◆[米沢市]伝国の杜・松岬公園(2008平成20年4月29日撮影)

春を満喫するには、空の際に近い芝生を目指す。

「こごからだど見晴らしいいべ」
「んだなぁ、みな見える」
見えないのは、お互いの心の底だけ?

伝国の杜イベント会場から大音響が響き渡り、
花びらはあっけにとられて口をあく。

熱狂に包まれる。汗がライトにきらきら光る。
さあ、上杉祭りの始まりだぁ。

押しとどめようもなく、せり上がってくる鼓動。
まもなくその鼓動の音を凌駕する音響が体を包む。

「もっと足上げでぇ、なしてほだい堅っだいのやぁ」
米沢人は質実剛健で何事にも堅いんだっす。

緊張する少女へライトが照射され、ほつれ毛が淡く光って浮かび上がる。

伝国の杜は、春と初夏が交わりあう。

「こっちの鯉さ餌けっかどもったのに、あっちの鯉がさらてったはぁ」
鯉が餌を争奪する以上に、恋の行方は誰にも分からない。

春霞の「天」にも昇る気持ちで、米沢の「地」に溢れる「人」々。

踏んづけられるために居るのか、腰掛けられるためにあるのか、
存在意義に悩み続ける切り株悲し。

「おれ近づぐど、花も近づいでくっじぇ」
「気のせいか、桜の木のせいっだな」

「魚ば捕んなど」
「魚ば放してもだめだど」
「魚ば撫でてけるくらいいいべぇ」

「あどなに食う?」
「甘ごいのも、しょっぱいのも食たしなぁ」
人生の甘ごい、しょっぱいは今から味わう。

日の当たらない場所から、一生懸命枝を伸ばす桜の木。
誰にでも等分に光が当たれば、何も言うことはない。
◆[高畠町]安久津八幡宮・時沢(2008平成20年4月29日撮影)

こんな優等生的な光景が目の前に広がっていると、
空を泳ぐ鯉のように、口をポカンと開けて見入るしかない。

空に漂う春の日差しを、掌で包み込むチューリップ。

菜の花たちは、空へ近づく競争が一段と激しくなる。

「もっと右みぎぃ。あっ、ちょっと左ぃ」
「早ぐ撮ってけろぅ、足しびれるはぁ」
菜の花たちのクスクス笑いが、あたり一面に広がる。

「こだんどご歩いでっど、恋に落ちそう」
「どごが見でっど、足踏み外して落ぢでいぐべな」

左右から浴びる優しい視線に、進路を決めかねヨチヨチ歩く。

「近づいで見っど迫力あるねぇ」
三重の塔が放つ威厳は、千年以上の昔から。

スライムたちは行儀良く並び、春の彩りを静かに見守る。

安久津八幡神社の春まつりを控え、
いにしえの調べが杉木立を渡ってくる。

舞の上達ぶりを感心しながら、どこへも出かけず石段で待つシューズ

「晩ご飯なんだべ」
「うごぎに決まてっべしたぁ」
うこぎの待つ我が家へ、足取りも軽い。

花びらは、塔の先っちょへ触れようとして、微かに揺れる。

「どのアングルから撮ったらきれいだべなぁ」
三重の塔は撮られることに慣れっこで、何を言われようが凛として動かない。

腹いっぱい春の陽気を吸い込み、順風満帆と満足げに泳ぐ鯉。

山形への帰路、ぶどうまつたけラインを通って赤湯へ抜ける道。
親子がゆったりとペダルを漕ぎながら、緩いカーブをゆるりと進む。

置賜盆地の彼方、上方45度から突き進んでくる日差しが、ハウスに反射しギラリと目を射る。

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