有限会社 桃園電設
許容電流とは、規格上電線などに流すことのできる最大の電流のことです。物体には電気抵抗があり、その物体に電圧をかけて電流を流すと抵抗によって発熱します。電線などの導体にも小さいながら抵抗があり、その発熱によって絶縁被覆が溶解すれば電気は短絡したり、場合によっては発火したりします。そのため電線にはそれぞれ許容電流が定められてあり、配線用遮断器などでこれを保護します。
電線とケーブルの違いは、以下の通りです。
絶縁電線・・・図1に示すように、導体を絶縁体で被覆した電線で、一般的にシース(外被)のないもの。
図1 絶縁電線
ケーブル・・・図2に示すように、線心(導体に絶縁を施した一本一本の絶縁電線)の上にシース(保護外被覆)を施した電線。
基本的に、電線を使用するのは配管内や機器内やボックス内に配線する場合であり、ケーブルは露出配線する場合で使用致します。
電線・ケーブルの耐用年数
社団法人 日本電線工業会「絶縁電線専門委員会」発行の「技術資料107号」からの抜粋です。
一般の電線・ケーブルの設計上の耐用年数は、その絶縁体に対する熱的・電気的ストレスの面から20年〜30年を基準として考えてあるが、使用状態における耐用年数は、その敷設環境や使用状態により大きく変化する。なお、ケーブルが正常な状況で使用された場合の耐用年数の目安を以下の表に示す。
電線・ケーブルの種類 | 布設状況 | 目安耐用年数 |
絶縁電線(IV,HIV,DV等) | 屋内、電線菅、ダクト布設、盤内配線 | 20〜30年 |
屋外布設 | 15〜20年 | |
低圧ケーブル(VV,CV,CVV等) | 屋内、屋外(水の影響がない) | 20〜30年 |
屋外(水の影響がある) | 15〜20年 | |
高圧ケーブル(CV等) | 屋内布設 | 20〜30年 |
直埋、菅路、屋外ピット布設(水の影響がある) | 10〜20年 |
<注意>移動用のキャブタイヤケーブル等は、使用状況により耐用年数は大きく異なり、一概に決められない。その使用状況に見合った耐用年数を考えて更新してゆく必要がある。
VVFケーブルについて
住宅等の屋内配線によく使用されるビニル絶線ビニルシースの平型ケーブルです。直射日光や紫外線に対しては強くないので、屋外で使用する際は配管等で日光等が当たらないようにする必要があります。
VVFケーブルを「VAケーブル」とか「Fケーブル」と電気屋さんや電材屋は今でも俗称で呼んでいます。何故?と疑問に思ったので調べたところ、西日本ではVAケーブルと、東日本ではFケーブルと昔は呼ばれていたそうです。VAは「ビニル・アーマー(ビニル製の鎧)」、Fは「フラット(平らな)」という意味だそうです。VVFという名称に規定されたのは昭和39年3月で、「600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平型」からVVFという名称になったそうです。
ちなみに、屋根裏など周囲温度が高くなる場所での使用頻度が高いため、メーカが推奨する許容電流値はかなり低めに設定されているそうです(メーカに確認)。3芯のうち1本がアースで使用している場合は、2芯の許容電流値を用いる。また、単相3線の中性線は線芯数に含まないので、2芯の値を使用する。表1にVVFケーブルの簡単な仕様を、図3にVVFケーブルの写真を図示しておきます。
表1 VVFケーブルの簡単な仕様
名称 | 600V ビニル絶線ビニルシースケーブル(平型) |
準拠規格 | JIS C 3342に準拠 |
耐圧 | 1500V/1分 |
導体最高温度 | 60℃ |
許容電流値の算出 | 周囲温度40℃の場合 |
1.6mm-2芯 | 許容電流値 18A |
2.0mm-2芯 | 許容電流値 23A |
1.6mm-3芯 | 許容電流値 16A |
2.0mm-3芯 | 許容電流値 20A |
図3 VVFケーブルの写真
CVケーブルについて
住宅の引込み口配線や工場の電力配線に使用される架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルです。ケーブル被覆に耐候性の素材を使用していますので、そのままの状態で風雨にさらされる屋外や地中に埋めて使用することができ、表面が黒色であるため、直射日光や紫外線に対して耐性があり、そのまま露出で使用できます。導体は「より線」が一般的です。
架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルの英訳は「Cross-linked Polyethylene Insulated Vinyl Sheath Cable」で、下線部からCVケーブルと呼ばれているみたいです。なお、架橋(Cross-linked)とは「二つまたはそれ以上の分子が橋をかけたような形で結合すること。ゴムや合成樹脂は橋架け結合によって強度や弾性を増す」ということらしいです。温度があがって溶融しないよう、架橋と呼ばれる特殊な化学処理を施されたポリエチレンのことらしいです。
架橋ポリエチレンの耐化学薬品性(架橋ポリエチレン管工業会より)
↓薬品名 温度→ | 25℃ | 50℃ | 75℃ |
水道水 | ○ | ○ | ○ |
海水 | ○ | ○ | ○ |
河川水(横浜市内) | ○ | ○ | ○ |
30%塩酸 | ○ | ○ | ○ |
10%硝酸 | ○ | ○ | ○ |
20%硫酸 | ○ | ○ | ○ |
20%酢酸 | ○ | ○ | ○ |
20%クロム酸 | ○ | ○ | ○ |
20%カセイソーダ | ○ | ○ | ○ |
10%アンモニア水 | ○ | ○ | ○ |
50%ホルマリン | ○ | ○ | − |
エチレングリコール | ○ | ○ | − |
酢酸エチル | ○ | ○ | − |
50%フェノール | ○ | ○ | − |
メチルエチルケトン | ○ | ○ | − |
シクロヘキサン | ○ | △ | − |
エタノール | ○ | ○ | − |
ベンゼン | ○ | − | − |
四塩化炭素 | ○ | △ | − |
トリクロルベンゼン | ○ | △ | − |
ガソリン | ○ | − | − |
JIS 2号絶縁油 | ○ | ○ | ○ |
ASTM 2号油 | ○ | ○ | ○ |
A重油 | ○ | ○ | ○ |
C-マシン油 | ○ | ○ | − |
評価基準 | ■ | ○: | 引張強さ、破断伸び保持率とも90%以上 |
△: | 引張強さ、破断伸び保持率とも70%以上 | ||
−: | 試験液の蒸発で試験不能 |
低圧配線用として、VVFやVVRに比べ耐熱性(90℃)にすぐれ許容電流を大きくとることができます。3芯のうち1本がアースで使用している場合は、2芯の許容電流値
を用い、4芯のうち1本がアースで使用している場合は、3芯の許容電流値を用いる。表2にCVケーブルの簡単な仕様を、図4にCVケーブルの写真を図示しておきます。高圧用もありますが、ここでは低圧用のみの資料とします。
表2 CVケーブルの簡単な仕様
名称 | 600V 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル |
準拠規格 | JIS C 3605に準拠 |
耐圧 | 1500V/1分 から 3000V/1分まで(表2では) |
導体最高温度 | 90℃ |
許容電流値の算出 | 周囲温度40℃で気中(露出配線)・暗きょ(ピット内配線)の場合 |
線芯数 | 断面積[sq] | 許容電流[A] | 耐圧[V] |
2 | 3.5 | 39 | 1500 |
5.5 | 52 | 1500 | |
8 | 65 | 1500 | |
14 | 91 | 2000 | |
22 | 120 | 2000 | |
38 | 170 | 2500 | |
60 | 225 | 2500 | |
100 | 310 | 3000 | |
150 | 400 | 3000 | |
200 | 485 | 3000 | |
250 | 560 | 3000 | |
325 | 660 | 3000 | |
3 | 3.5 | 33 | 1500 |
5.5 | 44 | 1500 | |
8 | 54 | 1500 | |
14 | 76 | 2000 | |
22 | 100 | 2000 | |
38 | 140 | 2500 | |
60 | 190 | 2500 | |
100 | 260 | 3000 | |
150 | 340 | 3000 | |
200 | 410 | 3000 | |
250 | 470 | 3000 | |
325 | 555 | 3000 |
図4 CVケーブルの写真
CVTケーブルについて
主に工場の電力配線に使用される架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルです。ケーブル被覆に耐候性の素材を使用していますので、そのままの状態で風雨にさらされる屋外や地中に埋めて使用することができ、CVケーブルと同様に表面が黒色であるため、直射日光や紫外線に対して耐性があり、そのまま露出で使用できます。導体は「より線」が一般的です。
トリプレックス型架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルの英訳は「Triplex
Cross-linked Polyethylene Insulated Vinyl Sheath Cable」で、下線部からCVTケーブルと呼ばれているみたいです。なお、
低圧配線用として、CVケーブルに比べ許容電流を10%程度大きくとることができます。当社では基本的に14sq以下ではCVケーブルを用い、22sq以上の太さになる場合、CVTケーブルを用いる場合が多いです。表3にCVTケーブルの簡単な仕様を、図5にCVTケーブルの写真を図示しておきます。高圧用もありますが、ここでは低圧用のみの資料とします。
表3 CVTケーブルの簡単な仕様
名称 | 600V トリプレックス型架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル |
準拠規格 | JIS C 3605に準拠 |
耐圧 | 1500V/1分 から 3000V/1分まで(表3では) |
導体最高温度 | 90℃ |
許容電流値の算出 | 周囲温度40℃で気中(露出配線)・暗きょ(ピット内配線)の場合 |
線芯数 | 断面積[sq] | 許容電流[A] | 耐圧[V] |
3 | 8 | 62 | 1500 |
14 | 86 | 2000 | |
22 | 110 | 2000 | |
38 | 155 | 2500 | |
60 | 210 | 2500 | |
100 | 290 | 2500 | |
150 | 380 | 3000 | |
200 | 465 | 3000 | |
250 | 535 | 3000 | |
325 | 635 | 3000 |
図5 CVTケーブルの写真
IV電線について
各種屋内配線工事(金属管・塩ビ管等)に使用したり、制御盤内で使用するビニル絶縁電線です。当社では制御盤内の交流回路配線(リレーなど)にIVの黄色1.25sqを標準として使用しております。ケーブルではないので露出配線での使用は不可です。線色には黒、白、赤、緑、黄、青があります。表4にIV電線の簡単な仕様を、図6にIV電線の写真を図示しておきます。
表4 IV電線の簡単な仕様
名称 | 600V ビニル絶縁電線 |
準拠規格 | JIS C 3307に準拠 |
耐圧 | 1500V/1分 (表4では) |
導体最高温度 | 60℃ |
許容電流値の算出 | 周囲温度30℃の場合(がいし引き配線や十分放熱が可能な盤内配線など) |
0.5sq | 許容電流値 5A(KIV線) |
0.75sq | 許容電流値 7A(KIV線) |
1.25sq | 許容電流値 19A |
2.0sq | 許容電流値 27A |
3.5sq | 許容電流値 37A |
5.5sq | 許容電流値 49A |
8sq | 許容電流値 61A |
14sq | 許容電流値 88A |
22sq | 許容電流値 115A |
38sq | 許容電流値 162A |
60sq | 許容電流値 217A |
100sq | 許容電流値 298A |
150sq | 許容電流値 395A |
200sq | 許容電流値 469A |
250sq | 許容電流値 556A |
325sq | 許容電流値 650A |
図6 IV電線の写真
MLFC電線について
配電盤、制御盤などの内部配線、モーター用口出線として使用できます。耐熱性に優れ、難燃性で、可とう性(電線が柔らかいため曲げて配線しやすい)にも優れています。表5にMLFC電線の簡単な仕様を、図7にMLFC電線の写真を図示しておきます。
表5 MLFC電線の簡単な仕様
名称 | 600V 難燃性ポリフレックス電線 |
準拠規格 | 電気用品技術基準 |
耐圧 | 2200V-3500V/1分 |
導体最高温度 | 110℃ |
許容電流値の算出 | 周囲温度40℃の場合で導体温度90℃と110℃ |
14sq | 許容電流値 113A(90℃) 134A(110℃) |
22sq | 許容電流値 148A(90℃) 175A(110℃) |
38sq | 許容電流値 208A(90℃) 247A(110℃) |
60sq | 許容電流値 279A(90℃) 332A(110℃) |
100sq | 許容電流値 384A(90℃) 455A(110℃) |
150sq | 許容電流値 509A(90℃) 604A(110℃) |
200sq | 許容電流値 605A(90℃) 717A(110℃) |
250sq | 許容電流値 717A(90℃) 850A(110℃) |
325sq | 許容電流値 838A(90℃) 994A(110℃) |
VCTFコードについて
電源用や制御用などの目的で非常によく使用されています。電源用途としては屋内で使用する300V以下の小形電気器具の電源コードとして、電動工具など電線が酷使される器具に使用されているのをよく見かけます。また、制御用多心ケーブルとしてリレーやシーケンサなどの接点信号を入力したり出力したりするのに良く用いられています。多芯では0.3-1.25sqで50芯のシリーズまで用意されており、また、シールド加工品もあるのでノイズ対策もできます。表5で一般用途として使用される場合の仕様をまとめておきます。写真は図8に示します。資料はカワイ電線より。
表6 VCTFコードの簡単な仕様
名称 | 300V ビニルキャブタイヤ丸形コード |
準拠規格 | JIS C 3306 |
耐圧 | 1000V/1分 |
導体最高温度 | 60℃ |
許容電流値の算出 | 周囲温度30℃の場合 |
線芯数 | 断面積[sq] | 許容電流[A] | 耐圧[V] |
2-4 | 0.75 | 7 | 1000 |
1.25 | 12 | ||
2.0 | 17 | ||
3.5 | 23 | ||
5.5 | 35 | ||
5 | 0.75 | 4 | |
1.25 | 7 | ||
2.0 | 10 | ||
6 | 0.75 | 4 | |
1.25 | 7 | ||
2.0 | 9 | ||
7 | 0.75 | 4 | |
1.25 | 6 | ||
2.0 | 9 | ||
8 | 0.75 | 3 | |
1.25 | 6 | ||
2.0 | 8 | ||
10-12 | 0.75 | 3 | |
1.25 | 5 | ||
2.0 | 7 | ||
14-16 | 0.75 | 2 | |
1.25 | 4 | ||
2.0 | 6 | ||
20-22 | 0.75 | 2 | |
1.25 | 4 | ||
2.0 | 5 | ||
24-30 | 0.75 | 2 | |
1.25 | 3 | ||
2.0 | 5 | ||
40 | 0.75 | 2 | |
1.25 | 3 | ||
2.0 | 4 | ||
50 | 0.75 | 1 | |
1.25 | 3 | ||
2.0 | 4 |
図8 VCTFの写真
銅バーについて
分電盤の幹線や分岐によく用いられています。また、制御盤の主回路にも用いられています。銅バー表面にはスズメッキ(はんだを薄く塗ったようなもの)がしてあることが多く、銀色のものが大半です。以下に示す表7はJIS(C8480)のキャビネット形分電盤の規格です。
表7 JIS(C8480):キャビネット形分電盤の銅バー電流密度
電流値 | 電流密度 |
100A以下 | 2.5A/mm2以下 |
225A以下 | 2.0A/mm2以下 |
400A以下 | 1.8A/mm2以下 |
500A以下 | 1.5A/mm2以下 |
表7と日東工業の銅バーの規格を照らし合わせて表8にて比較してみます。
表8 銅バー規格表
許容電流(A) | 日東工業の推奨断面積(mm2) | 表7からの計算値(mm2) | 電流密度の想定値 |
60 | 32.2(14mmX2.2mm) | 24 | - |
100 | 54(18mmX3mm) | 40 | - |
200 | 100(20mmX5mm) | 100 | - |
225 | 120(20mmX6mm) | 112.5 | - |
300 | 168(28mmX6mm) | 167 | - |
400 | 224(28mmX8mm) | 222 | - |
600 | 400(50mmX8mm) | - | 1.5A/mm2以下 |
800 | 500(50mmX10mm) | - | 1.5A/mm2以下 |
1000 | 750(75mmX10mm) | - | 1.33A/mm2以下 |
1200 | 1000(100mmX10mm) | - | 1.2A/mm2以下 |