文部科学省が昨年四―七月に小学五年と中学二年を対象に初めて実施した全国体力テストの結果を公表した。大規模な調査である。きちんと分析し、子どもたちの体力向上へ有効に生かさなければならない。
調査は、小五と中二のすべての児童生徒を対象としたが、実際にテストを受けたのは小学校が約一万五千六百校の約七十八万人で、全体の71%、中学校は約七千六百校の約七十七万人で、70%だった。例年秋に体力テストを行っている学校が多く、日程変更が難しかった。
実技は握力や上体起こし、立ち幅跳びなど八種目を行った。さらに児童生徒の生活・運動習慣や学校の施設などの状況も調べた。八種目の数値を得点化した八〇点満点の体力合計点を、都道府県別平均値でみると約六―一〇点の差が出た。地域差が大きいということだろう。
岡山、広島、香川各県は、小中学校別、男女別の四分類で広島の中二男女以外、体力合計点の平均が全国平均を上回った。岡山県の小五男子は全国八位、女子は六位と高い水準にあった。ただ、全国平均を下回る種目もみられ、岡山県教委は新年度に有識者による委員会を設けて結果を分析し、家庭、学校向けの体力向上プログラムをつくるとしている。きめ細かく検討してもらいたい。
子どもたちの体力低下がいわれて久しい。文科省は、今回の全国一斉テストで「やっと確かなデータを得ることができた」と対策強化を意気込む。全国テストを通してこれまで熱心でなかった地域や学校を刺激する効果があったのなら、一定の評価ができよう。
文科省は、全国体力テストを毎年実施したいようだ。しかし、大規模な調査を定期的に行う必要性には疑問の声が強い。今回の結果をみると、従来から行ってきた抽出方式の結果と大きな差はない。学校現場からは興味を引く分析内容に乏しいといった意見が出ている。自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の昨年の公開討論では不要論が表面化したほどだ。全国調査の継続に説得力があるとは思えない。
今回の調査では、天然芝の屋外運動場がある学校は、体力合計点が高い傾向にあった。それなのに、天然芝の学校は小中学校とも2%程度しかない。全国体力テストの事業費は約一億九千万円に上った。調査に多額の費用をかけるよりも、体力向上を促す施設整備や指導者養成に力を入れる方が有意義だ。
インフルエンザが全国的に猛威を振るっている。岡山県内でも幼小中高校の休校、学級・学年閉鎖が相次ぎ、二十二日には二年ぶりに警報が発令された。用心しなければならない。
国立感染症研究所によると、今シーズンの全国的な流行は、昨年十二月初めから始まったとみられ、比較的早いスタートという。ウイルスは一月中旬現在、A香港型が最多で45%、Aソ連型が36%、B型が19%。Aソ連型では、治療薬タミフルが効かない耐性ウイルスが97%を占めている。これは全体の三分の一強がタミフルが効かない計算となり、警戒が必要だ。
岡山県では、昨年十二月二十五日に注意報が発令された。指定八十四医療機関の一施設当たりの患者数が基準の五人を超えたためだ。その後、一月第二週(五―十一日)は二〇・六人、第三週(十二―十八日)は三一・八人と急増し、警報発令基準の三十人を上回った。八検体からいずれもAソ連型が検出され、うち三検体はタミフルが効かないことがわかった。
インフルエンザは、普通の風邪と同様にのどの痛みなどもみられるが、高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などの全身症状が強いのが特徴だ。肺炎、気管支炎など重症化することもある。単なる風邪と甘く見ず、早めに医療機関にかかることが必要だ。
抵抗力の弱い高齢者は特に気をつけたい。東京都町田市の病院では、インフルエンザの集団感染で、七十七―百歳の女性三人が死亡、感染者は百人を超えた。施設での集団感染には十分注意を払わなければならない。
予防策は手洗い・うがいを励行し、睡眠と栄養を十分に取ることだ。せきやくしゃみは口や鼻を覆うなどのエチケットを心がけ、さらなる流行に歯止めをかけたい。
(2009年1月24日掲載)