友人が風俗店を始めた。いわゆるデリヘルというやつだ。
デリヘルとは、店舗を構えて客引きをする風俗とは違い、風俗嬢が自宅やホテルに出張してサービスを行なう風俗業の事だ。ヘルスをデリバリーする事からデリヘルと呼ばれるている。今やスポーツ新聞やゴシップ雑誌には、星の数ほどのデリヘル業社の広告で溢れているという事はそれだけの需要があるのだろう。
その友人はクラスでは活発な方だったが、デリヘルを立ち上げるほどの行動力と人脈は無かったと思う。風俗店には付き物と言われる裏社会との繋がりは微塵とも感じられなかった。友人は近所に住んでいる売れっ子作家に資金提供してもらったと言ってはいたが。
その事を知ったのは昨日だった。その友人から電話が掛かってきたのだ。
その友人曰くおすすめの女の子がいるらしい。歳も若くてピチピチで、バージンの割にはテクニックも長けていて、しかもオープン記念で安くするからとの事だった。最初は断ろうとしたのだが、悲しいかなオレも男だ。その友人とは長い付き合いで、少しお調子者な所もあるが信用は出来る奴だった。ここまで必死に薦めてくるからには本当にお薦めなのかも知れない。オレは期待に胸を膨らませて折り返し電話をした。
「はい、マリン倶楽部です」
「もしもし、中島と申しますが」
「おお!中島か!」
「ああ、例の子をお願いしたいのだが…」
「OK!すぐに自宅へ向かわせるぜ!」
「本当にバージンなんだろうな?」
「ああ!タイプじゃなかったらチェンジ(女の子を交代するシステム)も可能だぜ!」
「じゃあ頼むよ、宜しくな」
「ああ、御注文ありがとうございました!」
電話を切ってからというもの、高鳴る胸を押さえるのに必死だった。オレは慌てて部屋を片付けて、浴槽を綺麗に掃除した。何しろ初めてのデリヘル注文、その友人が開業しなかったら一生呼ぶことも無かったかも知れないのだ。そしてついにその時がやって来た。
「ピンポーン」
「こんにちはマリン倶楽部からやって来ました!」
オレは恥ずかしさと緊張でその声に背中を向けたままで、とても目を合わせる事など出来なかった。こっちに近づいて来る足音は、心臓を激しくノックする。そんな事情も知らずに彼女は後ろから抱き付いて耳元に軽いキスをしてきたんだ。しかしオレに触れている両手は微かに震えている。
「お客さん…御指名ありがとうございます…」
(ん…?どこかで聞いた声だ…)
「じゃあ…一緒にシャワー浴びましょうか…?」
「う…うん…」
彼女はゆっくり丁寧にオレの服を脱がせてくれた。既に臨戦態勢に入っているオレの別人格な部分。オレの裸が露わになった後は、彼女の服が一枚ずつベットの上に投げ出されていった。お互いが生まれたままの姿になった時、オレは腹を括って振り向いたんだ。

「磯野!チェンジ!チェンジ!」
ランキングが125位(笑) 我ながらザコ(笑)