◆[山形市]幸町・八日町二・香澄町三・十日町四 徐々に晴れ間も(2008平成20年12月13日撮影)


すっかり葉っぱを落として、身軽になった銀杏の木を見下ろす電信柱。
重い機器を抱えたまんまの体に寒風が巻き付く。

駅西と駅東を結ぶアンダーパスの工事中。
この道路が出来れば、車の流れは大きく変わる。
雑然とした工事現場を、霞の向こうから白鷹の連山が見守っている。

ビルに囲まれ、寒風のたまり場になっていそうな小さな公園。
週末の夜には、千鳥足がたま〜に通り過ぎる一角。

「雨や〜雪が入り・・・ので・・・扉を・・お・・願い・・しまぁ・・・」
雨や雪の湿気で、よれよれになりながら扉にしがみつく。

「燃えるような意志は無いのが?」
「ほだな気力ないっす」
消火栓に聞かれ、意気消沈するゴミ篭たち。

黒々と固まる一群。
主の乗らない週末は、寒風に身を縮めながら月曜日がくるのをじっと待つ。

「ニシグチカラエキマエニデルノ、ベンリニナッタネ」
「ジダイハコクコクト、ウゴイテイルノデス」
看板に描かれた人々は、無機質な会話を繰り返す。

寒さをこらえられない銀杏の葉っぱは、
緑の中へ我先にと潜り込む。

「俺のこの姿ば見ろ〜!まなぐどさ付けでるんだ〜!」
怒りにまかせてフェンスが訴えるけれど、北風は素知らぬふりしてスイスイとくぐり抜けてゆく。

事細かに分別を説明する看板。
寒いときには口が回らず大変だ。

顔を出した太陽を反射する気力だけは残っているらしい、
蓋にへばりついた雨水の残り。

「ほだいおかがて来んなずぅ、重だいったらぁ」
「人という字は、人と人がおかがてる姿なんだじぇ」
「おらだは人んねし、この姿は入るていう字だし」

掃がれ落ちそうな「幸」を、離すものかと針金が必死に抱える。

「ほだい迫て来んなずぅ、安心して水汲みしてらんねぇ」
真新しいバケツは迫り来る塀に怖じ気づく。

雪が積もる前の地面はカラフル。
水滴が褪せた彩りを濃く蘇らせる。

駅前の騒音がここまでたどり着く間には、すっかり性格も丸くなってしまう。

「ちゃんと並べず、行儀悪れったら」
「おまえ、この列んねどれ、あっちゃ行げ」
トタン屋根で乾いた音を奏であう。

「ほんてん?さっぱりしゃねっけぇ」
「なえだて、たまにはテレビば見ねどー」
道をまたいで会話が行き交う。

「寒いがら、もっと近寄れ」
「ほだいくっついだら恥ずかしいべな」
「誰も見でねがらぁ」
睦まじいバイクが寄り添う路地。

「なんだて水彩絵の具で染めだみだいだぁ」
冷たい風吹くアスファルトへ、含んだ日差しを柔らかな笑顔に替えて辺りに振りまく。

ようやく陰鬱に沈んだ町へ光が届き始めた。
町は彩りが蘇り、師走の忙しなさを醸し出す。

通りの車や人々、そして雲や空を映し出してきた窓のガラス。
いつも何かを映して見せるだけで、自分の色を見せようとはしない。

闇の中にポッと灯る灯りのように、
寒気の中にポッと咲き、人の目を引きつける。

艶々の肌に、雲から顔を出した太陽が小さく宿る。

「重だくてよぅ、腕ば持ぢ上げでんのも大変よ」
腕をプルプル震わせながらも実を落とさないのは、引力との力比べ。

「あど沢山だは〜」
「もうちょっとなんたよ」
如雨露が水をかけようとしても、植木鉢は遠慮する。

地を這うような生活もあるし、壁を伝うような生き方もある。
冬の弱い陽が壁を柔らかく照らし、ほんの少しだけ枯れた植物に温もりが戻る。

「片っ方さだげ荷物たがぐど、体傾ぐぅ」
左ハンドルに荷物をぶら下げ、主を待つバイクがぼやく街角。

「バスなのとっくに行ったじゃぁ」
「うそだべぇ、んだらおらだはこごさ置いでいがっだのがぁ」
ペットボトルに教えられ、信じられない思いで遠くを見る空き缶。

「昼間はほんてん休む暇なの無いのよう」
寒風を縫って走る岡持バイクを、蔵は目の端に捕らえながらも悠然と構える。

「どだい見らっだて気にする必要ないべ」
沢山の窓から見られ続けても、気にする風もない蔵。

「せっかぐ町さ行ぐんだがら、何がんまいもの食だいぃ」
「家さホッケの塩焼き残ったべぇ」
冷たい路面に明るい声が後を引く。

小さな滴に日差しが宿り、イルミネーションが昼間から輝く。

「いままでどだな尻ば乗せできた?」
「でっかいのもあれば、ちゃっこいのもあっけし、刺さるみだい堅っだいのもあっけがなぁ」
立ち入り禁止の場所に追いやられ、ベンチの思いでも尻すぼみ。

空から雲がスーッと消えていく。
水面が青い深みを増していく。
水底に沈んだ落ち葉へ、か細い枝が手をさしのべる。

「うー、長い時間外さいっど寒くてかなわねぇ。近ぐなてしょうないのよ」
トイレに立ち寄りホッと一息し、ふと外を覗いてみる。
真っ黒い蒸気機関車が、スイッと目を逸らしどこかを見てる。

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