損害保険二位の三井住友海上グループホールディングス、四位のあいおい損害保険、六位のニッセイ同和損害保険の三社が経営統合で合意した。二〇一〇年四月の統合を目指しており、実現すれば一般企業の売上高にあたる正味収入保険料は単純合算で約二兆七千億円となり、東京海上ホールディングスを抜いて国内最大、世界でも五位の“メガ損保”が誕生する。
損保業界は〇一年から〇二年にかけて第一次の再編が行われ、大手六社となった。一九九八年の保険料自由化や外資系の攻勢で競争が激化したためだ。その後も合併に向けた協議が行われたが、〇五年ごろから生命保険、損害保険各社の保険金不払いが次々に判明したこともあって進んでいなかった。
しかし、国内市場が少子高齢化で低迷しているところへ、米国発の金融危機が打撃を与えた。大手六社の〇八年九月中間決算は、金融危機関連の損失が計千九百億円に上り、今回統合に合意した三社を含めた五社の純利益は前年同期比76?44%の大幅減となった。〇九年三月期はさらに損失額が膨らむ見込みで、金融危機が十年ぶりの再編を後押しした格好だ。
統合により、システム関連の約二百億円など数百億円規模のコスト削減が見込まれている。各社には保険金の支払い態勢強化が求められており、そのためのシステム開発を円滑に進めてもらいたい。
ただ、経営効率化に向けた課題は山積している。第一次再編では期待ほどコスト削減ができなかったという。その原因に挙げられているのが、高コスト体質の零細保険代理店の統合が進まなかったことだ。代理店の再編をどう進めるかは、統合の正否にもかかわってくるだろう。
主力である自動車保険料収入の減少も深刻だ。若者の車離れに加え、最近の車の販売不振などで市場の縮小傾向は当分続くとみられる。そこで、打ち出されているのが海外事業だ。既に三社合わせて世界三十八カ国で営業しており、人的資源と資金を集中できれば一段の収益源となろう。国内市場の低迷が引き金とはいえ、ここはピンチをチャンスに変えていきたい。
三社の統合によって、損保業界の再編機運が再び高まる可能性がある。忘れてならないのが保険金の不払い問題の背景として、社内体制の不備や顧客軽視の体質を業界全体の問題として指摘されたことだ。再編の効果を何よりも顧客の利便アップにつなげることが必要だ。
北朝鮮の金正日総書記が、中国共産党の王家瑞対外連絡部長と平壌の百花園迎賓館で会談した、と新華社が伝えた。健康が悪化したといわれていた金総書記は健在のようだ。
金総書記は、昨年八月に脳卒中などの発作で倒れたとされ、左手のまひ説も出ていた。動画は公開されなかったが、中国共産党対外連絡部がホームページ上で公開した会談写真では、金総書記は中国側が贈った書籍や映像資料などを両手で持ち上げ、左手に不自然さはなかった。
健康悪化が伝えられて以降初の外国要人との会談報道である。金総書記としては、王部長との会談を通して健康に問題がないことをアピールし、最高指導者としての存在感を示す狙いがあったのだろう。
会談で金総書記は「朝鮮半島の非核化に努力し、関係各国と平和共存を望んでいる」と表明した。そのうえで「朝鮮半島の緊張は望んでおらず、中国と協力して六カ国協議を進展させたい」と述べたという。
朝鮮半島の非核化に対する前向き姿勢は喜ばしいが、安心はできない。従来も訪朝した中国高官との会談では、朝鮮半島の非核化と六カ国協議重視の立場をとっていた。しかし、六カ国協議は北朝鮮が核検証問題で厳格な検証に応じようとせず、交渉は暗礁に乗り上げている。
これまでと大きく異なるのは、オバマ米新政権の発足直後ということだ。オバマ大統領は敵対国とも対話していくと外交交渉に軸足を置いている。この時期に金総書記が姿をみせたのは、関係改善を図る意欲の表れとみることができよう。
六カ国協議は、オバマ政権発足を機に仕切り直しをすべきだ。日本、中国、韓国、ロシアは米国と対北朝鮮戦略の練り直しを急がなくてはならない。
(2009年1月25日掲載)