法務大臣閣議後記者会見の概要 |
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おはようございます。
中小企業の事業承継に当たっての遺留分の問題について,各紙に記事が出ていたかと思いますが,私は昨日の読売新聞を熟読をいたしました。事実関係に間違いがあるとは思いませんが,私が提案したかのように読まれても,それでも別に構わないのですけど,私が言いたいことは,遺留分というのは,相続法において侵されることのない固有の権利として,相続が行われた場合に与えられているとても重要な権利です。したがって,国の骨格をなす民法典に書かれている相続法の遺留分というものは,非常に重要な権利として与えられているわけです。ただ,今の中小企業の事業承継ということを考えた場合に,例えば,家庭裁判所が絡むことによって,もちろん現行法でも相続の放棄ということはあるわけですけれど,事前に事業を承継する人を決めておいて,何かうまくいく方法はないだろうかという中小企業庁や経済産業省と法務省とのやり取りの中で,中小企業振興という非常に大きな目的のために,特例というものも認めてもいいのではないかという判断に至っているわけであります。ただ,これは,絶対に乱用や悪用されてはならないのであって,中小企業の事業承継が円滑に進むように,こういうケースであれば認めるというように要件を絞った上で,法律を作っていかなければならないだろうというふうに思うわけです。民法典に書かれている遺留分というのは相当重要な権利ですから,その特例はそう簡単に作れるものではありません。法務省から進んで条件を緩めて,どんなケースでも遺留分はまあという話では全くありません。中小企業政策には東京が選挙区の時代から一生懸命やっていますし,非常によく分かるのですが,万が一乱用されたり,あるいは,それがもめ事になるといけませんから,しっかりとしたスキームを作って,やはり限定的に行わなければいけないだろうと思います。
【民主党の取調べの可視化法案に関する質疑】 | |
Q: | 民主党が,今日,取調べの可視化法案を取りまとめて提出するという方針のようです。その可視化について関連するのですが,先週,広島地裁で,殺人事件で検察側が死刑を求刑している裁判がありまして,被告人の自白調書の供述を否定して,無罪になったという事案がありました。そういうものも含めて,改めて大臣の可視化に関する考え方をお尋ねしたいと思います。 |
A: | 民主党が,取調べの録音・録画,つまり可視化の法案を党内で決められたということは聞いていますし,いずれ参議院に提出をする見通しだというふうに承知をしています。それは各政党,様々な考え方があるので,私から民主党の考え方について,コメントをする立場にはございません。ただ,いつも申し上げていますように,被疑者の取調べというのは,我が国では,真相解明において,たいへん大きな役割を負っていると思います。つまり,司法取引だとか,おとり捜査とか,黙っていれば不利に解釈するとかというような,そういう考え方はヨーロッパにはあるのですが,我が国は採っていませんから,黙秘をする権利も認めていますし,おとり捜査等の司法取引は禁じられています。そういう在り様の中で,我が国の場合は,この間も申し上げましたように,有罪率が非常に高いというのは極めて慎重に捜査をして,これは有罪に持ち込めると確証をある程度得たものしか起訴しないということです。諸外国では有罪率が7割とかそういう話を聞きますと,これは弁護士さんも活躍するのでしょうけれども,日本に比べれば起訴する範囲が広いというのか,どうかなと思っても起訴をするということがあるのでしょう。そういうやり方は日本の方がいいとか,どちらがいいというのではなくて,二通りあるだろうと思います。我が国の場合は,十分に嫌疑ありと固めて,それから起訴をするのです。その時点で,取調べというのは非常に重要なものですから,最初から録音・録画を全部行うということになれば,やはり供述をなかなか得難くなると思います。特にプライバシーに関することは,おそらく非常に話題にしにくいことになるでしょう。あるいは,組織犯罪の場合は,自分の供述が全部録音・録画されると,何か痛い目に遭う可能性を考えてしまうとか,早い話が被疑者が供述をためらうという可能性が非常に高く,逆に可視化によって真相が究明できなくなると考えるものですから,現在において,全面的な録音・録画には,私は賛成できないと申し上げているわけでございます。他面,裁判員制度の導入ということを考えれば,裁判員にも分かりやすい,特に自白の任意性の証明ということが必要になってくれば,この間,裁判所がやや我々にとっては不本意な判断をした形跡がありますけれども,部分的に使うということは,今も試行しているということです。この間の広島の判決については,個別のことでございますので,私はコメントいたしません。 |
【人権擁護機関が行った調査についての情報開示に関する質疑】 | |
Q: | 先週の金曜日に,福岡県筑前町の学校でいじめにあったということで自殺をされた中学生の男の子の御両親が,大臣に面会したいという御意向もあったようですが,人権擁護局,福岡の法務局の行った人権侵犯調査の結果の記録を開示されたけれども,自分に対する聞き取り及び新聞記事のコピーを除いて,ページ数も含めて全部黒塗りだったと。自分の子どもがどうして自殺をしなければならなかったのかという事実を知りたいということで,期待をしていたのだけれども,そこの部分が黒塗りで分からないと,ぜひこの黒塗りの部分を関係者の個人名とかを除いて開示をしてほしいということで,審査請求を大臣あてに行ったということがございました。御両親が言うには,「家庭裁判所の少年審判の記録は一定の開示がされるのに,人権侵犯調査に関しては,どうして真っ黒になるのだ,おかしいじゃないか」という御指摘なのですが,これに関する大臣の御見解をお尋ねしたいのですが。 |
A: | 痛ましい事件でありましたし,私の選挙区の隣でございます。この事件は平成18年10月ですから,1年ちょっと前でしょうか,当時の吉村剛太郎文部科学部会長と私は元文部大臣ということで,町の教育委員とか校長先生とかいろいろな方とお会いをしました。非常につらい視察というのでしょうか,調査とまでは言えませんが,それをいたした経験がございます。総じて印象を申し述べれば,どうして自殺にいたってしまったのかということをどうやって解明できるのか,それぞれ関係者の口は非常に重く,そういう意味では,真相究明は不幸にして自殺されたお子さんの心理・心情の問題ですから,想像の部分も多くなるのでしょうけれども,「こういうのはどういうふうに調べればいいのか。本当に難しいですね」というのが吉村剛太郎部会長と私の共通の印象だったというふうに記憶をしています。さて,今のお尋ねの件ですが,法務局が行う調査は,確か事件の5日後ぐらいには行っていると思いますけれども,要するに強制力のある調査ではなくて,関係者の協力によって始めて成り立つ調査でございますので,全く任意の調査で,関係者から提供を受けたいろいろな資料をオープンにするということになりますと,今後,関係者からの任意の調査協力を得難くなるということで,これは部分開示が適当で,全面開示というわけにはいかないという判断を法務局がされたものだというふうに考えています。したがって,その後,当時の担任及び前校長に対する「説示」,現校長に対する「要請」等の措置は行っていますけれども,何分強制力の伴わない調査なものですから,全面開示にはちょっとなじまないという部分があったという判断だと承知しています。 |
Q: | それに関して,部分開示といっても,いわゆる新聞記事のコピー,両親の聞き取り内容以外はページ数も含めて,全部黒塗りにするというのは,全く部分開示ではなく,要するに,御遺族の知る権利というものに関しての配慮というのは,どうなのでしょうという質問があると思うのですけど。 |
A: | しかし,答えは同じなので,黒塗りと黒塗りでない割合について,私は詳しく承知しているわけではありませんが,法務局としては,やはり任意に協力してもらった部分で,ちょっとこれは開示できかねるという判断をされたのだろうと思います。その量がかなり多かったということだと思います。 |
【人権擁護法案に関する質疑】 | |
Q: | 人権擁護法案に関してなのですけれども,この間,自民党で,2年半ぶりぐらいに会合が再開したということで,会合の初回から反対派の方たちの発言も盛んだったということを聞いていますけれども,改めて再提出に関して,自民党の全体の活動の進み方等に関して,どのように考えていらっしゃいますか。 |
A: | 人権擁護法案が衆議院の解散により廃案になったのは,何年前になるのでしょうか。マスコミ等の問題が盛んに言われたこともありましたし,当然,前回の法案に極端にこだわる必要はないわけで,前回,いろいろな反対意見があったとするならば,それに配慮した内容になっていくのだろうと,私は想像をしています。これは,与党内に様々な意見があり,野党にも意見があり,皆さんにも意見があると,こういうことでしょうから,十分に審議をしていただいて,法務省としては,前回提出した閣法を一言一句変えてもらっては困るというスタンスでは全くありませんので,是非皆さんが合意できる内容にしていただければありがたいと思います。私は委員会等で答弁をしていますように,人権を守るという意味での基本法は日本に必要だと考えていますから,与党内あるいは与野党,マスコミを含めて,皆さんで合意できる内容を期待しています。 |
Q: | 昨日の太田さんなんかも,幅広すぎるところがあるとか,冒頭からおっしゃっていましたけれども,今の時点で,今下敷きになっている法案にこだわらないとおっしゃるのであれば,どこを変える余地があるとか,どの辺ならというのはございますか。 |
A: | ですから,それは今後の与党内の議論を見守り,あるいは,野党の意見も聞いていくといいますか,与野党とのやり取りもあるでしょうから,そういう推移を見守っていきたいというふうに思っています。 |
【閣議に関する質疑】 | |
Q: | 今日は閣議で何かありましたか。 |
A: | 今日の閣議は日中ハイレベル会合のことがすごく多かったのと,「予算編成の基本方針」でしたか,その点があって,無駄の徹底した排除に努めていこうというようなことで,総理からもお話があったということです。 |
Q: | 大臣から発言はされましたか。 |
A: | していません。今日は,日中ハイレベル会合とかそういうことで,各大臣から読み上げ発言がものすごく多かったのです。私は,政令の署名が二つあったかと思うのですけれど。 |
(以 上)