残留孤児伝えねば図書館司書土屋さん広島女学院大で初披露
戦後の旧満州(中国東北部)で、貧しさから娘を売った母親の苦悩を描いた一人芝居「花いちもんめ」(作・宮本研)を演じている土屋時子さん(60)=中区=が20日、勤務する広島女学院大(東区)で、初めて学生らを前に上演した。3月で定年退職する土屋さんは「残留孤児の悲劇は決して風化させてはならない。これからも若い人たちに伝え続けたい」と語った。
「花いちもんめ」は開拓団として渡った満州で娘を「亡くした」という遍路姿の女性の一人語りで、実は娘は死んだのではなく中国人に売り渡したことが明かされる。自責の念にかられて生きてきた女性の語りが、戦争の残酷さを静かに訴える。
土屋さんは同大の図書館司書として71年から勤務しながら、平和や生命をテーマにした演劇活動を続け、「花いちもんめ」は96年から演じている。06年10月に江田島市の寺で演じて以来、久々の演目。退職を前に、大学側から「ぜひ学生に披露してほしい」と依頼があった。
満州事変以後の経緯を導入に加えたり、古い言い回しを言い換えるなど、学生にも理解しやすいよう手を加えた。土屋さんは「引き裂かれた母と娘の苦悩は、学生には今は理解できないかも知れないが、後になって分かってもらえればと思う」と言う。「退職後は演劇活動に一層力を入れたい」と話した。【宇城昇】
毎日新聞 2009年1月21日 地方版