北海道・新千歳空港で昨年2月、日本航空機が管制官の許可を得ずに離陸滑走した問題で、運輸安全委員会は23日、管制官が「テークオフ」(離陸)という言葉を使って「待機」を指示したため、機長が誤解したことが原因とする調査報告書を公表した。
同委は、管制官の用語の使い方が誤解の一因になったと判断、国土交通省に対し、管制規定で「テークオフ」という用語の使用を制限するよう求める異例の意見を付けた。新千歳空港の管制業務を行う自衛隊でも徹底されるよう、防衛省との調整を求めた。報告書を受け、国交省は、用語の使用制限を行う見通しだ。
問題が起きたのは昨年2月16日午前。羽田行き日航機が管制官の許可を得ずに離陸滑走を始めたため、管制官が離陸中止を指示。同機は緊急停止したが、滑走路の前方には、着陸したばかりの別の日航機が約1800メートルまで迫っていた。
同委の調査によると、同空港の管制業務を担当する航空自衛隊の管制官は、同機に「エクスペクト・イミディエート・テークオフ(expect immediate take‐off)=すぐに離陸できるよう準備せよ」と指示していた。しかし、同機の乗員は「エクスペクト」を聞き逃し、「イミディエート・テークオフ=すぐに離陸せよ」と誤解し、滑走を始めた。
航空関係者向けに国交省が発行している「航空路誌」には、「管制官は、離陸許可および許可の取り消し以外に通常、『テークオフ』の用語を使用しない」と明記されている。これは、国際民間航空機関(ICAO)が示している管制用語の基準を基に同省が作成したもので、国際的に見て一般的なルールとされる。
一方、やはり国交省作成で管制官が使用する「管制方式基準」には、「テークオフ」の使用制限に関する記載はない。このため運輸安全委は、管制官と乗員の間で「テークオフ」の使い方に関する認識の溝が生まれる可能性を指摘。管制官の基準でも、離陸許可と許可取り消し以外に「テークオフ」を使用しないことを明記すると同時に、ほかの用語についても規定化の必要性を検討するよう求めた。
国内では2007年以降、管制官の指示が乗員に正確に伝わらなかったことが原因でトラブルが起きるケースが相次いでおり、同委は、管制用語の使用法を改善することで、意思疎通の向上を図りたい考えだ。
報告書では、日航機の乗員が、社内規定に反して管制官の指示を復唱しなかったことについても、問題を招いたと指摘している。
|