タバコの葉の細胞にニコチンを貯蔵する膜輸送タンパク質を、京都大生存圏研究所の矢崎一史教授(植物分子生物学)、岡山大、ベルギー・ゲント大などの研究グループが突き止めた。ニコチンゼロのタバコの開発や、植物による効率のよい薬物生産につながる発見という。米国科学アカデミー紀要で20日、発表した。
タバコは虫の食害から自らを守るため、ニコチンを葉の細胞中の液胞に蓄える。ニコチンは根で作られ、水と一緒に葉の細胞に運ばれるが、ニコチンを細胞や液胞に入れるように働く膜輸送タンパク質は不明だった。
矢崎教授らは、タバコの葉の培養細胞で、ニコチン生産と同時に働く遺伝子を同定、その中の一つが作るNt−JAT1タンパク質にニコチン輸送能力があり、実際にタバコの葉の液胞膜で働いていることを確認した。
ニコチンは植物が作る生理活性物質のアルカロイドの一つ。液胞で働くアルカロイドの膜輸送タンパク質の確認は初めてで、アルカロイドの貯蔵メカニズムを解明する大きな一歩という。
アルカロイドには抗がん剤のタキソールなど多くの薬理成分がある。矢崎教授は「ニコチンを葉にためないタバコのほか、薬理成分を効率的に貯蔵したり、病原菌や害虫から守る化合物を蓄えた植物の開発につながる」と話している。
|