金融機関の破綻(はたん)は、昔から不動産融資とトレーディング(デリバティブ以前は外国為替)の失敗によるが、今回の金融危機はその両者が合体した結果、未曽有の規模となった。つまり、サブプライムローンという高リスクの不動産融資が証券化によって、トレーディング資産と化したのである。
30年代の世界恐慌以来、国家も国際機関も様々な金融危機の回避システムを作り上げ、強化してきた。
IMFや世銀による危殆(きたい)に瀕(ひん)した国家への緊急支援体制を始め、規制当局の監督・検査、預金保険制度、会計基準の透明性と統一化、格付け機関による個別企業や商品の評価、企業の危険度のシグナルとしての株価や社債価格といったマクロのリスク管理メカニズム。さらに、国際決済銀行のBIS規制や、エンロン破綻を受けて導入されたSOX法による内部統制の強化といった個別金融機関内部のリスク管理も強制されている。
今回の金融危機は、そのような平時の社会的リスク管理メカニズムが全く機能しなかったことを露呈した。金融危機が顕在化し、実物経済への影響が深刻化しだした現在では、平時のリスク管理とは全く異なる危機管理モードでの対処が必要である。
震源地の米国では、後世の評価が史上最低の大統領の一人とされそうなブッシュ氏の政権の責任転嫁が目立った。その危機対策は、ブレながらの逐次対応に終わり、危機を先送りし、増幅させた。大きな負の遺産を抱えて出発するオバマ新大統領は、その分大胆な施策が可能である。
一方、ブッシュ政権末期と似てきた我が国の政権は混迷が深まり、経済は置き去りにされている。(匡廬)