◆[上山市]矢来・南町 立秋を鼻で笑う残暑(2008平成20年8月9日撮影)


前川に背骨が白く浮かび上がる、残暑の上山。

「通学路のため・・・ですので・・・ご遠慮下さい・・・」
よれよれになりながら訴える。

今日も暑ぐなるんだべがと、
ひょいと首を持ち上げ空を見つめる。

「早ぐうっちゃ帰てオリンピックの体操ば見らんなね」
前川に架かる橋を渡りきり、
栄光の架け橋を見るために、サドルから腰を上げペダルを漕ぐ足に力を込める。

少しばかり涼しく感じられるようになった風に背中を押され、
白いシャツの自転車は軽やかに滑っていく。

絶対出さない事!って黄色い声で断定しても、
夏の日差しにとってはのれんに腕押し。

上山の街角は、緑の侵略を寛容する懐の深さがある。

もやもやと白濁した大気が、矢来の街並みにうっすらと堆積してゆく。

ぺたっとガラスに張り付いた小さな手のひらを、
太陽はちょいとくすぐるように白く照らす。

降り注ぐ日差しは、後から後から次々とアスファルトにぶつかって跳ね返り、砕け散って街角に散乱する。

柔らかい木漏れ日の落ちる神社の境内に、
すべてひらがなという柔らかい表現。

塀の隙間から秋の兆しは見えないが、
山交バスならはっきり見える。

ちょろりちょろりと手水舎の水。
誰もいない寂しさを紛らすように独り言。

「ちぇっと休憩っだなぁ」
眩しい光に溢れる上山駅前で、シートを倒してクーラーを効かせる。

輪になった石畳へ、
太陽はダーツを楽しむように、日差しを幾千本と刺してくる。

「柵越えはしないでください」と看板。
上山駅東口ではホームランを打ってはいけないらしい。

「後ろから笑い声が聞こえね?」
「暑くて耳おがしぐなたのんねがよ」
駅のホームには、笑顔が絶えない。

「あっづくて、チョーダルビッシュだずねぇ」
「冷ったいのばがぶ飲みすっだいど思わね?」
夏の蔓は電信柱をがぶ飲みしている。

「逆さになても鼻血も出ねぇ」
干上がった如雨露の嘆きを蛇口は聞き流す。

よせばいいのにフェンスの外に顔を出してから咲いてしまった。
ひまわりは首を抜くことも出来ず、引っ込みの付かない状況に追い込まれている。

手のひらより大きい花びらをおっぴろげ、
渋谷センター街をたむろする女の子たちのように、儚い夢を物色するアメリカフヨウ。

道路に跳ね返された日差しは、白壁に寄りかかり、そのまま素知らぬふりして染みこんでいく。

「こっちゃ来い、撫ででけっから」
花びらの甘い言葉に身を寄せる自転車。

「イキパーン、イキパーン!」
意味不明な言葉を発して自転車が過ぎる。
なーんだ看板の事か。
いきなりパンツを食らったようにびっくり。

上山にはかかしのように一本立ちした、
独特の貨幣制度があるらしい。

火垂るの墓で節子が探していたサクマドロップスは、
上山でいまだに生きていた。

新幹線に日本一近い植木鉢は、日本一風圧に耐える植木鉢だった。

夏の日差しを避けるように、大通りから一本脇の小路に入る。
昭和がそのまま息づき、思わず歩む速度が緩くなる。

「暑いがら、なるべぐ端っこ」
自転車は、これ以上ない隅っこによって主人を待つ。花たちはちょっと気になって顔を出す。

通りの白茶けたけだるい車の騒音を、朝顔は聞くともなく聞いている。

「花開きまーす」
斜め45度になって、空を見上げ咲く準備。

茶色い色は昭和の色。
先行き不安な平成に身を置いているだけに、
昭和の色が輝きを増して見えてくる。

上を新幹線が走る。
下をのんびり自転車が過ぎる。
スピードに上下関係があるものか。

地下でふれあう?
なんだか淫靡な匂いが立ちのぼる。

「しゃね振りして通り過ぎんのがぁ?」
「そう言うおっさんは手伝わねのが?」
坂道で勝手に走り出そうとするリヤカーを、
おばさんは押さえるのに必死。

「ぎっつぐ手ば握てろよ」
「わがてる。変なおじさんが見でっからだべ?」

昼時が近づき、ついさっきまでゲートボールに興じていたおじさんおばさんは帰っていった。
潮が引いたように静けさを取り戻すはずの公園へ、すぐ脇の高架橋から車の騒音がヒタヒタと流れ落ちる。

夏の靄(もや)った空の下、まだまだ残暑は続く。
通りの向こうにカミン、そして上山城。

「髪の毛乾がねぇ」
「ほのうぢ乾ぐがら気にすんな」
「髪乾いだし、喉も渇いだぁ」
足並み揃えてサンダルの底を見せ、心の底を見せ合うプール帰り。

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