2009年1月24日 21時00分 更新:1月25日 9時01分
大分市青崎の「南日本造船」大在(おおざい)工場で起きたタラップ落下死傷事故で、タラップ自体の重量が同社の想定の約2倍あったことが、24日行われた大分労働局などの実況見分で判明した。同社はタラップの自重を量らないまま、想定重量で船と接続するフック部分を発注していた。同労働局などの調べで、接続部のボルトは強い負荷による剪断(せんだん)破壊で切れたことも判明。事故は、不十分な安全確認による人災の側面が強くなった。
同社は下請け会社にタラップを発注する際「人を乗せた重さを含め4・5トン」と求めたことから、タラップの自重は約3トンと推測していたという。しかし24日の実況見分で、自重だけで約6トンあることが分かった。
同社によると、フックの製作はタラップ発注段階の「自重約3トン」という想定に基づき、同じ下請け会社に依頼した。しかし実際は、タラップの自重と渡っていた作業員で計8トン近くあったとみられ、事故当時フックには想定の2倍近い負荷がかかったとみられる。
大分労働局によると、フックは直径18ミリのボルト4本でタラップ先端に装着されていたが、海中などから回収されたボルトはすべて切れていた。専門家がボルトの破断面などを調べたところ、横方向からの強い力で起きる剪断破壊で切れたことが分かった。
24日の会見で同社の佐藤正美業務部長は「自重も検査していなかった」と述べた。
一方、このタラップは本来、足場を組んで船体に水平に取り付ける設計だったことも分かった。同社が明らかにした。
足場は岸壁に垂直に建て、作業員は足場を上って船体開口部に水平に渡したタラップを渡る使い方。しかし佐藤部長は「(足場設置の)コスト削減から、斜めに取り付けることにした」と述べた。【中島京、深津誠】