経済の急激な下降を示す数値が相次いでいる。国際通貨基金(IMF)や国内の民間調査機関のほとんどが、日本がマイナス成長に陥ると予想している。日銀も経済見通しを修正して、08年度がマイナス1・8%、09年度がマイナス2・0%の予想に改めた。
日本の輸出は12月に前年同月比で35%も減少している。この結果、08年の日本の貿易黒字は前年比で8割減という状態だ。リーマン・ショックの後、月を追って悪化しており、自動車や電子部品など日本経済をけん引してきた輸出産業は総崩れ状態だ。
消費もマイナスに転じていると予想されており、来月中旬に発表される昨年の第4四半期(10~12月)のGDP(国内総生産)の値は、相当悪い数字が出てくることになりそうだ。
今後の消費動向を示す数値も急速な悪化を示しており、輸出に加え内需も崩れるとなれば、日銀の予測をさらに下回る事態も想定しておかねばならないかもしれない。
米国の住宅バブル崩壊に端を発した金融危機は、米欧の政府が、大量の公的資金を投入するなど、対応策がとられている。
しかし、資金の流れは凍りついた状態が続いており、日本でもその影響は深刻になっている。
その対応策として日銀は、主に大企業が資金調達の手段としているコマーシャルペーパー(CP)の買い取りを決め、社債についても購入を検討することを表明した。
CPや社債での資金調達が難しく、銀行融資にシフトしているが、銀行の資金が大企業に吸収されれば、中小企業の資金繰りはさらに苦しくなる。3月末の年度越えを控えており、資金繰り支援に日銀は万全を期してもらいたい。
今回の経済危機の発信地の米国ではオバマ新大統領が就任した。しかし、株価は軟調に推移している。
欧米の大手銀行で不良債権が拡大を続け、市場の動揺を誘っている。不良債権を分離するなど抜本的な対策を早急にとってもらいたい。経済対策についても米政府は早急に具体策をまとめ実行してほしい。
景気が後退すると貯蓄が過剰となり、それが使われないと、経済はさらに縮小する。過剰貯蓄を吸収して支出を拡大するのは政府の役割だ。
財政状況は厳しいものの、日本としても財政はその役割を果たすべきだ。ただし、ばらまきではなく、経済効果の高い分野に重点配分するよう改めて指摘しておきたい。
民間企業はいっせいに緊縮に走っている。しかし、不安心理の増幅が連鎖すれば経済は萎縮(いしゅく)を続けるだけだ。こういう時期だからこそ、人々が感心するような商品やサービスを投入するなど、少しでも先行きが明るくなるような活動を期待したい。
毎日新聞 2009年1月24日 東京朝刊