「まるでダム担(担当記者)ですよ」と県庁担当記者がぼやくほど、昨年の熊本はダム問題に明け暮れた。
9月11日、蒲島郁夫知事は40年来の懸案の国営川辺川ダム計画に反対を表明した。「球磨川は宝」「現在の民意は川辺川ダムによらない治水の追求」。県民の多くが好意的に受け止めた。
11月、今度は前知事が撤去を決めていた県営荒瀬ダムを「存続」に転換した。撤去による河川環境の改善を求める住民や漁協の願いを押し切ったのは「撤去は多額の金がかかる」。知事は「宝を守る」ことより財政再建を優先した。
第3のダム問題となった県営路木ダム計画では、県が建設の根拠の一つとする浸水被害がうそだった可能性が浮上したが、知事は多くを語らず、再検討の姿勢も見せない。建設には、荒瀬ダム撤去とほぼ同額の約90億円がかかるのに……。
「知事は超が付く現実主義者」との評がある。対応がちぐはぐに見えるのはそれ故だろうか。三つのダム問題とも事態は流動的で、決着までにはまだ一山も二山もありそうだ。蒲島知事のダム問題は今年も続く。【友田道郎】
毎日新聞 2009年1月7日 西部夕刊