エネルギー政策は、わが国で最も大きな課題の一つです。現在、地球環境が危ぶまれる一方で、世界は激しい「資源獲得競争」の時代へ突入しています。
日本のエネルギー自給率は、20%程度。そのなかで、原子力発電は電力需要の30%程度を占めています。かねてから、この原子力発電では、発電の際に出る燃えカス「使用済み核燃料」の処理が問題となっていました。政府は、青森県六ケ所村の再処理工場の操業や、プルサーマルの導入などで核燃料サイクルを推進していく方針を示していますが、安全性や地元の了承など、さまざまな課題が指摘されています。
エネルギー政策に10年間取り組んできた河野太郎衆議院議員。現状の仕組みや問題点を説明しながら、「使用済み核燃料の段階で再処理をせず、政府が2050年に実現するという高速増殖炉が本当にできるかをまず見極めることが必要。兆単位のお金をかけるのであれば、再利用可能エネルギー・資源エネルギーなどの研究・開発にお金をかけるべきだ」と語ります。
日本のエネルギー自給率は、20%程度。そのなかで、原子力発電は電力需要の30%程度を占めています。かねてから、この原子力発電では、発電の際に出る燃えカス「使用済み核燃料」の処理が問題となっていました。政府は、青森県六ケ所村の再処理工場の操業や、プルサーマルの導入などで核燃料サイクルを推進していく方針を示していますが、安全性や地元の了承など、さまざまな課題が指摘されています。
エネルギー政策に10年間取り組んできた河野太郎衆議院議員。現状の仕組みや問題点を説明しながら、「使用済み核燃料の段階で再処理をせず、政府が2050年に実現するという高速増殖炉が本当にできるかをまず見極めることが必要。兆単位のお金をかけるのであれば、再利用可能エネルギー・資源エネルギーなどの研究・開発にお金をかけるべきだ」と語ります。
エネルギー政策:再処理への疑問(2008/03/13撮影)
※以下、政治家動画より編集したものです。
エネルギー政策とプルトニウム
私は10年来、日本のエネルギー政策に取り組んできて、「なんとか正常なものに直したい」と思っています。
最近、六ヶ所村の再処理工場がよく話題になります。ただ、それがどういうことを意味しているのか、ご理解いただいている方はあまりいらっしゃらないかもしれません。
図で説明するとわかりやすいのですが(動画ではホワイトボードで説明)、今の日本は、ウランを原子力発電所で燃やして電力需要の3〜4割を取り出しています。ウランを加工して燃料にし、原子力発電所で燃やすと、燃えカスである「使用済み核燃料」が出ます。薪をストーブで燃やすと炭になる、そういう関係だと思ってください。
この使用済み核燃料を再処理すると、プルトニウムを取り出すことができます。プルトニウムを取り出した後は、もうどうにもならない「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれる最後の核のゴミのドン詰まりと、プルトニウムとが分離されます。
夢の原子炉、高速増殖炉
このプルトニウムは、「高速増殖炉」と呼ばれる新しい形の原子力発電所の原子炉で燃やすと、投入した量を超えるプルトニウムを取り出すことができます。要するに、燃料を増やしながら電力を取り出すことができる。高速増殖炉は、夢の原子炉なのです。
ウランを原子力発電所で燃やして、使用済み核燃料にする。それを再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃やす。プルトニウムを増やしながら、電力を取り出す。これを核燃料サイクルと呼びます。日本が原子力発電所を作り始めたころから「ここまで全部やろう」と、こうした政策を取ってきました。
今、日本が保有しているプルトニウムは約45トンあります。隣の北朝鮮が6カ国協議を行っていますが、北朝鮮は50キロのプルトニウムを持っていて、ああいう状況になっているのです。
日本は45トン。このうちヨーロッパで再処理をお願いした分は、まだヨーロッパにありますから、45トン全部が日本国内にあるという訳ではありません。しかし、最大の問題点は、45トンものプルトニウムを持っていながら、この高速増殖炉が未だ実用化されていないというところです。
高速増殖炉は、簡単には実現しない
「もんじゅ」という事故を起こした原子炉のことを覚えている方もいらっしゃると思います。「もんじゅ」は、高速増殖炉のいわば原型でした。高速増殖炉は、政府が「30年後に、この増殖炉が商業化・実用化される。だから、そのときにプルトニウムを増殖炉で燃やそう」と、約30年前に言い出したものです。
30年経った今、日本政府は公式見解で「高速増殖炉は2050年までは商業化できない」と認めています。実は、2050年まで高速増殖炉はできないにも関わらず、既に日本はプルトニウムを45トンも保有しているのです。
皆さんご存知の通り、プルトニウムは核兵器の材料になります。テロリストに非常に狙われやすい物質です。「使用目的のないプルトニウムを保有することは世界として認められない」、それが今の国際ルールです。
45トンのプルトニウムを持っていて、高速増殖炉はあと40数年間も完成の目処が立っていない。実用化の目処が立っていない。その日本が兆単位のお金を投入して、再処理工場を六ヶ所村に作り、毎年8トンものプルトニウムを取り出そうとしているのです。私は、この政策はおかしいのではないか、と思っています。
高速増殖炉は、簡単には実現しません。実現したとしても、今と同じくらいの電気料金できちんと電気が供給できるようになるかは、まだ誰もわかりません。
早くて2050年にならなければ実現しないと言っている状況の中で、使用済み核燃料を再処理して、更にプルトニウムを取り出す。これに莫大なお金をかける必要が本当にあるのでしょうか。
(2ページ目へつづく)
エネルギー政策とプルトニウム
私は10年来、日本のエネルギー政策に取り組んできて、「なんとか正常なものに直したい」と思っています。
最近、六ヶ所村の再処理工場がよく話題になります。ただ、それがどういうことを意味しているのか、ご理解いただいている方はあまりいらっしゃらないかもしれません。
図で説明するとわかりやすいのですが(動画ではホワイトボードで説明)、今の日本は、ウランを原子力発電所で燃やして電力需要の3〜4割を取り出しています。ウランを加工して燃料にし、原子力発電所で燃やすと、燃えカスである「使用済み核燃料」が出ます。薪をストーブで燃やすと炭になる、そういう関係だと思ってください。
この使用済み核燃料を再処理すると、プルトニウムを取り出すことができます。プルトニウムを取り出した後は、もうどうにもならない「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれる最後の核のゴミのドン詰まりと、プルトニウムとが分離されます。
夢の原子炉、高速増殖炉
このプルトニウムは、「高速増殖炉」と呼ばれる新しい形の原子力発電所の原子炉で燃やすと、投入した量を超えるプルトニウムを取り出すことができます。要するに、燃料を増やしながら電力を取り出すことができる。高速増殖炉は、夢の原子炉なのです。
ウランを原子力発電所で燃やして、使用済み核燃料にする。それを再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃やす。プルトニウムを増やしながら、電力を取り出す。これを核燃料サイクルと呼びます。日本が原子力発電所を作り始めたころから「ここまで全部やろう」と、こうした政策を取ってきました。
今、日本が保有しているプルトニウムは約45トンあります。隣の北朝鮮が6カ国協議を行っていますが、北朝鮮は50キロのプルトニウムを持っていて、ああいう状況になっているのです。
日本は45トン。このうちヨーロッパで再処理をお願いした分は、まだヨーロッパにありますから、45トン全部が日本国内にあるという訳ではありません。しかし、最大の問題点は、45トンものプルトニウムを持っていながら、この高速増殖炉が未だ実用化されていないというところです。
高速増殖炉は、簡単には実現しない
「もんじゅ」という事故を起こした原子炉のことを覚えている方もいらっしゃると思います。「もんじゅ」は、高速増殖炉のいわば原型でした。高速増殖炉は、政府が「30年後に、この増殖炉が商業化・実用化される。だから、そのときにプルトニウムを増殖炉で燃やそう」と、約30年前に言い出したものです。
30年経った今、日本政府は公式見解で「高速増殖炉は2050年までは商業化できない」と認めています。実は、2050年まで高速増殖炉はできないにも関わらず、既に日本はプルトニウムを45トンも保有しているのです。
皆さんご存知の通り、プルトニウムは核兵器の材料になります。テロリストに非常に狙われやすい物質です。「使用目的のないプルトニウムを保有することは世界として認められない」、それが今の国際ルールです。
45トンのプルトニウムを持っていて、高速増殖炉はあと40数年間も完成の目処が立っていない。実用化の目処が立っていない。その日本が兆単位のお金を投入して、再処理工場を六ヶ所村に作り、毎年8トンものプルトニウムを取り出そうとしているのです。私は、この政策はおかしいのではないか、と思っています。
高速増殖炉は、簡単には実現しません。実現したとしても、今と同じくらいの電気料金できちんと電気が供給できるようになるかは、まだ誰もわかりません。
早くて2050年にならなければ実現しないと言っている状況の中で、使用済み核燃料を再処理して、更にプルトニウムを取り出す。これに莫大なお金をかける必要が本当にあるのでしょうか。
(2ページ目へつづく)
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