◎全国体力テスト 市町村別の結果も知りたい
文部科学省が実施した「全国体力テスト」で、石川県や富山県は小学校五年、中学二年
の男女とも上位に入った。成績の上位県はおおむね部活動への参加率や朝食摂取率が高く、テレビを見る時間は短いという。
昨年の全国学力学習状況調査(学力テスト)で、二年連続トップクラスの秋田県は、体
力テストでも小五の男女が二位に入るなど、学力と体力に関連性があることも示された。文科省は学力テストと同様、都道府県などに市町村別や学校別の結果を公表しないよう求めているが、それではせっかくの調査結果を生かし切れない。公表によって学校現場に奮起を促し、各家庭にも問題意識を共有してもらう効果の方が大きいのではないか。
中二の男女が全国一位の千葉県の場合、県が毎年体力テストを実施し、好成績を収めた
児童に「運動能力証」を交付している。また、縄跳びやリレーなどは、学校別の表彰制度もあるという。こうした配慮がスポーツ振興や体力向上の取り組みに役立っているのは間違いあるまい。
北陸三県では、福井県が小五の男女でともに二位に入り、石川、富山両県を引き離した
。福井県は昨年の学力テストでも、中学生が全国一位、小学生は二位と好成績を収めている。三県とも似たような体力・運動能力調査を毎年実施していながら、福井県に差を付けられた原因はどこにあるのか、詳細に分析してみる必要もある。そのうえで課題を把握し、市町教委と連携して、児童生徒の体力向上に取り組んでほしい。縄跳びを奨励したり、体育の授業で体を動かす時間をできるだけ増やすといった授業内容の見直しも欠かせない。
さらに重要なことは、家庭での生活習慣を含めた見直しを進めることだ。石川県教委が
昨年の学力テスト結果を分析したところ、正答率の高い学校は、朝食を欠かさず食べ、読書好きで、テレビ、ゲームの時間が少ない児童、生徒が多いことが分かった。七尾市や金沢市、野々市町などで行われた「ノーテレビ・ノーゲームの日」など、地域を挙げた地道な取り組みにも期待したい。
◎マイナス2%予想 腰据えて内需拡大策を
マイナス2%という日銀の二〇〇九年度の実質経済成長率予想は、事前に下方修正が予
測されたとはいえ衝撃的である。戦後最悪の景気後退が当面続くことを覚悟しなければならない厳しい日銀予想は、日本経済の大きなテーマである内需拡大に官民が総力を上げて取り組むことをあらためて迫っている。
内需主導型経済への転換は日本経済のかねてよりの課題であり、その実現を図る報告書
を内閣府の専門調査会が昨年まとめた。一九八〇年代に出された「前川リポート」の二十一世紀版とも言われたが、世界的な金融・経済危機が拡大する前のものであり、説得力に欠ける内容である。今こそ腰を据えて短期と中長期の内需拡大策に取り組むよう政府に求めたい。
バブル崩壊後、長期低迷を続けた日本経済は輸出主導で後退期を脱した。しかし、世界
的な好況を支えた欧米の消費は不況で急激に落ち込んでおり、輸出主導による景気回復は当面、望み得ない。
国内の景気回復を図る最後の鍵は個人消費をいかに喚起するかであろう。GDPに占め
る個人消費の割合は日本では55%ほどだが、欧米では60−70%を占める。所得格差の拡大が問題視されるようになったとはいえ、日本のいわゆる中産階級層は豊かで厚く、消費を伸ばす余地はまだまだある。
経済政策では、市場の拡大が見込まれる健康や医療、環境分野などの投資拡大を後押し
する政策に一層知恵を絞ることはむろん、消費拡大に結びつく円高のプラス面をもっと生かしたい。内需拡大のための財政出動で、財政再建が多少遅れたとしてもやむを得ない。今は各国が協調して需要を創出すべきときである。
当面の景気対策として政府・与党は住宅ローン減税の拡大や低燃費車購入の税負担軽減
、子育て応援手当、高速道料金の引き下げなど種々の施策を今年度補正予算案と新年度当初予算案に盛り込んでいる。定額給付金は支給のタイミングを逸した感もあるが、消費拡大効果が失われたわけではない。景気後退の深刻さを考えれば、予算案の早期成立が重要である。