「おばちゃん、なんぼ?」
「はいはい、600万円!!」
私が、NHK大阪放送局にいたときのことです。近くにあったK食堂のおばちゃんたちは、いつもこんな感じで、ベタなジョークをとばしてく
れました。
私も千円札を出しながら、間髪入れずにお返しします。
「やすー、ほな1000万円」
つかのまの昼休み、まさにホッとするひとときでもあります。
ところが、東京から転勤で異動してきたばかりの、首都圏出身者たちには、これが通じません。
ある先輩など、おばちゃんに、「定食な、ほな600万円!!」
そう言われたとたん、目を白黒させて絶句してしまいました。
場が凍りつく、ということばがありますが、まさにそんな感じになったわけです。
私は思わず吹き出しながら見ていましたが、先輩は職場に戻ってからも釈然としないようす。
「大阪のシャレは難しい…」
そんなことをブツブツ言って、眉間(みけん)にしわをよせています。
どうも、東京の人というのは、ジョークが苦手というか、シャレが通じない傾向があります。
もちろん、親しい関係になれば別ですが、見ず知らずの人から、いきなりネタをふられても、それを理解できないのです。
普段からタテマエで生きているので、つねに身構え、体裁などを気にしているのでしょう。カッコつけず、ホンネで生きている大阪
人とは、まさに対照的です。
良心的に解釈すれば、東京の人の方が真面目ということにもなりますが、私に言わせれば、そんな生き方は面白くありません。
世界に目を転じれば、とりわけ欧米人など、ジョークやユーモアをとても大切にしています。
一期一会の関係でも、まったく初めての相手でも、意思疎通には「笑い」の要素が欠かせないことを、良く知っているからです。
こうした「頭のやわらかさ」というものは、発明や発見などにも生かされますし、大いに身につけるべきだと思います。
言いかえれば、東京より大阪の方が、発想の柔軟さという点で、はるかに進んでいるのです。