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釧路市医師会病院 経営維持なお不透明2009年01月26日
■譲渡先に医師会会長の医療法人 釧路地域の救急医療を担ってきた釧路市医師会(西池彰会長)経営の釧路市医師会病院(浅川全一院長、126床)が閉院の危機をひとまず回避した。経営不振から売却・譲渡先を募集していたが、医師会会長が理事長を務める医療法人が落札。規模を縮小して経営が続けられる。しかし、常勤医師は減って医師不足の懸念は依然解消されておらず、先行きの不透明感はぬぐえない。 「ほとんどそうですね」 22日に釧路市医師会病院で開かれた記者会見。病院の譲渡が決まり、西池会長は「会長として責任を感じての購入か」との問いに、こう答えた。西池会長はかねて「私財をなげうってでも何とかしないといけない」と周囲に漏らしていたという。 医師会病院は85年設立。紹介患者の積極的な受け入れや救急医療の実施など一定の要件を満たし、知事認可が必要な道内で五つある地域医療支援病院の一つとして、長く釧根地方の救急医療の中核的役割を果たしてきた。 かつては市内の夜間救急病院の当番を月3週間ほど担っていたが、04年に現行の臨床研修制度が導入されたのをきっかけに、派遣元の旭川医大が医師を引き揚げ、医師の負担が増大。06年10月には、3分の1の1週間程度に当番を減らした。しかし、その後も医師の退職が相次ぎ、昨年4月に夜間急病センターが開設されてからは、当番は月3日に減少していたという。 昨年11月、経営危機が表面化。同月下旬に開かれた臨時総会で、累積債務が6億円に上ることも分かり、経営が立ち行かなくなるとの判断から、経営撤退が決議された。 落札した西池会長が院長を務める西池整形外科クリニック(同市新川町)は病床数が19床の診療所。そのクリニックが4月からは一気に100床を持つ病院経営に乗り出すことになった。 西池会長は会見で「先輩がつくった『城』が利潤追求の病院にされることだけは耐え難い屈辱」と強調。現在の経営方針が大幅に変えられることだけは避けたい、といった心情もあったようだ。 ■要因は医師集約化 収益悪化の直接の原因となったのは、市の仲介で昨年4月に行われた循環器内科医の市立釧路総合病院(647床)への集約だった。医師の集約は、市立病院の循環器内科医4人全員が大学に引き揚げるなどして不在となるために行われた。 集約に応じたのは、釧路労災病院(500床)と医師会病院。労災病院の2人と、医師会病院の4人のうち2人が市立病院へ移籍した。労災、医師会両病院の関係者とも「集約化には反対した」というが、医師の負担軽減や、地域から循環器内科医がいなくなることを避けるためにはやむを得ない策だった。 しかし、収益の6割を循環器内科に頼っていた医師会病院では、医師半減で患者の減少が急速に進んだ。今年度の赤字額は5億円に膨らむ見込みとなり、経営悪化に拍車がかかった。医師会関係者は「集約化が痛かった」と打ち明ける。 集約化に応じた釧路労災病院は「医師の負担軽減を目指したのに、結果的には医者が辞めて全体的に人数が減り、医師の過重労働が増した。しかし、一病院で少人数の医師では対応ができないこともあり、集約化はせざるを得なかっただろう」と話す。 ■脱大学依存がカギ 医師会病院の現在の医師数は循環器内科2人、消化器内科2人、外科4人の計10人。4月以降は循環器内科2人、消化器内科1人、外科1人の計4人と半減するが、新設の整形外科2人を加え、ほかに非常勤として9人を迎えるという。 病院売却の応募開始を発表した14日の会見で、「医師補充ができれば経営は可能」と自ら語っていた西池会長。記者からの「医師会で維持できなかったものを一会員ができるのか」との問いに、「維持できなかったのは、これまでは大学依存だったから」と応じた。 医師を派遣する大学への依存から脱却すれば、医師補充が大学以外の民間にも広げられ、視野が広がる、との見方を示している。
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