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栄華と転落…小室被告「虚構の列車、やっと止まった」

2009年1月22日

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写真初公判を終え報道陣の前で頭を下げる小室哲哉被告=21日午後5時すぎ、大阪市北区、代表撮影

 21日に大阪地裁であった音楽プロデューサー小室哲哉被告(50)=5億円の詐欺の罪で起訴=の初公判では、杉田宗久裁判長の指示で証拠とされる供述調書の全文が朗読された。検察側は被告本人や関係者が捜査検事に語った言葉の数々から、小室被告の「栄華と転落」の軌跡を法廷に浮かび上がらせた。

 「約3億円のベンツのほか、フェラーリやポルシェなどスポーツカー9台を次々に買い集めた」「米カリフォルニアやハワイ、インドネシア・バリ島の3カ所で別荘などの不動産を買った」……。

 検察側によると小室被告は取り調べの中で、ミリオンセラーを連発した90年代の生活をこう振り返った。音楽ユニット「trf」のメンバー5人にパーティーで各1千万円を贈ったり、「globe」メンバーにユニット名にちなんで962万円を配ったりもしたと語ったという。

 しかし、ヒット曲が減って状況は激変した。レコード会社から契約を打ち切られ、00年には前渡し金18億円の返還を求められた。

 香港で立ち上げた音楽事業会社は、上場した01年の株価急落で70億円の含み損を抱えた。小室被告は「このつまずきが私の人生の大きな失敗になった」と供述したという。この会社をCDの売り上げから入る「プロデュース印税」の受取先にしていたため、経営から撤退した後はその収入も失ったとされる。02年には前妻と離婚し、7億8千万円の慰謝料を背負った。

 01年には大手都銀から10億円を借りた一方、02年に再婚した妻に高級車やブランド品など数億円の贈り物もした。「湯水のように金を使い、最もぜいたくをした時期」だったが、小室被告は「妻と過ごす安らぎが何よりも大切と考えた」と振り返ったとされる。また、当時の心境について「坂道を下っている実感があった」とも語ったという。

 小室被告のこうした生活ぶりについて、資金管理を任されていた担当者は任意の事情聴取の際、「せめて出費を半分に抑えてくれれば何とかやっていけると説得したが、聞き入れてもらえなかった」と供述したという。

 調書の朗読の中では、音楽著作権の「二重譲渡」の問題も出てきた。検察側によると、資金繰りが悪化した04〜06年、小室被告はレコード会社などが著作権を所有する806曲のうち主な約300曲の著作権を自らの芸能事務所など2社に二重譲渡したとされる。関係者の供述によると、有名曲の著作権を所有することで事務所の信用を高め、出資金を集めやすくする狙いなどがあったという。

 こうした経緯を経て小室被告は高金利の融資に手を出し、返済に追われ、起訴事実となった詐欺を実行したとされる。著作権が譲渡済みであることを隠し、まとめて10億円で売却するとして男性投資家から前払い金5億円を詐取した罪を、初公判で小室被告も認めた。

 検察側が読み上げた、小室被告が自ら事件を振り返ってつづった文書にはこうあった。「あてのない、暴走するしかない列車。最後は皆さんに急ブレーキをかけてもらい、虚構の列車はやっと止まった」(阪本輝昭、龍沢正之、小幡淳一)

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