◆[東根市]関山・上悪戸 白い薄皮を羽織る(平成20年1月4日撮影)


白い薄皮のような雪を羽織った東根市・上悪戸の村。
奥羽山脈のどん詰まりにある村に朝の光が降り注ぐ。

雪原にザグザグ刺さり、平成20年はどんな年になるのだろうかと、
雪片を受け流しながら考えるミラーたち。

屋根や枝に弱々しく積もった雪は、綿飴のように淡く儚い。
これで気を許してはいけない。まもなく雪は牙をむく。

雪原を這うバイクの音が、やがて白黒の森に吸い込まれていく。

関山街道沿いでは、仙台に最も近い村。
ここからなら仙台の町中へも一時間以内で行くことができる。
山形市内のスーパーへ買い物に行くなら、仙台の愛子生協店へ行った方が近いかも。

トロトロ走るり去る車を、
溶けた雪に濡れながら、感情を隠し無表情で眺める実。

全身を真っ赤にして周りを威嚇するドラム缶。
火は人の心の用い方次第。

失いかけた色彩の名残。
やがて真っ白い闇の覆うときがくる。

犬ころは口角を上げて笑いかける素振りを見せる。
安堵しカメラを向ける。
突然思いっきり吠えられビクッと首をすぼめる。

山形市内の道路はカワカワに乾いている。
やはり雪は落ち着く場所を選んで降っている。

寒風に小刻みに震えながら、
時折垂らすのは、溶けた雪に交じった鼻水か。

山間の底にある上悪戸から、国道48号を見上げる。
ガチガチに固められた斜面の上には国道沿いに家並みが並び、その隙間を時折トラックや車が左右に行き交う。

国道48号を絶え間なく行き交う車のうなり声も、
ここにたどり着くまでに濾過されてシュンとなる。

青や黄色の重ねられたバスケットは、
ずれながら積み上げられたテトリスか。

雲が切れ、樹木の陰が黒く浮き上がる。
それでも黄色いキリンは微動だにせず無表情で空を見上げる。

「ずっと太陽が出でっど、おらだ楽なんだげんとなぁ」
「天気は根性曲がりだもなぁ」
板塀にもたれかかりながら、ひとときの世間話に花が咲くスコップ。

体中に綿飴をからみつけながら、
振りほどくすべを知らずに、身をよじる枝。

小さな村だもの、住民はどの家の家族構成もすべてインプット済み。
それが村を存続させていく術でもある。

「頭冷やすだいげんと、今年は頭さ雪積もらねもなぁ」
雪は柿の実にとって、天然の冷えピタなんだな。

「近頃は雪かきも楽なもんだぁ」
エンジンをブルルと掛けて音が遠ざかる。

雪を何回かぶったら春がやってくるのか、
堅い蕾は指折り数える。

窓枠にからみつき、茶色に乾いた夏の忘れ物。
赤く輝き、雪原へ落ちる勇気も萎む秋の名残。

この村にもインフラが整っていることを誇示するように、
コンクリートの電信柱がズドンと屹立している。

「そのうぢ総動員さんなね日が来っから、
それまで休んでおげぇ」
それぞれが壁にもたれて、それぞれの思いに耽っている。

「朝、起ぎんの辛いぃ〜」
「布団から出んのやんだ〜」
「あど五分寝させでけろ〜」
頭から雪布団をかぶって外を伺う野菜たちは、睡眠時間がもっと欲しいと訴える。

関山街道はどこまで行っても天童市だと思っていた。
川原子を過ぎれば東根市なんだな。
赤いキャラクターが東根市をさりげなく、でもはっきりと主張する。

地面には杉っ葉が茶色くなって横たわり、
枝から落ちてきた滴が、雪に小さな穴をブツブツ開ける。

みんなが体を寄せ合って、こごまりながら寒風に耐える冬。

「どご見でんのや〜」
水車の目はモップに釘付け。
「雪溶げるまで刺さったまんまよ〜」
汚れたひげ面を寒風に晒し、モップがうめく。
二人の間を冷たい風が通りすぎ、会話はそのまま流されてゆく。

「タイヤなの無くても、気合いで前さ進むつもりだ!」
「無理すんなよ」
春になって、車が一ミリでも前に進んでいたら褒めてあげたい。

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