◆[寒河江市]西寒河江駅・六供町 厳寒に晴れ渡る(平成20年1月19日撮影)


「まなぐシカシカて、まぶしいごどぉ」
「近頃高級な灯油缶のごどが?」
ありったけの光をまき散らす路面の上を、ゆらゆらと運ばれてゆく灯油缶。

陽も高く登り切らないうちだから、電柱の影が雪解け真っ最中の地面にのうのうとぬだばる。

まぶしさをものともせず、誇らしげに太陽を見上げる寒高のバス停。

スリップ注意!の看板を遠くから伺う寒高のバス停。
受験シーズンだから滑り止めのことを考えないわけにはいかない?

西寒河江跨線橋の上から、柴橋・大江町方面を望む。
一大ショッピングゾーンが出来、久しぶりに訪れると浦島太郎になってしまう。

寒高への登り坂。
丘の上に立つ校舎って、青春ドラマの舞台みたいだな。

転ばないようにと、かかとの金属スパイクを持ち上げる。
ザクザクと石垣を這う自分の足音。

「分厚い化粧になる前に、引っぱがしてけっかどもてぇ」
まだ薄化粧の間に、路面の素肌を出しておこうとスコップをふるう。

長岡山の上に広がる青空を、電柱と軒先が切り取る。

120度の角度で折れる枝先は、
赤らみながら綿帽子をかぶる。

「滑る坂道だもの、車来たったてすぐ脇さどげらんねのよぅ」
ワラワラと壁際に寄ろうとしても、足元の氷が邪魔をする。

氷の中にうずくまり眠っていた時間を、催促するように滴が落ちる。
太陽が昇るとともに、滴の催促は早くなる。

男は肩を怒らせ、女は腰をくびらせ、手洗い場のパイプは喉をねじ曲げ。
ベージュの壁面を左から右へ、影が少しずつ這ってゆく。

寒河江八幡宮にも太陽が降臨し、木々たちは喜びの歌を青空へ振りまく。

「寒くて、ちょどしてらんねもぁ」
雪をかぶって押し黙るおみくじの脇を、足早に通り過ぎる。

掃き清められた階段を下りて、
雅楽の調べが微かに追いかけてくる。

陽光が梢を揺らし降り注ぐ。
赤い鳥居をくぐり、通りをゆく車の音が入り込んでくる。

「こっだい寒いどぎ、よぐ凍らねでいられるもんだ」
手水舎の柄杓は俯いて何も答えない。

白い漆喰がこれ以上なく輝き、
白い帽子をかぶった赤い実もこれ以上ない笑顔を振りまく。

ザザザーっと日陰の雪道を通る車の音は、日なたの濡れた路面ではニチャニチャと音を変える。
そんな車の音を聞きながら、西寒河江駅へ向かう。

この看板にピンとくる昭和世代。

だらだらの下り坂の先へ轍が消えてゆく。

水路の脇により集まって、水の流れをのぞき込み、
あーでもないこーでもないと、裸の枝を振り振り談義する。

地図の標記では、跨線橋と西寒河江駅は重なっている。
直に見て分かった。小さな駅舎じゃなくて、ホームが重なり合っているんだな。
小さな疑問が氷塊し、今日の空のようにすっきりする。

町中へ買い物に行っていた昔。
今は線路を越えて郊外へ買い物に行くという逆転現象。

パコパコと路面をたたく足音が、
不純物の無い大気へ直接反射する。

「ざげんなよぅ」
息も絶え絶えなのに強がってみせる、ひっくり返った自転車。
「素直に起ごしてけろて謝れ。つららが狙ったぞ」

同じ環境なのに、素直に成長する者、ねじ曲がって斜に構える者。
跨線橋の下でつららがどんどん伸びてゆく。

「ちぇっと、ほごの汽車!行がねでけろぉ!」
おばちゃんが小走りになる。
昔のバスのように待ってはくれない今の電車。

テラテラと真っ白に反射する路面を、黒い影が盤面の駒のように行き交う。
こんな青空がそう長く続くもんじゃないと知っているから、嬉しくて今のうちに雪の外へ出たがる山形人。

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