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【社説】

消費増税論議 迷走したのも当然だ

2009年1月23日

 消費税率引き上げの手順を付記した税制改正法案をめぐる自民党内の対立がひとまず収まった。景気急落のなか議論すべき課題なのか。負担増を求めるにしても政治に信頼がなければ実現は難しい。

 消費税率引き上げを含む税制抜本改革を二〇一一年度より実施できるよう〇九年度税制改正法案の付則に改革の道筋を明記する−。政府が閣議決定した税制の中期プログラムをめぐり自民党が迷走を続けた。

 麻生首相は景気回復などを前提条件に一一年度からの消費税増税を明記したかったが、反対派は行政改革など増税の前にやるべきことがあるはずだと猛反発した。

 求心力が低下する首相に、もはや押し返す力がなかったのか。付則を「一一年度までに必要な法制上の措置を講ずる」と修正する一方、「施行期日等を法制上定めるに当たっては景気回復の状況などを見極める」とあいまいにし、増税時期などを盛り込んだ法律をあらためて制定する玉虫色の二段階方式で折り合いをつけた。

 政府の〇九年度経済見通しによると、国内総生産の伸び率は0・0%程度で、マイナス成長も十分にあり得る。トヨタ自動車などの主要企業が軒並み雇用減らしを続けるなか、ソニーも非正規従業員を中心に千人規模の削減で追随した。景気対策こそ優先すべきこの時期に増税論議では、かえって消費の停滞を招くとしか思えない。

 政府は〇九年度に基礎年金国庫負担割合を二分の一に引き上げる財源を特別会計の積立金、いわゆる埋蔵金でしのいだ。限界にきた二千二百億円の社会保障費の削減分も半分以上は埋蔵金頼みだ。

 埋蔵金には限りがある。社会保障費は毎年八千億円規模で増え続けている。それを賄うために消費税増税などによって恒久的な安定財源を確保したいのだろうが、その前に付則に明記した「不断の行政改革」「歳出の無駄排除の徹底」の具体策を詰めるべきだ。それが手順というものだ。

 財務省などが当初は「ない」と言い続けた埋蔵金は〇九年度当初予算案などに十兆円以上も組み込まれた。公務員OBが税金で運営される公益法人への天下りを繰り返す「渡り」容認の政令は、公務員改革論議が迷走した機に乗じて霞が関が盛り込ませたものだ。官僚の思惑で動く政権に信頼をおくわけにはいかない。

 負担増は政府の信頼が欠かせない。行政改革を言葉でなく実行することこそが信頼を育(はぐく)む原点だ。

 

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