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【健康】

重症化しやすい乳幼児のヒブ髄膜炎 ワクチン接種開始

2009年1月23日

 乳幼児に髄膜炎など重い感染症を起こす細菌、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)の予防ワクチンの接種が、先月から始まった。百カ国以上で既に使われている。日本では全額自己負担の「任意接種」で高額だが効果は高いと期待されている。 (吉田瑠里)

 ヒブは5−6%の人ののどの奥にある細菌で、流行性感冒のインフルエンザウイルスとは別のもの。せきやくしゃみなど唾液(だえき)を介して感染する。多くは発症しないが、血液に侵入して髄膜(脳や脊髄(せきずい)を覆う膜)に感染すると髄膜炎になる。生後三カ月から四歳までの子どもが多く発症、特に二歳未満が多い。五歳を超えると少ない。

 ヒブによる細菌性髄膜炎は年間約六百人の乳幼児がかかり、約5%が死亡、約25%に難聴、言語・運動障害などの後遺症が残る。ワクチン導入を進めてきた国立病院機構三重病院の神谷齊(ひとし)名誉院長は「ワクチン接種率が高くなれば、日本からほぼなくすことができる病気」と指摘する。

 ヒブ髄膜炎の症状は発熱、頭痛、けいれんなどかぜに似ている。抗生物質で治療する。病気の進行が速く、朝の受診時には風邪のようでも、夕方には髄膜炎ということがある。耐性菌が増えて治療が難しい例や、感染を繰り返すケースもあり、神谷さんは「ワクチンで防ぐことが望ましい」と話す。

 生後二カ月から七カ月未満で接種を始め、四−八週間の間隔で三回、その後一年あけて一回追加で注射する。DPT(ジフテリア・百日ぜき・破傷風の三種混合)ワクチンと同時接種が可能。七カ月以上一歳未満は最初に二回、一年後に一回。一歳以上五歳未満は一回にすることができる。

 接種は予約制で費用は一回七千−八千円程度。鹿児島市、宮崎市などでは助成制度がある。東京都品川区も四月から始める予定だ。

    ■  ■

 不活化(増殖性をなくすこと)したヒブをワクチンとして注射することで抵抗力が増して、細菌の侵入・増殖に備えられるようになる。

 製造販売元のサノフィパスツール第一三共ワクチン(東京)によると、日本で百二十二人の乳幼児に四回ワクチンを接種した臨床試験では、接種後七日までに発熱1−4%、嘔吐(おうと)1−8%などが見られたが、脳炎など重い副作用はなかった。

 現行のヒブワクチンは一九八〇年代に開発され、米国など世界の百カ国以上で導入されている。米国ではヒブワクチン導入後、罹患(りかん)率が百分の一以下になり効果を上げた。一九九八年には世界保健機関(WHO)が各国にヒブワクチン導入を促している。

 「任意接種では、親の経済力や情報の有無で、子どもの健康に格差ができてしまう」−。患者の親や小児科医でつくる「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」代表の田中美紀さんは、そんな懸念から、ヒブワクチンを国や自治体が公費負担する「定期接種」にするよう訴える。田中さんは、生後四カ月で細菌性髄膜炎にかかり、五歳の今も水頭症や難聴、てんかんなど重い後遺症に苦しむ息子の母親でもある。

 また、ワクチン、治療を慎重に検討する医師の会「医療問題研究会」の会員で大阪赤十字病院救急部長(小児科)の山本英彦医師は「頻度は少ないが怖い病気で、必要なワクチンだと思う」と話す半面「日本での接種は始まったばかり。今後、副作用や安全性を見守っていく必要がある」と指摘している。

 

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