雑誌記事なぜ増える? コンビニのミニサイズ菓子。背後に潜む、菓子メーカーとコンビニの事情nikkei TRENDYnet1月22日(木) 10時51分配信 / 経済 - 産業
【詳細画像または表】 「キットカットミニ」、売り上げは前年の約2倍 ネスレ日本では2006年頃から、主力商品の「キットカット」のほかに、「ネスレ エアロ」と「ネスレ クランチ」でもミニサイズの商品を展開。元々「キットカット」は、2枚入り126円が定番サイズだが、ミニサイズ商品は容量的にはこの4分の1程度。さらに小さい「ネスレ キットカット ミニ」(1枚、31円)は、「ひとかけら」という大きさだ。 ネスレコンフェクショナリーのマーケティング統括部、ブランドマネジャーの竹内雄二さんは、「コンビニに昼ごはんを買いに来るOLたちを狙った商品」と話す。昼ごはんに500円ほどを使うOLたちが、デザートやおやつ時に食べる菓子を「ついでに」買うのに、ちょうどよいサイズと価格と考えたのだ。また、「いろいろな商品をちょっとずつ食べたい」という要望にも応えたかったという。 「ミニサイズには今年からさらに力を入れている」という狙いどおり、一部のミニサイズ商品では前年の2倍以上の売り上げを記録。2カ月に1度発売される、期間限定の商品も順調だ。「個包装のまま売ることでゴミが少なくなる。その点でも支持されているのかもしれない」。 同社ではこのほか、粒タイプの「ネスレ キットカット リトル」(37g、126円)やバー状になった「ネスレ キットカット バー」(1本、105円)、大きめのバー状タイプの「ネスレ キットカット ビッグカット」(60g、126円)など、味の種類だけでなくさまざまな形状の「キットカットシリーズ」を発売している。これは、選択肢を増やし、さまざまなシチュエーションで食べられることを想定しているため。味の種類と形のバリエーションを組み合わせ、より多くの層に訴える狙いだ。 「小枝の実」、職場での「ながら食べ」狙う 森永製菓では、12月2日に(※)定番商品「小枝」シリーズから、「小枝の実」(34g、105円)を発売した。コンビニエンスストアと駅売店で販売し、ターゲットは20〜30代の社会人男女。初年度で3億円、次年度5億円の売り上げを見込む。 同社によれば、今年3月に、週に1回程度コンビニでチョコレートを買う1000人を対象にネット調査を行った。その結果、チョコレートを食べるのは仕事の合間であることが多く、「ながら食べ」の際の食べやすさを重視する声が多かった。この結果を受け、「手が汚れない(チョコレートが手につかない)こと」、「取り出しやすいこと」を加味して企画されたのが「小枝の実」だ。特殊なコーティング技術を表面に施すことで、従来の製品に比べ、チョコレートの「ベタつき」が大幅に抑えられている。また、女性が1回で食べきる量を念頭に、1袋あたりの量を少なめにし、価格を抑えた。 「小枝」シリーズには、体積比が従来の20倍という「大樹の小枝」(今年1月発売)もある。これは社会人男性をメインターゲットとした製品。元々、同社の調査によれば、コンビニエンスストアでチョコレートを購入するのは、これまで7割が男性だった。だが、昨年11月の価格改定以降、製菓業界全体が苦戦傾向にあり、今後は女性客にアピールすることを検討。ターゲット層を拡大して、売り上げを伸ばす考えだ。 「ビスコ」はコンビニ限定のミニサイズ商品も すでに10年以上前から個包装で販売しているのが江崎グリコの「ビスコ」シリーズ。1989年に、個包装のビスコの詰め合わせパックを発売し、売り上げが好調だったことから、1995年に個包装のみでも販売を始めた。「ビスコ」のキャッチコピーは「歯が生えたその日から」で、子どもをメインターゲットとした商品だが、個包装は持ち運びやすい手軽さが受け、学生や社会人も買うようになった。特に、OLの間でも人気となったことが、予想外の反響だったという。 「バブル景気の頃は、値段の高い商品がよいとする風潮があった。バブル終了後、『小さくてかわいい』商品の需要が増えた」(グリコ広報IR部) 現在は、コンビニエンスストア限定のミニサイズ商品を定期的に発売。2008年は「ミルクティー」と「ピーチヨーグルト」、2009年2月からは「いちごみるく」と「チョコキャラメル」を発売する予定だ。 ミニサイズの菓子は、コンビニエンスストアにどのような効果をもたらすのか。月刊「コンビニ」(商業界)の矢作勉編集長は、「背景にコンビニ市場の硬直があるのではないか」と話す。日本フランチャイズチェーンの発表によると、2007年のコンビニエンスストア全体の売上高(国内主要11社、既存店ベース)は前年に比べ1.0%減の6兆8134億円。8年連続で前年実績を割り込んだ。これまでのメインターゲットだった男性客だけではなく、新たな顧客層として女性や高齢者を視野に入れた経営戦略が必要になっている。「各社が女性の利用客を新たなターゲットとして狙っていることは確か」(矢作編集長)。女性客の反応の大きいミニサイズ菓子は、まさにコンビニエンスストアが望んでいた商品といえるだろう。 また、「客単価を上げる」という面でも、低価格の製菓には効果がある。通常、1品しか買わない客も、「ついで買い」できる安い商品があると、2品目、3品目に手を伸ばしやすい。客1人当たりの購入商品点数を増やすことで、全体の売り上げ向上につなげられる。 「以前は『安くものを売っている』というイメージはスーパーだけのもので、コンビニにはなかった。だが今後、消費者が価格に敏感になることで、コンビニにも『安さ』を求めることは十分ある」(矢作編集長)。コンビニエンスストアの商品であっても「お得感」を感じられる商品が、今後求められるのかもしれない。 矢作編集長によれば、コンビニエンスストアで販売数が伸びたヒット商品の例としてボトル入りのガムがあるという。当初、眠気防止でガムを噛むドライバーのために自動車のカップフォルダに入れられるサイズとして開発された商品だったが、思いがけずオフィスの机に置いておく人が多く、コンビニで売れた大ヒット商品となった。仕事をしながら、個数を気にせず、日常的にガムを噛むビジネスパーソンが少なくなかったということだ。容器、容量をアレンジした、食べるシーンにフィットする商品という点は、ミニサイズ菓子も同じ。ボトル入りガムに続く、コンビニ発ヒット商品となる可能性を秘めているのだ。 (文/小川たまか=プレスラボ) 【関連記事】 デザートだけでフルコース! ミシュランシェフによるデザートレストランという新業態 安全・安心な野菜はどこに?(2)“進化”した「直売所」が都心に進出 ピクルス味だってあるぞ! 怪しい味の米国版チューチューアイス 大行列必至の「サロン・デュ・ショコラ」。内外の専門家5人がチョコの最新トレンドをやさしく解説 安全・安心な野菜はどこに?イトーヨーカ堂、モンテローザ…異業種参入が相次ぐ理由
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