「派遣切り」など雇用危機が深刻化する中、「最後の安全網」としての生活保護制度を利用しようとする失業者が急増している。朝日新聞社が全国の17政令指定市と東京23区に取材したところ、昨年12月の保護申請数が前年同月比で32%増えていた。派遣社員が大量解雇された企業城下町や都市部で増加傾向が著しい。各自治体は保護費の増額を検討するなどの対応に追われているが、景況の悪化で、今年はさらに保護希望者が増える可能性もある。
40自治体の申請数は計8936件。07年12月は計6754件だった。金融危機が発生した昨秋以降、伸びが目立ち始め、9月は前年比17%増、10月は13%増、11月は6%増。契約打ち切りが続発した12月に一段とはね上がった。
スズキやヤマハなど輸送機器の関連工場が多い浜松市は申請が67件で、前年の32件から2倍超となった。年が明けてからも15日までで67件寄せられ、08年1月の同期比で約4倍に上る。市によると、窓口に相談に訪れた人のうち、派遣切りの対象になった労働者が全体の3割を占めた。
「トヨタショック」に見舞われた名古屋市の12月分は647件で前年比44%増。今月も住居を失った派遣労働者ら100人を超す人が連日、名古屋駅に近い中村区役所に詰めかけた。
マツダの工場がある広島市にも昨年12月、44%多い305件の申請が寄せられた。このうち少なくとも44人はマツダなどで派遣切りに遭った労働者で、市は30日まで窓口を延長する異例の対応を取った。さらに、年度内に13億円の補正予算を組む方針で、前年度補正の5億円から倍増。担当者は「マツダの経営悪化で本体工場だけでなく、関連企業や町工場に深刻な影響が出た」と分析する。