◆「報道発 ドキュメンタリ宣言」悩める国ニッポン~大都会の精神科救急24時 テレビ朝日系=26日午後7:00
息が詰まる社会なのか、生きづらい世の中なのか。日本列島には今、心を閉ざし心を病む老若男女が増えている。何らかの精神疾患で通院する人は全国で300万人を超えるという。とかく偏見にとらわれ、精神科病院も郊外が多いのが現実だが、昨年秋、大阪市大正区にオープンした「ほくとクリニック病院」は街のど真ん中。しかも24時間、救急患者を受け入れる前例のない取り組みをしている。その内部に密着した取材は三つの意味で衝撃的だ。
一つはうつ病、統合失調症、アルコール依存症、認知症などさまざまな患者の病態が想像以上にリアルに映されていること。怖いと感じる人もいるだろうが、正しく冷静に病気を理解する気が起きてくる教育的な効果がある。
二つ目は素顔をカメラに見せる人も含め多くの患者自身と家族が取材に応じたこと。必死で生きようとする姿が胸を打つ。難しいが、社会から隔離、の時代ではない。
三つ目は医師、看護師を含めた病院側の懸命さがなまなかではないこと。心身ともに患者との格闘だ。澤温(さわゆたか)院長(61)の「患者の笑顔が見られたら大丈夫」という言葉に、ホッとするものを感じた。【網谷隆司郎】
毎日新聞 2009年1月24日 東京夕刊