左手をリンカーン元大統領が使った聖書に置き、オバマ氏は高らかに就任の宣誓を行った。米国史上初の黒人大統領誕生の歴史的瞬間だった。
就任式が行われたワシントンの連邦議会議事堂前は、はるか遠くまで人で埋め尽くされ熱気にあふれた。新大統領の人気ぶりと、掲げる「変革」への期待の大きさが伝わってきた。
就任演説でオバマ氏は「われわれは危機の真っただ中にある」と厳しさを強調。米国再生への決意を示し、国民の積極的参画による「新たな責任の時代」を訴えた。
就任式をめぐる一連の流れで感じたのが、オバマ氏の演出の見事さだ。列車での首都入りや、ゆかりの聖書で、南北戦争による分断の危機を修復したリンカーンを自らに重ね、国民の結束による「一つの米国」の重要さを印象付けた。
人気の高いケネディ元大統領らの名演説を踏まえ、困難にも勇気を持ち積極的に貢献する大切さも説いた。建国の歴史をたどることで、後世のために苦難に挑んだ先人たちをたたえ、「今度はわれわれが子孫に偉大な贈り物を」と促す。
うなずき、涙しながら演説に聞き入る人々。打ち振る星条旗の波は新大統領と難局に挑む決意とともに、「変革」の先にある希望の輝きにも思えた。米国や世界が力を合わせ、しっかりとつかみたい。