生徒の理系離れや国の科学技術力の低下が心配されているが、理系コースの高校3年生の基礎的な「数学力」は、世界トップクラスだった約30年前とそれほど変わっていないことが、東京理科大数学教育研究所の大規模調査でわかった。24日、同大学である数学教育研究会で報告する。
ただし、調査した05〜08年度の4年間で正答率がやや下がり気味なことや、記述式の問題を苦手とする傾向があることから、将来の数学力低下を心配する声もある。
調査対象は「数学3(ローマ数字の3)」「数学C」を履修している理系コースの高校3年生。05〜08年度に延べ214校の約1万5500人にテストをしてもらい、日本が香港に次ぐ世界2位の成績だった1980年度のSIMS(第2回国際数学教育調査)の結果と比べた。
08年度のテストは1セット11問を4セット(計44問)つくり、このうち32問は80年度SIMSの問題から選んだ。
その結果、共通問題で今回の方が正答率が高かったのは19問、SIMSの方が高かったのは3問。05〜07年度も同じ傾向で、「30年前の高校3年生に比べて成績は劣っていない」と結論づけた。
しかし、08年度で正答率が80%以上だったのは、いずれも選択式で、記述式の成績の方が全体的に悪かった。
また、4年続けて同じ問題を出した15校で年ごとの成績を比べたら、その正答率は05年度57.4%、06年度58.6%、07年度54.1%、08年度52.4%と低下傾向だった。
同研究所の澤田利夫所長は「最近の成績が下がり気味なのが気になる。ゆとり教育の学習指導要領(02年度施行)で中学1年から学んでいる08、07年度の調査対象の生徒は、それ以前と勉強の雰囲気が変わってきているのかもしれない」と話す。(松井潤)