【ウィスラー(カナダ)立松敏幸】10年バンクーバー冬季五輪のテスト大会を兼ねたノルディックスキー・ジャンプのワールドカップ(W杯)2連戦が23日、当地のウィスラー五輪公園で始まった。公式練習と24日(日本時間25日)の個人第16戦(HS140メートル、K点125メートル)の予選を行い、139.5メートルを飛んだ葛西紀明(土屋ホーム)が日本勢で今季初めて予選をトップ通過した。
他の日本勢も全員本戦に進んだ。栃本翔平(雪印)が11位、伊東大貴(サッポロスキッド)が14位、湯本史寿(東京美装)が15位で続き、ほぼ1年ぶりにW杯に復帰した岡部孝信(雪印)は16位、渡瀬雄太(雪印)は19位だった。
ウィスラーはバンクーバーから約120キロ北に位置する北米最大のスキーリゾート。五輪期間中はアルペンスキー、ノルディックスキーなどの会場になる。
予選を1位で通過した葛西だが、試合後の第一声は意外にも「失敗しました」。飛距離は最長不倒の139.5メートル、飛型点も予選参加44選手中トップの55.5点で計141.6点と2位に4点近い差をつけた。それでも納得がいかなかった。
というのも、今の葛西は18日のTVh杯を制するなど調子を上げてきており、「もっと飛べるはず」という自信を持っているからだ。この日のジャンプは向かい風に当たったが、踏み切りのタイミングがずれ、「飛び出しで止まった感じがあった」と有利な条件を生かし切れなかった。
葛西が反省するのも無理はない。W杯ランキングが上位で、予選を免除されている10選手は、葛西より助走スピードが遅くなるゲートを使っても軒並み130メートル台をマーク。オーストリアのエースで今季5勝、19歳のグレゴア・シュリーレンツァウアーは、36歳の葛西より約1キロ遅い速度で139メートルを楽々と飛んで見せた。
今季の葛西は踏み切りでスキー板の先が下がる悪い癖を修正できつつあり、上位を狙える手応えをつかんでいる。それだけに「もう少しスムーズに飛べるよう完成度を高めないといけない」と力を込めた。1年後の五輪本番に良いイメージで臨むためにも、本戦では失敗は許されない。【立松敏幸】
○…昨年2月以来のW杯復帰となった岡部は131.5メートルで予選16位。時差ぼけの影響もあって「体がちょっと硬かった」と不満の残る内容だった。全日本スキー連盟の若手育成の方針で今季前半は遠征メンバーから外れた。だが、国内戦で勝利を積み重ね、自らの手で遠征組に返り咲いた。それだけに今大会は結果がほしいところ。「いい結果が出せるジャンプができればいい」。出場54選手中最年長ジャンパーとなる38歳は、本戦での巻き返しを誓っていた。
毎日新聞 2009年1月24日 10時43分(最終更新 1月24日 12時53分)