◎コンビニ最大手進出 地域貢献も競ってほしい
コンビニ最大手のセブン−イレブン・ジャパンが富山、福井両県に初出店し、北陸のコ
ンビニ業界が新たな競争の時代に入った。年内には石川県にも開業し、同社は今後三年間で計二百店を北陸に出店する。既存各社も生き残りをかけて戦略を見直しているが、地元の支持を得るには郷土の食材を掘り起こして商品化するなど地域に目を向けた経営姿勢が大きなかぎを握る。それぞれ地元との結びつきを強め、地域貢献もどんどん競ってほしい。
昨年の主要コンビニ十一社の売上高は全国百貨店売上高を初めて上回り、七兆八千億円
の市場となった。コンビニ業界はATM設置や電子マネーなど新たなサービスを導入して業態を拡大してきたが、地元の素材を使った食品開発にも積極的に乗り出している。北陸は食の宝庫であり、地域色を引き出す企画は大歓迎である。独自の流通網を生かし、食文化発信や地産地消を定着させる一翼を担ってもらいたい。
セブンは北陸一号店として富山、福井県にそれぞれ三店を開業した。石川県では今秋、
セブンに調理済み食品を供給する工場が白山市で稼働し、それに合わせて石川にも出店する。特定地域へ集中出店する「ドミナント方式」で一気に認知度を高め、攻勢をかける。
北陸はすでにコンビニが飽和状態との指摘もある。業界最大手の進出により出店余地は
さらに狭まり、今後は淘汰が避けられないかもしれない。コンビニ業界も店舗拡大路線から、質の充実を目指す時代に入ったと言えよう。
北陸のセブン一号店は開業と同時に「北陸旨(うま)いものフェア」を開催し、地元食
材を使った弁当やおにぎりなどを並べた。各地で自治体と協定を結び、地域資源の開発ノウハウを蓄積してきたのが強みである。既存各社も大学生と連携した弁当開発や、地元食品を全国に広げる「地産他消」に取り組んでおり、アイデアでは負けていない。観光PR拠点としての機能を新たに備える動きも出てきた。
地域にしっかり根をおろすことが生き残りの道でもある。工夫次第でコンビニファンを
開拓する余地はまだまだあるはずだ。
◎H2A発射成功 宇宙ビジネスの扉開く
温室効果ガス濃度を測定する人工衛星「いぶき」をはじめとする衛星八基の打ち上げ成
功は、日本の国産ロケットによる宇宙ビジネスの新たな扉を開くものだ。H2Aロケットの打ち上げを担当した三菱重工業は今月、韓国から多目的衛星打ち上げを受注したばかりである。実績を積み上げていけば、宇宙ビジネスへの本格参入も夢ではない。
今回のH2A15号機の打ち上げ費用は前回の14号機より約二十四億円安く、過去最
低の約八十五億円という。衛星打ち上げの分野は、欧州勢や米国などとの競合が激しく、日本は費用が割高な点が課題とされてきた。ようやく価格面でも太刀打ちできるところまでコストダウンできたのは大きな前進であり、打ち上げ業務を民間に移管した成果だろう。
H2Aロケットは、今回で九機連続の成功となる。最新型のロケットで比較すると、成
功率は欧米にひけをとらず、打ち上げ技術は既に世界のトップレベルといわれる。それでも日本のロケット開発は打ち上げ総数が少なく、技術の蓄積や経験は必ずしも十分とはいえない。一九九〇年代には、H2シリーズのロケットで米メーカーから衛星数十基分を受注しながら、その後、打ち上げ失敗が相次ぎ、すべて解約された苦い経験もある。今回の成功におごらず、さらに技術を成熟させ、信頼を積み上げてほしい。
国の衛星「いぶき」と同時に打ち上げられた衛星のうち公募の六基は、大学や中小企業
などによって開発された。なかでも、ものづくりの技術を磨いて小型衛星「まいど1号」の開発にこぎつけた大阪府東大阪市の中小企業の取り組みは、不況に沈む日本に元気と勇気を与えてくれた。
東大阪市の町工場の人たちが衛星打ち上げの夢を追いかけ始めたのは、長期不況がまだ
続いていた二〇〇二年のことである。関係者は事業組合を設立して衛星の製造・販売を本格化させるという。今回の小型衛星開発には学生らも多く参加している。科学技術や製造業の可能性に若者の目を向けさせたことも大いに評価されてよい。