閉じこめられた家に砲撃を受け、妻子や親類を亡くした時の様子を証言するナエル・サモニさん=ガザ市南部
がれきの山となったサモニ家の家屋群=ガザ市南部
シアムさんの自宅では、イスラエル兵らが残したゴミの山が悪臭を放っていた=東ジャバリヤ、いずれも田井中写す
【ガザ市(パレスチナ自治区)=田井中雅人】イスラエル軍は住民を集めて砲撃を加え、民家を乗っ取って拠点にした――。パレスチナ自治区ガザを23日間、攻撃し続けたイスラエル軍の所業を、住民が詳細に証言した。「民間人の被害を避けようと細心の注意を払った」(オルメルト暫定首相)という説明とは正反対の実態で、「国際人道法違反だ」との批判が出ている。
ガザ市南部ザイトゥン地区。壊れた家々のがれきが広がる一帯で21日、サモニ家の葬儀が営まれた。イスラエル軍の砲撃で、妻ハナンさん(35)と娘ホダさん(17)ら家族、親類29人を一度に失ったナエルさん(36)が、悲しみに身を震わせていた。
地上侵攻が始まった3日夜。突然、一家の壁が破壊され、機関銃を携えたイスラエル兵が侵入してきた。「家から出ろ」と、120メートル先の親類宅に追い立てられた。
周辺に暮らす親類約110人も同じ家に集められた。家が複数回の砲撃を受けたのは2日後で、計22人が死亡。近所への砲撃でも7人が死亡した。一帯の計21軒の親類宅が砲撃を受けたり、戦車やブルドーザーでなぎ倒されたりした。救急車は兵士らに妨害され現場に近づけなかった。
「家畜のように閉じこめられ、殺された。許せない」とナエルさん。
赤十字国際委員会は「衝撃的な事件だ。イスラエル軍は我々が救援に向かうことすら許さなかった。国際人道法違反だ」と激しく非難する声明を発表。AP通信などによると、国連人権理事会のパレスチナ地域特別報告者、リチャード・フォーク氏も軍の一連の攻撃について「戦争犯罪にあたるか独自に調査をするべきだ」と主張している。
自宅を占拠された住民もいる。ガザ北部ジャバリヤ難民キャンプ東方、アタ・シアムさん(61)の4階建ての雑貨店兼自宅は今、ゴミの山が悪臭を放っている。