久坂部羊さんの小説「破裂(上・下)」(幻冬舎文庫)を読んだ。突然死の副作用がある新療法で高齢者を抹殺しようとする国家プロジェクトに、登場人物が次々と巻き込まれていく。衝撃的な内容だが「来たるべき超高齢化社会にどう立ち向かうべきか」「よりよい死のあり方とは」など、避けては通れない問題を提起している。
帰省した実家で、認知症の祖母がショートステイでつけてもらう介護日記を見た。「背中に穴が空いていると訴えられ、入浴を拒否」「部屋の雰囲気が気になる、とのことで別の部屋に移っていただく」など、現実は甘くない。気が付くと、傍らの祖母が何やら楽しげに笑っていた。「幸せであってくれたら」と願わずにいられない。(林)
毎日新聞 2009年1月21日 地方版