◆[山形市]旅篭町三・相生町・錦町 青空広がる元旦(2009平成21年1月1日撮影)


どよんと沈殿した不況の澱を吹き払うように、元旦早々冴え渡る青空。
「繁盛!繁盛!」の威勢のいい声が、湯殿山神社から蒼穹へほとばしり響き渡っている。

雪の中から頭を出して、
何事だべぇと行列を眺める雪囲い。

木の枝は熊手のようにして引き寄せようとするが、
初詣で頭がいっぱいの人間には通じない。

「なして誰も座らねんだべなぁ」
「新年早々で誰もくたびっでいねがらんねがよ」
「真っ白い先客いだもの、誰も座らんねっだず」

「帰ったら茶碗蒸しくだい〜」
「・・・」
「なんで無視すんのやぁ」
茶碗無視。

「早ぐバス来ねがなぁ」
六日町バス停は、全身に日差しを浴びながら首を伸ばしてバスを待つ。
「ただ立ってるだげだったら、工事ば手伝だたらなんた?」
スコップの看板は、チラチラとバス停に視線を向けながらブツクサ言う。

天に向かって思い思いにタクトを振るのは、長い年末年始休暇の暇つぶし。

「こだい天気いい元旦て何年ぶりだず」
「昨日食たご飯も忘れんのに、ほだな思い出すはずないべず」
いづだず?と聞いて、会話はあらぬ方向へ逸脱する。

無断で駐車禁止とは書いてあるが、
無断で影を貼り付けてならないとは書いてない。

「元旦なたら、めっきり人来ねぐなたなぁ」
「たまに来っかど思うど、なんだが恥ずがしいみだいして、ちぇちぇっと帰ていぐまはぁ」
元旦を過ぎると、ポストに年賀状を入れる時に心がチクリと痛むから。

「おまえんどごさ誰も来ねなぁ」
「おだぐんどごさも来ねどれぇ」
おせち料理とアルコールにまみれる人々は、自販機に用はない。

「一仕事したもはぁ、ちぇっと休むべぇ」
白く積み上げられた雪から離れ、
体に着いた雪の汗を流し合うダンプ。

晴れ渡る空へ電信柱が意気軒昂に背を伸ばし、マンションの壁が白く輝く。
御祭禮の提灯は、腹一杯に冷気を吸い込み通りを眺める。

太陽が上空へ移動し、光の角度が徐々に変わる。
影になっていた壁に窓に凍った道路に光が伸びてくる。
空気がアマけてきて、キロキロに凍っていた路面もアマけ、道行く人々も気分がアマけてくる。

「なんだて眩しいごどぉ」
夜通し灯っていた御祭禮には、さぞ日中の日差しが眩しかろう。

赤い幟に誘われて、人々は神明神社に吸い込まれてゆく。

「山形の人だの喜ぶ顔が見っだいがら、こうしてペダルば・・・」
建前はさておき、「風邪ひぐなよ〜、バイト料が待ってっからな〜」

あんまり日差しが強いものだから、
黒々とした影が地面を這い回る。

あんまりどんどん焼きの匂いが誘うから、
カメラを向けずにいられない。

人生いろいろだけど、おみくじはみんな寄らば大樹の陰にへばりつく。

「おらだのおかげだべ」
「何が?」
「おらだのおかげで雪さ埋まらねで、みんな初詣するいんだべ」
ぶすりと雪に突き刺さり、ダンプは爽快な汗の滴を流す。

ピリピリとヒビを入れるように枝を伸ばし、
今年も繁るぞーと空へ向かい意志を固める。

元旦の神社は、ゴム長を並べた陳列棚。

細い枝に結ばれたおみくじ。その枝を支えるように一方から枝が伸びる。
日差しのまなざしに気付いて、おみくじが微かに揺れる。

老若男女が引きも切らずに訪れる。
お祭りと初詣の時だけは、神社の磁力が強力になるようだ。

小さな影が大きな影へ両手をかけてせがんでいる。
「早ぐ雑煮食せでけろー」
「勉強すねごんたら食せらんねっだなぁ」
「んだておみくじさ、願い事はすぐに叶うて書がったっけじぇ」
「お母さんのさは、馬の耳に念仏であるべして書がったっけも」
「今年は丑年だじぇえ」
「んだら、牛歩戦術だぁ」

「おかなくて、そーっと歩がんなね。地面キロキロて凍ったものぉ」
今年は下を向きながら、狭い道をそーっと歩く年になるんだべが。

すいません、勝手にカメラが覗いてしまいました。
人のおみくじ見て、我がふり直せ。

「ケッツあたかくてこだえらんねぇ」
炎に尻をかざし、一息つくおばちゃん。
ビニール袋は食べ過ぎで身をよじり、バケツは空へ大あくび。

「バンバンくべろ〜、去年の悪れっけごどば、みな灰にしてけっからー!」
ちょっとハイになりすぎたか。

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