「派遣切り」が広がる中、農業を新たな雇用の受け皿にとの機運が広がっている。有数の農業県である熊本県も新規農業従事者に補助金を出すことを決めた。ただ、関係者の話を聞くと、ことはそう簡単でなく、バラ色でもない。
農水省のまとめでは1~2月の農業法人の求人数(7日時点)は全国最多の熊本でも48人にとどまり、絶対数が少ない。また、職と同時に家も失った離職者が多いが、県によると「住宅まで用意できる農業法人は少ない」といい、住居は自力で見付けざるを得ない。
数人の求人を出している県内の野菜栽培農園の経営者は「離職者の求人は増えているが、どこまで本気か見極めが難しい。そもそも農業はきつくて賃金も安いから敬遠されていたのに突然、受け皿だと言われても」と戸惑いを隠さない。
自力就農は土地取得や栽培ノウハウなどで、さらにハードルが高い。熊本では07年度の新規就農者が224人いたが、農業未経験者は1割の23人だった。
とはいえ、農へのシフト自体は間違っていないと思う。ここは国や自治体の知恵の出しどころだ。【友田道郎】
毎日新聞 2009年1月21日 西部夕刊