修士論文(2008年3月修了)
石川 有
ソーシャルブックマーク上のユーザ関係を考慮したサイト推薦手法
(A Site Recommendation Method Based on User Relationship on Social Bookmark)
本研究では,ソーシャルブックマークを利用した,サイト推薦手法を提案する.
本研究の特徴および従来手法との違いとしては,
・ソーシャルブックマーク上のユーザの関連度を考慮した,
・ソーシャルブックマーク上のタグをクラスタリングしたあとに、再びタグの関連
度を計算したことが挙げられる.
そして,評価実験の結果従来手法よりも,良い結果が得られた.
インターネットの発展に伴い,発信されるWeb 情報は日々増大している.そのた
め,ユーザが求める情報を探す作業には,多大なコストがかかる.このような状況を
解決するために,膨大なWeb ページの中からユーザの嗜好や要求にあったものを自動
的に推薦してくれるシステムの開発が期待される.これまでにも多くの手法が提案さ
れ,サイト推薦システムは用途に合わせて,いろいろな種類のものが開発されてきた.
しかし,それも未だ発展の途上である.
これまでのサイト推薦システムの多くは,協調フィルタリングが用いられてきた.
協調フィルタリングとは,たとえば,Amazon のような商品推薦システムを構築する
際に用いられる手法である.おおまかな手順は,1. ユーザの購買履歴をマイニングし
て,ユーザと商品購買パターンが類似しているユーザ群を抽出し,2. ユーザ群に共通
して好まれる商品群を抽出し,ユーザに推薦する,という2つに分かれる
協調フィルタリングにおいて,2ユーザ間で共通のものがないと,類似度が0 と基
本的にみなされてしまう.そのため,商品数に対して十分に大きい,テストユーザ数
の購買履歴を取得する必要がある,という問題が生じる.そのため,商品数ユーザの
嗜好をより抽象化する必要がある.これまでのサイト推薦手法では,購買履歴をペー
ジのアクセス履歴に置き換えてきた.
しかし,Web ページのアクセス履歴はサーバーごとに分散していたりする.そのた
め,サイト推薦手法を構築する際に,特定のサイトやサイト群に推薦対象を絞らざる
を得なかった.
このような問題を解決する手法として,ソーシャルブックマーク上のデータをユー
ザのWeb ページ嗜好データとして利用することで解決できる可能性がある.ソーシャ
ルブックマークは,よく使うサイトのアドレスを登録しておく,いわゆる“お気に入
り”をネットワーク上に保存し,他のユーザと共有するサービスである.保存された
データは,ほかのユーザのものであっても閲覧することができる,という利点がある.
ソーシャルブックマーク上のデータをユーザの嗜好としてみなすことで,従来のペー
ジ推薦システムにおける「ユーザのページ嗜好データの不足」や「データの分散」と
いった問題を解決し,Web ページ全体を対象とするサイトリコメンデーションシステ
ムを構築する手法が提案された.この手法では,ユーザとタグ,タグとページの親和
性を用いていたが,ユーザの類似度には着目していなかった.そこで,本研究では,さ
らにユーザ間の親和性も用いた手法を提案する.
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