◎京都会議から脱会 むしろ「城下町連合」広げたい
金沢市が全国京都会議から脱会するのは当然であり、むしろ遅すぎたくらいである。「
小京都」と呼ばれる都市グループの中にいては、金沢の個性を見えにくくするばかりか、「城下町」のトップランナーを目指す取り組みにもそぐわない。
脱会を決めたからには城下町を縁にしたネットワークを広げることも金沢市の都市交流
の大事な方向性である。城下町という都市形態が全国的に再認識されれば、その代表的存在として金沢の評価も一段と高まっていくだろう。
全国京都会議は一九八五年に発足し、五十市町が加盟している。京都に似た自然景観や
たたずまい、京都との歴史的なつながり、伝統的な産業・芸能の存在が加盟基準とされ、「小京都」という一つの観光イメージを定着させる役割を担ってきた。
全国京都会議のメンバーには城下町も多く、「小京都」は都市の成り立ちとは関係なく
、古い町並みを残し、歴史的な情緒を感じさせる都市の総称として用いられてきた。見方を変えれば、城下町の価値が強く意識されていなかったことの表れといえよう。
金沢市は一九八八年に加盟したが、当時は金沢城跡は金大キャンパスで、市街地の用水
も暗渠化された部分が多く、城下町の財産は十分に生かされていなかった。その後、世界遺産運動の中で藩政期の財産を前面に出した都市づくりの機運が盛り上がり、金沢城跡をはじめ国の文化財指定が次々と実現し、城下町としての輪郭が鮮明になってきた。脱「小京都」は必然の流れでもある。
日本の主要都市の多くは城下町から発展したため、国として積極的に保存するという発
想はこれまで乏しかった。歴史まちづくり法に基づく「歴史都市」認定は、京都や奈良など古都保存法で認められた都市以外に国の支援対象を広げた点で意義があり、第一号認定を受けた金沢市は、城下町の評価を高める役割を担っている。
全国京都会議からの脱会は、金沢が京都との違いを明確にする新たな一歩でもある。魅
力ある都市づくりを通して、城下町の価値を証明していく先頭に立ちたい。
◎オバマ政権始動 素早い対応を学ばねば
先行き不透明なとき、途方に暮れる人々に安心を与え、やる気を引き出すことができる
のが、政治家の、とりわけリーダーの最も大事な資質の一つだ。
米国のオバマ新大統領は、就任に伴うセレモニーの疲れも見せず、イラク撤退計画の策
定を軍首脳に指示し、中東の指導者四人に電話してパレスチナ自治区ガザの停戦堅持に努める方針を伝えるなど、スピード感あふれる始動ぶりだ。景気対策についても経済チームと向こう二年間で八千二百五十億ドル(約七十三兆円)規模の対策の検討に入った。
こうした素早さも指導者の資質である。日本のリーダーに欠けているもののように思わ
れ、与野党ともに学んでもらいたい。
現在の米国は、ブッシュ政権が去り、取って代わった新政権の描く将来図が具体的に見
えないため、期待と不安が入り交じる一種の空白といえる。前政権が残した問題があまりにも大きく、足元が揺らぐ思いであろう。指摘されている通り、オバマ新政権の前途は生やさしいものではない。
失敗が許されない課題ばかりだから、思いつきではなく、大統領に選ばれてからスタッ
フと討議を重ね、練ってきたものだろう。
素早い対応が人々を落ち着かせ、彼らから協力を引き出し、米国再生につなげてほしい
ものだ。
オバマ氏の大統領就任式に二百万人を超える市民が集まり、就任演説に聞き入ったとい
うことに、米国の苦悩が見えた。大統領はイラク戦争やアフガニスタンでのテロとの戦い、自国の金融危機に端を発した経済危機に率直に向き合い、「われわれは危機の真っただ中にある」と呼び掛け、勤勉、正直、勇気、フェアプレー、寛容、好奇心、誠実、愛国心がアメリカを再生する力だと強調した。
日本の政治のリーダーからも、このような率直さを聞きたい。「百年に一度の危機」な
どと聞かされるが、どこか他人事のようだ。与野党には一致して危機に当たろうとする志よりも、政権掌握をめぐる揚げ足取りが目立つのが残念である。日本の政治家も変わってほしい。