.P.(Absolute Manifest Power-owner 絶対顕現力保持者)」として、それを10000M.P.として基準設定される。LoLの時代では、第2代目A.M.P.ヘンリー・ブリュートナー(歴代エースパイロット14位でもある)とされている。
アイルヤはこの数値の4.8倍の顕現力を持つ。これだけでもU.G.との格の違いを見せ付けるが、さらに心源はアイルヤのE.S.P.顕現力の32倍、1536000M.P.もの力に増幅させ、神聖主神力船のエネルギーとして使用している。
心源は単なるエネルギー増幅器官ではなく、これ自体が生命船の核であり、生命船と同様、わずかながら意思を持つ不完全な無機生物である。
心源自体は非常に小さく、本体である「核」と呼ばれる部分は、握りこぶし大の珪素単結晶に過ぎない。その回りに水晶、石英などの不純物が取り囲み、手のひら2つ分くらい程度の大きさとなっている。外観も単なる石ころにしか見えない。
この心源が発する強大無比な増幅力は、心源が所有者(操者)を認めた場合にのみ力を発揮する。故に心源は常に操者と生命船がセットになっている。
操者は、極短い距離ならば、操者のアヴァルーンから、この心源の「次元反転」と操者の持つE.S.P.「粒子再構成」の能力を引き出して、生命船のコクピットである主脳倉か、あるいは心源そのものに向かって生体テレポートを行うことが可能である。主脳倉に向かうテレポートは生命船に搭乗する際に使用する。その意味では心源は生命船の搭乗キーと始動キーを兼ねているともいえる。 なお心源に向かうテレポートは緊急用で、操者の能力を大きく使ってしまうため余程のことがないと使われない。
この心源と呼ばれる物体は、LoLの劇中にも登場している。
ユウが「変てこで若干不気味な」「呪いの人形」と呼び、そしてアイルヤが「お守り」と言った石像のような物体、これが生命船の心源であり、アイルヤの“護石”「エヴォーン」である。 なおここでは“護石”と表現したが、これはU.G.が付けた名称であり、神聖宗教国の表現ではない。神聖宗教国では「お守り」という。オペレーション・ホワイトストリーム終結後、アイルヤからの事情聴取とその外観からこう名づけられ、神聖宗教国の分析が進んだ後もU.G.内ではこれで広く認識されたが、U.G.はこれが「正しい表現ではなかった」ことをThe New Space Order War終結後に知ることになる。
前述の通り、心源の原型は単なる石ころである。その状態でも問題なく心源として使用可能であるが、神聖宗教国ではこれを彫塑してさまざまな形にし、操者別で全て形状を変えている。 また、心源個々には全て名前がついており、それはそのまま生命船の名前となっている。
アイルヤの神聖主神力船(心源)はエヴォーン(飛天騎)、ユッタのはメーヴェ(妖精姫)、また名前のみが出ている操者ツァムとリアン(2007/4/1エイプリルフール時の公式HP上の神聖宗教文字にその名が見られる)は、それぞれツァムがフレディト(大樹剣)、リアンがティルトワ(穀物穂)と呼ばれている。
なお最終話でアイルヤが搭乗し、ユウのシャトルをかばった神聖主神力船は、クロンティエ(水皇女)と呼ばれていた。
これらの名称の由来は聖典に記された伝説などに書かれている名称である。
ユウも劇中で漏らしているが、彫塑された後の心源はU.G.のセンスでは理解しがたい独特の形状をしている。
アイルヤの持つ「心源」であり「お守り」であるエヴォーン(飛天騎) |
上述の通り、本来生命船と共にある操者は、たいてい心源は一つしか持たない。
生命船の喪失時や救助等によって、仮操者として一時的に2つ以上の心源を持つこともあるが、仮操者の場合、本来の力が発揮できない制約がある。
ユッタが最終話で使用した神聖主神力船クロンティエがそれであり、本来の力を発揮できないため軍事帝國艦隊への攻撃に参加できなかった。
ただ、例外的に複数の心源に認められる操者もわずかながらいた。上記メンバーの中では、ユッタがまさしくそれであり、後に彼女はメーヴェとは別にウルス(無)を持ち、2つの生命船を駆る操者となっている。
心源は生命船の起動のみならず、これ自身が生命船の技術の核であるため、本来は簡単に人に譲るものではない。操者は船外に出るときは、神聖宗教国のE.S.P.「粒子再構成」で心源の分子間距離を広げて透化させ、操者付近に滞留させておくか、逆に圧縮して操者の周りに飛ばせておいたり、身に付けたりして、なるべく気づかれないようにしておくのが本来の扱いである。
LoLの劇中で、アイルヤが広範囲の生命反応を知覚し、ユウが驚くシーンがあるが、これはアイルヤを取り巻いて滞留しているエヴォーンが、周囲の人間の精神量を増幅してアイルヤの精神感応(テレパス)で知覚できるレベルにまで増幅しているためである。
アイルヤは劇中、ユウにこれを託すが、操者に成り立てという事もあり、そこら辺の事情をよく知らずに渡していた節がある。 しかし、この行為によってアイルヤがユウのシャトルの危機を察知することができ、かつ沈みゆく神聖主神力船クロンティエから、ユウの持つ心源エヴォーンへのテレポートを可能とし、結果的にユウのみならずアイルヤ自身も助ける「お守り」となったのは皮肉な事実でもある。
その他の外部器官「旋翼」「球冠体」
おおむね外観では、前躯体と後躯体に分かれる何よりも目を引くのは、前躯体左右にある翼状の器官と、後躯体中央にあるドーム状のものである。
前躯体にある翼状のものは、「旋翼」と呼ばれる排エネルギー器官を兼ねる旋回スラスターである。
後躯体の上方にある赤いドームは、「球冠体」と呼ばれる。
内部に心源、主脳倉といった重要器官を内包するが、それ自体は単に生命船の性別を表す組織に過ぎない。その表皮は大半が純粋コランダムにクロムが混入した巨大な石、すなわちルビーである。
神聖主神力船に限らず生命船には、その全てに性別があるが、雄船体はルビーで赤色、雌船体はサファイアで青色となる。雌船体の生成率は非常に少なく、0.3%以下となっている。
図下方向が神聖主神力船の前に当たる。 前躯体にある翼状の器官が旋翼 後躯体にあるドーム状の器官が球冠体である。 |
なお、生命船に対応する操者は必ず、生命船とは異なる性別のものが選ばれる。
生命船の場合は、雄船体がほとんである事から、操者はほとんどが女性であり、稀に男性が混じる程度である。
かといって、女性だけの軍団かと言うとそうでもない。生命船の操者は女性率が高いが、地上兵器である生体装甲「ガーディアン」は、一転して雌生体が多いため、生体装甲の操者(神官戦士)の場合は男性が圧倒的に多くなる。
U.G.は、神聖宗教国と接触する場合、ほとんどが宇宙空間で、かつ艦船を通じてが多かったため、しばしば神聖宗教国=アマゾネス的女性軍団の誤解が蔓延していた。
諸元
船名 | エヴォーン(飛天騎:操者アイルヤ) ※なお、同型に メーヴェ(妖精姫:操者アイルヤ) フレディト(大樹剣:操者ツァム) ティルトワ(穀物穂:操者リアン) クロンティエ(水皇女:操者ユロリナ→仮操者アイルヤ) シャーナエ(泉皇女:操者ケイン・操者キュリア) |
カテゴリおよびクラス | 通称:神聖主神力船(パラディオン・クレーメル・クランス) 正式名称:雄性生命船→パラディオン・クレーメル・キステアクランス 雌性生命船→パラディオン・クレーメル・アグリアクランス |
全長 | 1420m(静止時) |
全幅 | 1235m(旋翼最大展張時) |
全高 | 422m(旋翼最大展張時) |
総員 | 1名~2名(人類のみ限った乗員数) |
航宙性能 | ※速力は状況に応じて大きく変わるため、24時間移動距離で算出する。 |
反応炉 | 無搭載 操者E.S.P.を心源器官にて増幅 |
稼動限界 | ファナティックチャージ:30分 戦闘稼動:操者能力による 航行稼動:∞ ※全て船内時間理論値 |
推進器 | イル・ドークト装甲表面によるD.D.D.(ダイレクト・ディアスタシオン・ドライブ) |
跳躍器 | 操者による極短時間の次元反転航法 |
シールド | イル・ドークト装甲:最大19層~最小1層 シールド厚は最大層部分でU.G.単位で41レイヤーに相当 |
主兵装 | 装甲表面にある48の攻撃性出力器官からの発振光(キルリアンビーム) |
その他 |
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簡易三面図 |
主神力船の生成
主神力船の生成は、まずその礎石となる「大晶石」の探索から始まる。大晶石とはすなわち心源の核にあたる単結晶珪素である。実際にはそのままの単結晶で見つかることはなく、大抵が大きな石の状態で見つかる。
大晶石はそれ自体が原始的な珪素系無機生物である。ここまで読んだ方には推測できようが、これが前述の「心源」の前身である。当然自然発生的に生まれたものではない。太古文明が生んだ「何か」であることは確かだが、詳細は不明である。単純に単結晶としての珪素ならば、U.G.でも単結晶シリコンとして生成可能だが、もちろん神聖宗教国の大晶石の様に生命体としての性質は一切持たない。
大晶石は神聖宗教国の母星で発掘され、教導会によって多数保管されている。 将来的に操者となるであろう少年少女の候補たちは、これら全ての大晶石と念話させ、そのうち意思の通じ合ったものをその者の「お守り」とする。この時点でどの種の船あるいは生体装甲の操者になるかが決定され、これらの「心源」となることが確定する。 その後、彼らは神聖宗教国の軍事組織である「聖戦騎士団」に入団させられ、操者としての訓練を積むこととなる。
大晶石との念話 この時点では不純物が取り巻いているため非常に大きい。 |
その後、「お守り(心源)」はその操者候補のE.S.P.によって育成させられる。E.S.P.を受けた「お守り」は、操者との念話の通りが良くなり、知識と知恵を持ちはじめ、より一層操者との結びつきが深くなっていく。一定の期間を経て、操者がお守りから力を引き出せるようになると、周囲の岩を取り払い単結晶部を露出させ、さらにそれに彫塑が加えられ、名前が与えられる。こうして操者+お守り(心源)のペアが出来たところで、ようやく船の生成準備が整う。
生成にあたっては、軌道上の生成施設にて行う。国家指導者であり、聖戦騎士団の団長を兼ねる聖典代行者によって特定の種類の生命船の補充の命令が下ると、それに該当する操者が軌道上に呼ばれる。 軌道上で船の生成を行うのは、生成過程で重力影響を受けると船が歪んでしまい、硬質な素材で出来た船は修正が利かなくなることから、その影響を可能な限り軽くするためである。(これらの知識は当然聖典より得ている)
生成に当たっては、操者のみならず年齢5歳以上の教民が軌道上の生成施設に広く集められる。彼らの役割は生成用のE.S.P.の供与である。 生成に当たっては、まず操者に多くのE.S.P.を集める必要がある。先述の通り、操者は「お守り」を作るために自らのE.S.P.をかけて育成していくが、船の生成はこれより規模の大きい育成であり、数千人規模でのE.S.P.を必要とする。
生成は1年以上の年月をかけて行われる。毎日10時間以上の祈祷(E.S.P.供与)が行われ、操者にE.S.P.が供与される。この過程では数千人規模のE.S.P.に耐え切れず、操者が亡くなってしまう場合もある。
当然、祈祷を行う側も、安定したE.S.P.能力と体力のある大人は問題はないが、特に幼児~二次性徴前の少年少女には非常に負担が重く、一定の率で犠牲者が出ることもある。
こういったことから、この過程は一つの選別儀式としての性格も有している。祈祷ではE.S.P.能力の高低も明らかになるため、能力の高い者は、次なる操者としての候補になり、低い者は一般教民として選別される。
余談だが、この際一定の値より低い者は、時に生成の犠牲者となり、無事であっても「界外(けがい)の民」と呼ばれ、地上に戻された後、さらに教民とは選別されて住むことになる。
話を戻すと、こうしてE.S.P.を多く蓄えた操者が出来上がると、そのお守りともども核となる主脳倉に挿入される。 挿入後、第一段階として、最初に生成されるのが操者のアヴァルーンで、この時、操者のアヴァルーンが操者のどこに現れ、どんな形状かが判明する。 アヴァルーンが生成されると、第二段階として操者本人の老化遺伝子の調整が開始される。第二段階は外部からの制御によってスキップすることもできる。 さらに第三段階として、操者の内部に蓄積された膨大なE.S.P.がアヴァルーンのプログラムに沿って開放され、生命船本体の生成が行われる。
主脳倉への挿入 この後、爆発的な生成が開始される。 |
開放されたE.S.P.は近傍の惑星ないし小惑星を原料としてこれを分解、生成施設に集め、粒子を再構成し、主脳倉の周囲に船を形作っていく。 この生成過程は非常に速く、1日あればほとんど形は出来上がってしまう。 その後さらに、数日かけて内部諸器官の生成、最後に表皮部となるイル・ドークト装甲が生成されて、完了となる。
生命船の生成完了時は非常に荘厳であり、イル・ドークト装甲に初めて操者のE.S.P.が通ると、初期起動時のみ鐘のような次元振動音が鳴ると同時に、全器官、全装甲が発光し、さらに周囲のディアスタシオン粒子を励起させて光の粒子に包まれて出現する。 生成施設は軌道上にあるが、昼でも地上から星のように光って見えるほどである。
神聖主神力船完成時 |
神聖主神力船の搭乗員は、
操者(ミュステル) … 1名(2名のときもある)
のみである。ただし、これは“人間”に限定した数字である。
この者が船長であり、クルーであり、機関士であり、E.S.P.発生器でもありと、神聖主神力船を動かす全ての役割をこなす。
とりわけ神聖主神力船を動かすためには、類まれなるE.S.P.能力のみならず、「後光」とも言われるキルリアン光の発生能力も必要である。キルリアン光とは、E.S.P.使用時に脳内に発生する「D-hole」を特に深く穿孔(これは没入度に比例する)できる能力者が使う別次元物質→光エネルギー変換能力で、言うなれば人間を媒介とした次元断崖光化反応炉ともいえるが、この能力は非常に稀有である。
操者の身分・資格
そんなこともあり主神力船の操者は、神聖宗教国では、なかば神格化された扱いを受けている。国家の要職にもこの操者がなることも多く、要職の女性率は非常に高い。
操者になるためには、所定の資格が必要となる。
選別によって、強いE.S.P.を持つことが明らかになった子供は、一般教民から隔離されて、聖戦騎士団に入れられる。
最初は下表にあるとおり、最低列にあたる「第四低職位世俗格」の「僕士」として入団し、E.S.P.能力の強化がおこなわれる。能力が向上するたびに位と格は上がって行く。
生命船のうち、主神力船の操者は、第六列「第参信位敬虔格」以上、第参列「第弐力位主神力格」以下の資格が必要となる。
LoLに登場したアイルヤは第七列「第四信位献身格」に叙列されており、本来、主神力船の操者たり得ないが、見習い的に編入されていた。なお、同LoLに名前のみ登場するユッタは、LoLの時点では第六列「第参信位敬虔格」であり、アイルヤの保護者も兼ねていた。
神聖宗教国 聖戦騎士団 位格順列表 | |||
順列 | 階位称 | 神格称 | 身分 |
第壱列 | 究極位 | 聖典格 | 聖典 |
準第壱列 | 教導位 | 司聖格 | 聖典代行者 |
第弐列 | 第壱力位 | 超神力格 | 枢軸教士 |
第参列 | 第弐力位 | 主神力格 | 枢軸教士 |
第四列 | 第壱信位 | 絶対格 | 教士 |
第伍列 | 第弐信位 | 神聖格 | 教士 |
第六列 | 第参信位 | 敬虔格 | 修士 |
第七列 | 第四信位 | 献身格 | 修士 |
第八列 | 第壱高職位 | 聖賢格 | 修士 |
第九列 | 第弐高職位 | 守護格 | 修士 |
第十列 | 第参高職位 | 修道格 | 僕士 |
第十壱列 | 第四高職位 | 求道格 | 僕士 |
第十弐列 | 第壱低職位 | 使徒格 | 僕士 |
第十三列 | 第弐低職位 | 信徒格 | 僕士 |
第十四列 | 第参低職位 | 信心格 | 僕士 |
第十伍列 | 第四低職位 | 世俗格 | 僕士 |
※聖戦騎士団は、「十六階位」と呼ばれる序列で成り立つ。これは
1つの究極位
1つの教導位
2つの力位(りょくい)
4つの信仰位(しんぎょうい)
8つの職位(しきい)
から成る。最上列である第壱列究極階位には聖典が位置し、聖戦騎士団は聖典の記した道に従う。
実質的には、それを解釈し保護する準第壱列「教導位司聖格」にある聖典代行者が最高司令官に相当する。
中央部に立つ人物が教導位司聖格「聖典代行者」 |
操者のE.S.P.能力と調整
神聖宗教国のE.S.P.は全国家中、一部能力を除き最強の力を持つが、発現時期や安定性といった点で問題を抱えている。
神聖宗教国のE.S.P.の特性は、以下3つとなる。
テレパスは最も基本的な能力で多くの民が有する一方、粒子再構成は保有者が限られた能力であり、キルリアン光に至っては、さらに限られた能力となっている。
これら能力の内、テレパスと粒子再構成が使える能力者が力ノ舟(使徒船他)の操者、テレパスと粒子再構成、キルリアン光の能力が使えるものが光ノ舟(主神力船)の操者となる。キルリアン光の能力を必要とする主神力船の操者は最も少ない。
E.S.P.能力の発現は、全国家中最も遅く、おおむね男女問わず5歳~6歳位である。
そのあと10歳くらいまでの5年間は緩やかな成長を遂げ、二次性徴期間である10歳~15歳位までの約5年間で能力は爆発的に伸び、15歳から20歳位までの5年間は緩やかな下落をたどり、この後、男性の場合は保持する遺伝子によって、横ばいないしは能力の低下、女性は一度能力を喪失し、その後、定期的に能力の再発現と再喪失を繰り返す「周経期」に入る。
男性の安定した能力に比べて、総じて女性の能力は不安定であり、若年時の能力の方が安定しているため、生命船の操者は、その最大能力年齢を狙って身体年齢を止めてしまう「調整」をされることが多い。(中には行わない者もいる)
これは生命船の生体維持機構である覆水胞を用いた調整法である。当然、神聖宗教国で考えられた調整法ではなく、他同様、聖典に記録されている技術である。技術の由来・理由は解読されておらず、神聖宗教国でも「聖典に記録してあるから正しい行いである」程度の認識で使用している。
一部の老化遺伝子を調整することで行われる。なお、老化の停止は、E.S.P.機能の低下を抑制するための調整のみであって、永遠の寿命を得るわけではない。太古文明においても、この時代においても生体の不死法は全くないわけでもないが、様々な理由により実現していない。
またこの調整は、髪色も変化してしまうのが特徴である。神聖宗教国人の髪色は栗毛色を中心とした、明るい方でオレンジ寄り、暗い方で黒髪だが、調整を経ることでこれら髪色がより薄い色へとシフトするか、髪色が大きく変化する。薄い色へシフトする場合は、操者としての能力が低いことが多く、使徒船などの低能力生命船にこのタイプが多い。髪色そのものが変化する場合は、操者としての能力も高く、主神力船の操者であることが多い。
生命船の操者は女性が多いことは前述したが、その優秀な遺伝子を残すために、後に子をなす必要のあることから、年齢変動幅は15歳以上~19歳程度までで調整される。
LoLに登場したアイルヤ、ユッタもこの調整を受けており、U.G.の記録によると、アイルヤは後年没するまで、その姿は10代後半を保ち続けた、とある。
LoLのエンディングスタッフロールに描かれているアイルヤはオペレーション・ホワイトストリームの7年後、オペレーション・ファイアヴォルテックス発令直前の姿であり、推定年齢で22を超えているがその外観はほとんど変わっていない。
アイルヤ22歳 地球にて |
また、神聖宗教国は軍事帝國ほどE.S.P.能力が安定していないため、これらの特徴から外れる人種も存在する。これらの特徴から外れた人種とは2種存在する。
1つは出生時よりE.S.P.能力を保有している人種である。
この場合はかなりの確率で二次性徴前に能力は下落ないし喪失してしまうことが多い。こういった男女は、外観的にも神聖宗教国人とは異なり、赤銅色の肌色を持つ。(一方で、この姿こそが神聖宗教国人の真の姿と主張する説もある)
この人種は神聖宗教国人の基本能力である精神感応(テレパス)を持たず、しばしばコミュニケーションに難がある(神聖宗教国の会話は、言葉以上に精神感応から語勢や雰囲気をやり取りすることが多い)ことから、特に忌避され、神の恩寵から見放された者として「界外の者(けがいのもの)」と呼ばれる。
もう1つは、神聖宗教国人よりも強く、安定したE.S.P.を保有する人種である。
界外の者の外観的特長である赤銅色の肌の色はそのままに、生まれながらにして色素欠乏の髪色をもつ人種が非常に稀に発生することがある。この場合は、操者よりも強力なE.S.P.を持つ。
ただ、しばしばその境遇が界外の者の中に置かれる事が多く、生涯に不遇が多いことから、多くは神聖宗教国内で界外の者を率いて反乱を指揮する立場にまつりあげられることが多く、ゆえに神聖宗教国では忌避される者として「存在無き者」と呼ばれている。
この人種は遺伝的観点では、何らかの遺伝子が隔世的に発現しただけである。彼らの「色素欠乏の髪色」とは、高能力の操者が調整を経た時に髪色が別の色へと変わるのと全く同じで、なんらかの共通性があると思われるが、詳細は不明となっている。
神聖宗教国において、E.S.P.能力の遺伝的な継承、すなわち婚姻は大きな意味を持つ。
E.S.P.は遺伝によって継承される要素のため、強い能力者には求婚が絶えない。一方で聖典は婚姻に関して強い規定を持っていないことから、神聖宗教国内では一定のモラルにおいて運用されているだけである。婚姻の目的が強い能力者を得ることといった偏った視点のため、男性はE.S.P.能力の安定を待って比較的壮年期に結婚する傾向が強く、女性は若い方が高い能力者を数多く産めるということもあって若年結婚の傾向が強いこともあり、年齢差のある結婚が非常に多かった。
アイルヤはこういう環境で育ったことで婚姻に奔放であり、かつ生来の気質が頑固でもあったため、オペレーション・ホワイトストリーム後にユウをとても困らせている。
神聖宗教国とU.G.の関係
LoL(オペレーション・ホワイトストリーム)で共同戦線を張ったU.G.と神聖宗教国だが、その後、不戦条約を結んだわけではなかったが、The New Space Order War全期間を通じ、いくつかの例外を除けば敵性国家として積極的な戦闘に及ぶことはなく、それはそのまま終結まで維持された。
これは、U.G.とは銀河系上で隣接する軍事帝國をはさんで、最も離れた位置に神聖宗教国の領星系があったからでもある。
オペレーション・ホワイトストリーム以降にも、オペレーションに神聖宗教国が関与した例も少ないとは言えず、特にマイヤーとユウは、後年行われた一大作戦「オペレーション・ウォークライ」にて、再び神聖宗教国に助けられることとなる。
また、国家としてのU.G.のみならず、特にニューコム社が神聖宗教国の技術に興味を持ち、オペレーション・ホワイトストリーム時に発見されたアイルヤの生命船「エヴォーン(船のみ)」、軍事帝國の砲撃によって破壊され地球圏に放棄された「クロンティエ(船と心源)」は回収され、分析が行われている。 The New Space Order War期間中、U.G.S.F.に回収された神聖宗教国の生命船の内、「船」と「心源」共に揃った例はこのクロンティエを含み、片手で足りるほどしかなかった。
またU.G.は、オペレーション・ホワイトストリーム時のアイルヤ等、遭難した操者を含む神聖宗教国人の保護も行っている。そのうちの何人かがアイルヤと同様にU.G.に残留しており、彼らから神聖宗教国の事情を聞けたことから、距離は軍事帝國よりも遠く離れていたが比較的なじみの深い国家でもあった。 U.G.に残留した神聖宗教国人はU.G.人と結婚した例が多く、彼らの子の中には、第9代A.M.P.のマクシミリアン・エラール、第12代A.M.P.のリヒャルト・テラー・ベヒシュタインなどがいるが、どれも高E.S.P.能力を保有した者が多かった。
神聖宗教国のE.S.P.を基本とした一連の技術は、E.S.P.後進国であるU.G.に大きな影響を与えた。
代表的なものだけでも、The New Space Order War末期に、ニューコム社の作ったD.E.F.H.A.(ディファと呼ぶ。ディアスタシオン・エナジー・フィールド・ハイテンシル・アーマーの略)がある。これは、神聖主神力船のイル・ドークト装甲の劣化版とも言える装甲で、これを装備した航宙機を売りにして、ゼネラルリソース社に二度敗北した航宙機部門で三度目の対抗を図った。
神聖宗教国の聖典は、10の知識保有体(十聖典)から成るが、彼らの手元にある聖典は、原型をとどめたものとしては、ただひとつの「第一聖典」と、その語彙編纂に当たる「第九聖典破片」のみであり、しかもそのうち解読できたものは第一聖典では7篇と45章のみで、まだ残り11篇211章が未解読、第九聖典破片は全篇解読済みだが、破片のため保有知識量が少なく、わずかに1篇13章のみとなっている。
第九聖典破片の解読によって語彙理解が進んだため、第一聖典の解読の質は向上しているが、それでも特定の科学技術を狙って解読することが非常に難しく、偶然に頼らざるを得ない状況にある。
その解読方法も、彼らの理解しやすい古代英雄譚や、伝説、口伝、史書といったものから特徴的な名詞を抜き出して、それをヒントに聖典の中に類似名詞を見つけ出す方法のため、ほとんどが兵器や機械の類であって、生活に密着するものは少なく、宇宙に出ているわりには、基本的な生活科学レベルは非常に低いままである。このような砂漠でダイヤモンドを見つけるが如し解読作業のなか、主神力船といった生命船技術を見つけたのは、まさに奇跡に近かった。
特に主神力船の生成法を記す第一聖典第三章「神技乃章」第一篇第三十二節以降「光ノ舟篇」には、解読時点でいきなりThe New Space Order Warと、それ以降の核心となりうる船が載っている。
これが、神聖宗教国の主神力船の完全体である「超神力船(ルスタリエ・クレーメル・クランス)」である。
「超神力船」というのは神聖宗教国での分類名に過ぎない。聖典には「ファーウス・グルゼーグ・ギレネス」と記されている。ただし、これが名前なのか、それとも説明の一節なのかさえも、神聖宗教国では特定できていない。
第九聖典の解読によって、これの生成法も含め全て解読されているが、その意味は神聖宗教国人の理解の範疇をはるかに逸脱しており、再現は難しいと言われている。それでも要約・意訳ながら、神聖宗教国では下記のような律詩をもって超神力船は伝えられている。
「其の船、身は石、内に魂たる者を抱きたり。
其の者、身を失いては魂を以て之を復す。
其の物、魂を失いては身を以て之を復す。
其の力、眩き光芒を放ちて神敵を雲散せむ。
其の力、深き時空を超えて神出鬼没。
其の躯、堅き衣甲を装いて貫徹すること敵わず。
其の躯、尊き玉容を象りて眼目せし者の心を洗う。
其の船、故に船の王と呼ばれたり。」
(第一聖典 第三章「神技乃章」 第一篇「光ノ舟篇」第三十二節 第十七~二十四 を元にした律詩)
律詩を読む限りでは超絶的であるが、これは嘘ではない。
主神力船で使われている技術そのものはThe New Space Order Warで使われている科学「ディアスタシオン三次元構成科学」の上位に存在する「ディアスタシオン次元構成科学」(具体的には論理宇宙や次元間航行といったもの)であり、文字通り次元の違う技術である。イル・ドークト装甲や、キルリアンビームの項でも述べられている通り、神聖主神力船では生成が不完全で、この技術の真価が発揮できないだけで、これが完全であれば最強の船となる。
律詩の解析によって、以下の機能を持つ生命船だと推定されている。
・主脳倉に操者は必要ない。
・操者はE.S.P.の供給を必要としない。
・操者の性別は問わない。
・表皮は「ウ・バキュラ装甲(発音のみ解読)」によって覆われている。
・単独で異次元航行が可能。
・形状はもはや神聖宗教国の生命船のそれとは大きく異なる。
完全体とも言われる超神力船(ルスタリエ・クレーメル・クランス) The New Space Order War終結直前で撮られた映像とされるが、 これが正しいかどうかも不明である。 |