海外

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

オバマ米大統領:グアンタナモ閉鎖 人権と安全、両立訴え 最初の試金石に

 【ワシントン大治朋子】オバマ米大統領は22日、グアンタナモ収容所の1年以内の閉鎖を命じ、ブッシュ前政権との「決別」を明確にした。国民の安全確保と「容疑者」の人権保護は両立できると訴えるが、大統領としての手腕が問われる最初の試金石となりそうだ。

 閉鎖に向けた課題は三つある。米国防総省が「容疑なし」とした約60人の収容者の送還先だ。イエメンなど「送還先の政府に厳しい監督が期待できない」(米国防総省)例や、非人道的な扱いを行う懸念のある国も存在する。

 欧州連合(EU)などは受け入れの検討を表明。ゲーツ国防長官は22日、記者団に「(前政権時代には)なかった反応」と期待したが、どこまで協力を得られるかは不明だ。

 「訴追が必要」な約80人の扱いも課題だ。移送先として米中部カンザス州などの米軍施設の名前が候補に挙がっているが、地元議員が猛反発している。同省が希望する「新たな拘束施設」の国内設置には、人権団体が「第二のグアンタナモ」と反対している。

 グアンタナモの特別軍事法廷では米同時多発テロ(01年)の主犯格とされる国際テロ組織アルカイダの元最高幹部、ハリド・シェイク・モハメド被告ら21人の審理が行われてきた。新政権は通常の裁判所への移管に前向きだが、治安当局は「秘密情報が公表される」と懸念する。

 三つ目は「訴追できないが、釈放するには危険」とみる約100人の処遇だ。元収容者が釈放後、テロ事件を起こせば新政権の責任が問われるが、容疑なしのまま拘束を続ければ「ブッシュ政権と同じ」とみなされる。

 大統領は就任演説で「安全」のために「理想」を犠牲にした前政権を暗に批判した。グアンタナモの収容者を合法的に処遇することが米国への反感をなくし「安全につながる」と訴えるが、「理想論だ」(共和党議員)との批判も強い。

 ブルッキングス研究所のウィッツ上級研究員は、「実際に閉鎖したわけではなく、過剰評価すべきではない。早期に閉鎖ができないため時間稼ぎの苦肉の策でもある」と指摘する。

==============

 ■ことば

 ◇グアンタナモ収容所

 キューバの米海軍グアンタナモ基地(総面積116平方キロ)の一角に02年1月に設置された。現在は約245人を収容。従順度などで少なくとも八つの施設に分かれる。土地は米国が1903年、当時は友好関係にあったキューバから租借したが、キューバ現政権は「違法占拠」とみなしている。

毎日新聞 2009年1月23日 東京夕刊

検索:

海外 最新記事

海外 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報