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2009年1月22日

◎大野のしょうゆ 海外市場へも打って出たい

 しょうゆの名産地で知られる金沢市大野町で、地域を盛り上げる「もろみ蔵」オープン を記念する「もろみ蔵冬まつり」が今年もにぎやかに行われたが、人口減少で内需だけに依存すると、じり貧だとして輸出で海外市場を開拓するメーカーも出ている。業界ぐるみで海外へも打って出てほしいものだ。

 輸出を手掛けているのはまだ一社だけである。それでも二〇〇〇年ごろから試験的に始 めたのが今では二十フィートコンテナで五−六個(年間生産量の約5%に相当)をアメリカ、フランス、イギリス、台湾、インドなど八カ国・地域に出荷するまでにこぎつけた。

 国内大手となると、海外の各地へ醸造工場を進出させている。アメリカの金融危機に端 を発した経済危機が各国に広がり、不況が世界的になった現在だが、海外市場拡大の好機ととらえ、向こう十年間に海外での醸造工場数を二倍に増やし、売り上げ三倍増を目指すメーカーもある。

 その背景には「しょうゆの国際化」がある。しょうゆは元来、日本の味だが、洋食をは じめとして世界各地のエスニック料理にも合うことが分かり、使い方も各地の工夫によってバラエティーに富み、海外での消費が伸びているといわれる。

 ただ、大野町のような中小業者の多いところでは海外に駐在させる人材の確保からして 困難であり、大手のようにいかないという問題がある。それでも協業組合として取り組む道があるわけで、海外の市場へ目を向けることがこれからの課題として浮かび上がっている。

 大野町では盛んな時代には六十からの業者があった。それが次第に減り、現在は往時の 二分の一以下になったが、それでもなお北陸三県の製品出荷量の50%強を占めている。

 能登の味「いしり」がアメリカで脚光を浴び、富山県のナシ産地では晩秋に収穫したも のを特殊な冷蔵庫で保存し、翌年の一−三月に海外へ出荷する栽培農家が出てきた。

 しょうゆも、知恵を出し合い、海外市場の市場開拓に乗り出すときを迎えたのである。

◎中国の国防白書 海洋強国の意思はっきり

 中国政府が二年ぶりに発表した国防白書は「遠洋での協力と非伝統的な安全への脅威へ の対応能力を着実に発展させる」と表明し、遠洋での作戦行動能力を向上させる方針を初めて明記した。海洋強国をめざす中国の確たる国家意思を隠さず、海軍戦略を「近海防御」から「遠海防御」へ転換することを公言したものである。

 日本政府は先ごろ、安全保障と防衛力に関する有識者懇談会を設け、新たな防衛計画大 綱の策定に着手したところである。中国の今回の国防白書は日本を警戒する表現を避け、艦艇の相互訪問など日中の防衛協力の活発化を強調しているが、新防衛計画大綱の策定作業は、まず中国の軍事動向を直視し、冷静に分析することから始めなければなるまい。

 白書にいう「非伝統的な安全への脅威」とはテロや海賊などであり、中国は昨年末、海 賊対策としてミサイル駆逐艦をソマリア沖へ派遣した。自国船舶の護衛が目的ながら、中国海軍にとっては格好の遠海防御訓練の機会であり、遠洋進出の足掛かりになる。

 白書は航空母艦の建造について言及していない。しかし、中国国防省の報道官は昨年、 「空母は国家の総合力の体現で、海軍の具体的な要求でもある」と述べ、中国の軍当局者として初めて空母建造を「真剣に研究」していることを公の場で明らかにした。

 中国が近いうちに着手することが確実な空母建造は、「中国は敵でも味方でもない」と いうオバマ米大統領の対中政策にも大きな影響を与え、アジア・太平洋地域の軍事バランスに変化をもたらすことは必至である。

 日本周辺海域では昨年、中国海軍の艦船四隻が初めて津軽海峡の公海上を通過し、海洋 調査船が尖閣諸島周辺の日本領海内に侵入している。強力な海軍力を後ろ盾にした中国の強引な海洋権益確保の動きには警戒を怠れない。

 今回の国防白書は、戦略原子力潜水艦など基本的な装備を初めて記述し、情報公開の努 力の跡をうかがわせるが、国際社会が期待する透明性にはなお遠い。


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