「医師は地域で育成する時代に」
千葉県立東金病院の平井愛山院長は1月22日、全国自治体病院協議会が開いた「院長・幹部職員セミナー」のシンポジウム「地域住民と守る自治体病院」で講演し、「医師を大学から派遣してもらう時代から、地域や病院で育てる時代になった」と指摘。地方の勤務医不足を解消するには、医療関係者や行政・政治、地域住民などの関係者が一体になって、地域や病院の魅力をアピールする必要があると訴えた。
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平井氏は、2004年にスタートした新医師臨床研修制度をきっかけに病院への医師供給システムが激変し、これが勤務医不足に拍車を掛けたとの考えを示した。その上で、同県が実施した調査では、後期研修先を選ぶ際の優先順位として、「指導体制」や「研修ブログラムの充実」を挙げる研修医が多く、「地域」が少なかったことを紹介。「それぞれの地域や病院には、さまざまな魅力が絶対にある」と述べ、研修医が魅力を感じる病院・地域づくりが医療再生のカギになるとした。
その上で平井氏は、魅力ある地域づくりには、医療関係者や政治・行政、地域住民、医療産業、マスコミなどが、それぞれの立場で努力する必要があると指摘した。中でも、大学による教育体制の充実は不可欠と強調。「勤務医で行くのか、開業医で行くのかを含めて、その地域で医師としてのキャリアデザインが見えてくるかどうかが重要だ」と述べた。
平井氏は、地域ぐるみの医師育成の具体例も紹介した。県病院局が、同病院など県立8病院を中心に取り組んでいる「総合医・家庭医育成システム」は、より多くの患者を診察できる総合医・家庭医を各病院が協力して育成する仕組み。地域医療の確保につなげようと、06年にスタートした。平井氏は「それぞれの自治体病院には、得意分野がいろいろある」と述べ、今後は、複数の自治体病院によるこうした「研修連携」が重要になるとの考えを示した。
また、地域の病院では特に内科系勤務医の不足が深刻化しているため、内科系の総合診療を担う病院基盤型の家庭医(ホスピタリスト)を育成する重要性も強調。こうした取り組みを全自病協の役割に位置付けるよう提案した。
このほか、地域の患者や住民が東金病院の若手医師のコミュニケーション能力を採点する取り組みを紹介。これが医師のスキルアップや、患者との相互理解に役立っているとの見方を示した。
同病院では、内科医が04年の10人から06年には2人にまで減少したが、今年4月には最大13人にまで回復する見込みといい、平井氏は「特に、地域医療を目指す若手医師が集まって来たのはありがたい」と述べた。
更新:2009/01/23 17:26 キャリアブレイン
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