米国の復活はなるか?
読書で学ぶ「古き良き時代の米国」
今日は珍しく暇な一日を過ごしています。久しぶりに昔よく読んだ本を取り出して見ました。以前にも紹介していますが、私は「偉人伝」物語が大好きです。それ以外のものは余り読まずに、そればかりを読んできました。
中でも愛読者は澤田謙という戦前の作家ですが、この人の書いた本は神田の古本屋街で探して買いあさりました。この人物については前にも紹介しています。
http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/archives/50793202.html
この澤田謙の著書に「世界十傑伝」というものがあります。その中には世界中の当時の英雄が取り上げられています。この本は昭和6年に書かれたものです。
この中で米国を代表する人物としてはヘンリー・フォードに代わって、シュワツブという人物が描かれていました。この人物をネットで検索したら残念ながら一つしか見つかりませんでした。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=00049859&TYPE=HTML_FILE&POS=1
何故、今日この人物について読み返して見たのかについては理由があります。昨年秋からの米国発の世界的な不況突入によって、多くの国民の感心は政治よりも経済に移行しているように思えます。
ブログへのアクセス数についても、正直のところ激減しようやく最近8500台を回復しましたが、1万を超えていた頃から見ると考えられない落ち込みです。
ランキングも下げましたが、代わって上位にあるブログは実態経済に詳しい方のブログと著名な経済学者のブログです。これを見ても人々の関心は経済に向いているのが良く分かります。
さて、【中韓を知りすぎた男】さんのブログでは、米国経済の底力とその復活がいつも論じらています。私も米国の経済の再興を願う一人ですが、果たして本当にそれは可能なのか?
その点を自分なりに考えて見たいと思って午前中は本を読んでいました。偉人伝とは統計論や経済学論とは違います。全く役立たないと思う人もいるでしょう。
しかし、そこには時代を切り開いてきた指導者の人間像が描かれています。現在の米国製造業分野において、果たしてそのようなダイナミズムに溢れた挑戦者はいるのでしょうか?
英国から米国に世界の覇権が代わったのは、鉄道文明から自動車文明への劇的な変化であったと言われていますが、この自動車文明を支えたのは石油業界と鉄鋼業界でした。
この鉄鋼業において、スティール・キングと称されたのが、このシュワツブという人物でした。この人物は30歳代の若さで米国鉄鋼業界筆頭のカーネギー社の社長に就任した人物です。
彼はカーネギー社の一族ではなく、一労働者から身を起こして米国有数の産業王にまで上りつめた。
チャールス・シュワツブ
1862年生まれ 貧しい家庭に生まれ、中学を2年で中退し行商となり、若い頃に食料品店の店員となる。その店からカーネギー社の製鉄工場の煙突が見えた。
その工場の所長が偶然店に買い物に来たときに、彼は工場で働きたいと申し出て10代で工員となった。ここから奇跡は始まった。6年後に彼はカーネギー本社の技術部長へと抜擢された、このときまだ24歳の若さであった。
工学の専門教育を受けたこともない一人の若者が、何故にそれが可能だったのか、暇も時間もないので大学にも行かず学位もなかった彼が何故それほどまでに出世したのか?それはあらゆる貧児に共通する教育法ー「常に目を見開いている」という手法で自らを鍛え上げていたから可能だったのです。
工場にある釘一本まで知っていたという恐るべき観察力であったと言います。彼はその後も働き続け、そして35歳の若さで社長となった。正に努力の人であり、英雄に相応しい人物である。
そのような彼も新しい事業を起こしたが苦境に陥ったときがあった。誰しもが彼の没落を予想した。しかし、彼は有力者の力に頼ることをせずに、会社で働いていた薄給のサラリーマンから15名もの青年重役を抜擢した。
そのときの彼の言葉は明快そのものだった。
「何かをなそうとしたときには、決して斯界にある著名な人物に頼ってはいけない。これからの前途ある若者に賭けよ、そうすれば彼らは全身全力を挙げて、その事業に傾倒するだろう。」
そして難関を克服したのが、彼の創設した米国製鋼会社であった。この会社がなかったら、米国は第二次世界大戦で勝利を果たして収めたことが出来たであろうか。
彼の思想と事業観と言ったものを考えて見ましょう。この頃は経営者と労働者の摩擦もまた激しいものでした。彼は常にこのように語りかけていたのです。
「我輩は利益分配の信者だ!労働問題を解決する道はそれだと信じている。カーネギーは金儲けにかけては米国一の人であったが、それは自分の儲けの半分をいつでも従業員に投げ出していたから出来た。」
「会社が隆盛に赴いたこともそうだが、私は従業員も隆盛に赴いたことに歓喜した。労働者の賃金は増額できた、なぜかと問われれば、会社はあらゆる場合において、会社の従業員が会社の出した利益に対して、分配を受ける仕組みとなっていたからだ。」
「労働問題とはもとより至難なことである。しかし、産業の支配者の間に、労働者を優遇するばかりでなく、仕事そのものへの喜びを与えるごとき案が一般的に採用されるに至ったならば、この困難さも必ずや克服される」
米国の製造業が復活するとしたら、このような経営者が再び米国社会の中に現れなければならないでしょう。
落ち行く帝国となった米国が、再興のために何を成すべきなのか?もう、その答えは出ていると思います。しかし、ビック3の経営者はそれを本当にやり遂げることが果たして出来るのでしょうか?
〜新風連ブログ〜