空前の漢字ブームだそうだ。日本漢字能力検定(漢検)の志願者は、ここ七年間で百万人以上も増え、二〇〇七年度は二百七十万人を超えた。書店では漢字の由来から、さまざまなうんちくを傾けた“漢字本”が一角を占めている。
このブームに一役買っているのが麻生太郎首相である。例の「未曾有」を「みぞゆう」と誤読したのは昨年十一月だった。以来、難読漢字を取り上げた単行本が人気を集め、ベストセラー入りしている。
首相の誤読が難読漢字への関心を高めたのは間違いないようだ。「読めなかったら恥ずかしい」。そんな気持ちで買い求める人も多いのではないだろうか。
先日の参院予算委員会でも首相は「窮状」を「しゅうじょう」と間違えた。月刊誌に掲載された首相の論文から抜き出した難読漢字をパネルに示され、「本当にあんたが書いたのか」と野党議員から追及される一幕まであった。
読めて当然と思っていても、他県の人が読めないのが地名だろう。「ウソ読みで引ける難読語辞典」(小学館)に難読地名が収録されている。岡山県内からは「伊部」「高梁市」「蒜山」が入っていた。案外知られていないものだ。
漢字の読み間違いは意外とありそうだ。それにしても「踏襲」を「ふしゅう」とするなど、首相の誤読は論外だ。