インタビュー:緊急課題は雇用対策と内需拡大=民主党・菅氏
リンダ・シーグ記者 吉川裕子記者
[東京 23日 ロイター] 菅直人民主党代表代行は23日、ロイターのインタビューに応じ、政権奪取後に取り組む緊急課題について、雇用対策のほか内需拡大を提言した。
雇用対策では安全網の拡充のほか新たな雇用創出が不可欠とし、内需拡大のための思い切った財政出動が必要だとの認識を示した。
政権交代に向けて、解散・総選挙時期が衆議院の任期満了の9月までずれ込む場合にも備え、「緊張感を維持し、政権与党の問題点を指摘していく」姿勢を見せる一方、政権奪取後の政策決定システムについて、現政権の官僚丸投げのシステムから「与党と内閣が一元化」されたシステムに組み替えていくとの意気込みを語った。
インタビューの概容は以下の通り。
――民主党単独での政権交代の可能性も出てきているのではないか。選挙見通しは。
「選挙予測はしないことにしている。当事者なので、気を抜かないで最後まで準備して国民の判断を仰ぐ立場。ただ、国民からみると自民党には任せられないということで、逆に民主党に1度政権を担当させてはどうかといことにつながってきていると感じている。ただそれが、単独政権云々とかは全く分からない」
――自民党の造反問題や消費税増税問題の収束のさせ方を見ると、総選挙に対する危機感が背景にある。9月の任期満了まで解散が先延ばしされると、民主党の勢いが削がれる。
「そこがまさに一番心配するところだ。長期に緊張感を保つのはなかなか大変なことで、今私たちにとって一番重要なことは、緊張感を維持し、たとえ解散が任期満了まで延びたとしても今までと同じような緊張感でしっかり連立政権の問題点を指摘し、民主党ならこうすると言うことをきっちり言っていかなければならない」
――具体的には。
「今私たちが考えなければならないのは、世界的な金融・経済危機の中で、景気対策をどうするのかと同時に、その後の日本のグランドデザイン。抽象的に言えば夢が持てる社会、グリーン・イノベーション(緑の技術革新)を主張している」
「石油危機の後、日本が最も省エネ技術の先進国となったように、この大きな危機を越えた時に、日本がクリーンな太陽エネルギーなどの分野で世界のトップランナーとなり、農林業で若者の雇用が生まれる社会に生まれ変わっている。そういう意味で、グリーンイノベーションを国民に訴えていきたい」
――政権奪取後、金融経済危機を克服するために優先する政策は。
「短期、中期、長期あるが、一番目の前にある問題では雇用問題。セーフティーネットを充実させる側面と新たな雇用創出と両面で、緊急かつ一番力入れなければならない課題だ」
「内需拡大策も必要だ。子育て支援として、子供1人当たり月額2万6000円の子供手当て給付を提案しているが、これは少子化対策となると同時に内需拡大につながる。高速道路の無料化も内需拡大につながる。内需拡大のための思い切った財政出動も必要だ。同じ公共事業でも小・中学校の耐震化には2、3兆円かかると言われるが、これは比較的短期で工事が始まるため景気てこ入れになる。つまり、将来に意味がある公共事業には、ある程度景気下支えからもやるべきだと考える」
――年度途中での政権交代になるが、優先政策をどのように執行させるか。予算を組み替えていくことになるのか。補正予算で対応するのか。
「たとえば5月に解散・総選挙になり、6月に民主党中心の政権を作るとすると、09年度予算は既に動き出しているので、組み替えるということはできない。(現与党が作った予算の中で)不足するものや不要な措置があるとすると、補正予算で強化すべきものは増額し、不要なものについては、場合によってはその段階で残っているものはやめてしまう。現実的な対応になる」
「ただ、基本的考え方は、経済(政策)的には内需拡大。将来に向けてはグリーン・イノベーション。短期的には雇用対策。これらをどういうメリハリをつけてやっていくかは、09年度予算案の審議に備えて、民主党の考え方をまとめている」
――「脱官僚」を主張してきた。政策決定システムはどう変わるか。
「物事の決め方は、今の民主党のシステムはよく出来ている。自民党政権が内閣と与党の2本建て、つまり二元(体制)であるのに対し、われわれは与党と内閣を一元化させる。つまり、党そのものの大部分が内閣の決定にいろいろな意味で関与する。内閣の決定=党決定、党の決定=内閣の決定になるようにしていく。昨年、税制調査会の一本化も打ち出した」
「このほか、事務次官会議の改革。現在のような霞が関の談合の最終決定機関にしない。また、大臣が副大臣や政務官を決め、ひとつのチームにしていく。つまり、省庁単位でも「大臣・副大臣・政務官」がひとつのチームとして、ヘッドクオーターを作っていくなど。与党と内閣の一元化とこうしたチーム編成で、「脱官僚」の政策決定システムを作っていきたい」
(ロイター日本語ニュース 吉川 裕子記者)
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