
はっぴいえんど、YMOを始め、日本の音楽シーンにおいて常に先駆的存在として多大な影響を与え続け、国内外のミュージシャンからリスペクトを受ける細野晴臣。坂本龍一、高橋幸宏とのユニット「HUMAN
AUDIO SPONGE〜HASYMO」、「東京シャイネス〜ワールドシャイネス」などを経て昨年にはソロアルバムも発表、近年ますます精力的な活動を続ける彼が、自身のレーベル「daisyworld
discs」を久々に始動させる。新譜となる「細野晴臣アーカイヴス vol.1」と「デイジー・ホリデー presented
by 細野晴臣」の2タイトルについて聞く。


「ここにいつも面白い音楽がある。裏切らないよ」というレーベルを。

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| Photo by 綿谷和智 |
● ご自身のレーベル「daisyworld
discs」が久々の再始動ですね。
---今、僕の周りにいるミュージシャンたちがすごく成長してきて、もうベテランの域に達しつつあるんだけれど、彼らが積極的に活動できる「場」を作らなければいけないと思っていて。みんなをけしかけようということですね。以前からずっと、「場」というものがなくなっているなと感じていましたから。グローバリズムの世界の中で、音楽もいつの間にかみんな同じカラーになってきた。こういう時代だからこそ、自分がどこにいるかという証を作って、自分たちの居場所を確保しておきたいという気持ちですね。
●実力のあるアーティストたちに発表の場を作るということですか。

---うん、今の30代後半?40代、つまりYMOを子供の頃に聞いてきた世代のミュージシャンたちが、頼もしい存在になってきたと感じていて。世界レベルで見ても、素晴らしい音楽家に育っている。だから僕自身としては、本当は彼らがやっていくのをただ見ているだけがいいんだけど(笑)、しかしまだやっていないという部分もあって。それは「音楽を楽しくやれる場を作る」ということ。と言っても、あんまり大げさに言いたくないんです。もうちょっと楽しく、自然に生まれてくるものがいいなと。地味に見えるかも知れないけど、「そこに行けば楽しい」という場所を作っていきたいと思っています。
●新作コンピレーションアルバムは、インターFMで放送中のラジオプログラム「daisy
holiday」の番組仕立てということですが、細野さんの中でこの番組の位置づけとはどういうものでしょう。

---この番組は前身の「daisyworld」から数えて、もう10年以上続けているわけですが、「よく許してもらっているな」という感じですね(笑)。この番組のテーマを一言で言えば、「ここでしか聞けない音楽が聴ける」ということだと思いますけれど、それはやはりレーベルについても同じなんです。ラジオがあり、演奏の場もあり、レーベルもあり、パッケージもあり、配信もあるというような「場」なんですよね。
●コンピレーション盤の参加ミュージシャンの人選については?

---レーベルって、「セレクトショップ」みたいなものでしょう。「あそこに行けば、いつもあのTシャツが手に入る」という、定番があるべきだろうと。ただ最近はいつも様変わりで、欲しい時に行っても手に入らないことが多い。だから、このレーベルでは「ここにいつも面白い音楽がある。裏切らないよ」と。「daisyworld」には、鈴木惣一朗君やコシミハルさん、岡田崇君を始め、「彼らが作る音楽は確かなもの」と安心して信頼できる作家が数人いて、ヌーヴェルヴァーグの時代のゴダールやトリュフォーみたいに、少ない仲間だけれどローテーションを組んで助け合える。プロデューサーチームと言ってもいいと思いますけれど、彼らを核にして、リスナーも自分たちもまだ知らない、聴いたことのない音楽を紹介していくつもりです。
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| Photo by 綿谷和智 |
●細野さんの夢日記の朗読があったり、コントもあったりと、遊び心があってとにかく楽しい内容ですね。

---そう、楽しい事。それしかないですね。音楽で他に目的を持つと不純なんでね、稼ぎたいとかモテたいとか(笑)。音楽のマーケットのことはよく分からないけれど、今、レコード産業全体が変化していることは確かなんだろうとは思う。僕はレコード会社という存在も無くなってほしくないし、ネット上での音楽の生き方も大事なことだと思いますが、僕たちはやっぱり音楽が一番大切ですから、まず音楽を楽しんでいきたい。「daisyworld
discs」は音楽が大好きな人たちに向けて作っていますし、そういうリスナーに対して、汲めども尽きないものを提供できるという自負心はありますね。
●同時に発売される「細野晴臣アーカイヴス vol.1はどういった内容なんでしょうか。

---これは本当に「アーカイブ」。古くは70年代のものから、これまでの雑多な仕事から厳選して、カラーを揃えて出していく予定です。今回は80年代半ば〜00年代の音源が中心になると思います。
●最後に、販売店の方々について何か一言お願いします。
---僕ももちろん、CDショップにはよく行きますが、そこには必ず熱意のあるスタッフがいて、「こんなCDが出てるんだ」という驚きをいつも提供してもらっています。これまで、何度もお店で新しい音楽との出会いがあったし、影響を受けましたから。ミュージシャンにとって、そういう音楽好きの店員さんの存在はとても大事ですから、ぜひそういう自覚を持ってほしいですね。ただし、ポップの内容は信用できないこともあるけどね(笑)。
インタビュー:井出幸亮
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