◆[山形市]美畑町・末広町 霧晴れて溢れる光(2008平成20年11月15日撮影)


毎朝通勤途上に車上から眺めている、霧に包まれた馬見ヶ崎川。
末広町へ行く前に、是が非でもカメラに納めたいと回り道。

柔らかい日差しを浴びたエノコログサは、河原一面で波打ちながら微笑んでいる。

徐々に顔を出し始めた青空を、残り少ない葉っぱがくすぐる。

まだ晴れきらない霧のなか、ま〜るい千歳山がボワンと浮かぶ。

「みんな飲み過ぎんねんだが?」
自分は一年でどれだけ飲んでいるんだろうと考え、
糖分は当分控えようかとダジャレでごまかす。

「糖分摂りすぎんねんだがよ」
ほっぺたを膨らまし、くびれだらけの体へ毒づいてみる。

霧が大気の中へ静かに引き下がっていく。
黒いアスファルトが溢れ始めた光をテラテラと反射し始める。

道路脇のポールにも青空が張り付き始める。

「イデデ!ほだいぎっつぐひにぎんなぁ」
「ヘラヘラてしゃべてばりいっからっだな」
路端のポールは、口をすぼめて洗濯ばさみに哀願する。

「オバQだが?」
「んねっす」
「国体のたいき君だが?」
「んねず!」
「もしかしてムーミン?」
「ごしゃぐがらなぁ!」
「今はやりのゆるキャラが?」
「いいがら早ぐタイヤ交換してけらっしゃい!雪降っじゃあ」
ゆるゆるな体躯でタイヤ交換を呼びかけるミシュラン君にちょっかいを出す。

ほんの小さな叢(くさむら)が、光をため込むだけため込んで冬に備える。

「もっと光さ当だっどごさ生えっどいいっけはぁ」
「光さ当だっだいだげでいいの?おれは宝くじさ当だっだいげんとなぁ」
「おらだは光さ当だてっど、ほんで幸せ。人間みだいに欲たがりんねもの」

美畑町や末広町は新興住宅街と旧市街の狭間にある町。
やはり新興住宅街にはない落ち着きがある。

「はやぐドンガラ汁食だいの〜」
「おだぐ庄内人?」
「NOと言える庄内人ったなぁ」
自転車は顔突き合わせ、出身地を懐古する。

背中に箒とチリトリ。
ゴミの戦場へ向かう現代のサムライか。

人の手が行き届かないところへも、太陽は日差しを送り込んで草花を眩しく輝かせる。

ビルを覆う蔦が真っ赤に色づき、
ムーミン谷から這い上がってくる騒音を聞き流す。

ムーミン谷の鉄橋も、秋を迎えて赤く色づく?

ムーミン谷をひっきりなしに通過する車列に興味は無い。
ただひたすら、ガードレールの隙間から漏れる光を求める雑草たち。

「まだ入ったどれ」
中身の入ったペットボトルは、こんなところに捨てられたことへ腹が立たないか?

「いやぁ天然の絨毯だまぁ」
ショリショリと踏んでいく足元に、砕けた欠片が絡みつく。

「虫食ったどら」
「風通しいいぐしっただげだぁ」
真っ赤になって言い訳する線路沿いの葉っぱたち。

「新幹線通るたんび手振るんだげんと、誰も気づがねぇ」
冬も近づき、誰かに構ってもらいたいザクロ。

「地面ば掃ぐだけんねくて、たまには空の雲ばも掃いでみっだい」
それこそ箒の高望み。

「ツルンコツルンコだどれは」
「ツルツルだて言う前に、
よぐこごまで働いだなぁていう感謝の気持ちは無いのが」

家並みの隙間から漏れこぼれて、バーコード模様を道路に造る晩秋の日差し。

「人や車が側溝さ落ぢねように立ってんのが?」
「んだぁ、紅白だがら目出度いていうわげんねのよ」

千歳山の見える小路に干し柿。
山形人垂涎の光景が散りばめられている街角。

県立西高の向こうに千歳山。そして穏やかな小春日和。
雪を待つ街角に、ひとときの安息が満ちる。

「少しずつ値上げすねで、いぎなり値上げすっどいいんだぁ」
「んだどみんな辞めっべぇ」
看板へ向かって暴論を吐き、けじめの付けられない自分にイラつく。

「ほいずぁ大変だっけなぁ」
「んだのよ〜、しゃますしたぁ」
家事の大事を路上で話す。

「いづまで黒と黄色の縞模様でいるつもりや?」
「みんなが安全になるまでだっす」
「ちぇけだなベイビー、建前はいいがら本音ばゆてみろ」
エノコログサは穂に光をため込んだからなのか、やがて降る雪に怯えているからなのか、高揚して多弁になっている。

スカッと晴れ渡った空に向かい、深呼吸する花びらたち。

「地面さ落ぢんのやんだも」
「いづまでえんつたげでるつもりや。早ぐ土さ還れ」
自然の摂理は、銀杏の葉っぱが寄り道するのを許さない。

朱に交われば赤くなる。
銀杏に交われば黄色くなる。
紅葉は黄色くならないように銀杏から目を背けているようだ。

「こさもいだっけが、地面さ還っだぐない葉っぱ」
「引っかがて落ぢらんねぐなただげだぁ」
蜘蛛の巣のように張り巡らされたフェンスにガッシと掴まれ、身動きもままならない。

仰向けになり空を見上げる者、腹ばいになり砂粒を数える者、横臥して子供たちの様子を見守る者。
多種多様な落ち葉たちの行く末。

「なにぃ?」
蛇口はのろのろと首を回し、面倒くさげに上を振り向く。

「空気乾燥してはぁ、体がパキパキよぅ」
子供たちを相手にしていたギッコンバッタンは、一休みしながら近況を語る。

ゆらりゆらり揺れるブランコに、影はゆらりゆらりと後をついて地面を行き来する。

「変なおんちゃんから見らっでっから目ば細めっだのが?」
「真っ正面から太陽が見つめっだがら眩しいだげだぁ」
小春日和の中で、ブランコに揺られる親子の姿に目を細める。

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