◆[山形市]七日町二・四・五・緑町三 年越しを阻む大雪(2008平成20年12月28日撮影)


12月20日に撮った夜景と比べて欲しい。
同じ場所から撮っているのに、夜景があっという間に銀世界に変わった。

「どごが車道だが歩道だが、さっぱりわがんね」
世の中は不況に塗り込められ、山形は真っ白に塗り替えられた。

隙間から入り込んでくる光にヘッドライトと路面が反射し、
いっしょに入り込んできた冷気に、車は表情が凍り付き、濡れた路面もカチカチに凍てつく。

「とんだお荷物ば背負ってしまたはぁ」
尻だけ屋根の外に出していた車は、雪の格好の餌食となっていた。

ガラス一枚の内と外との気温差を思い、
心がゆるむのも凍てつくのも、紙一重の世の中だと知る。

「一晩で雪景色になたがら、びっくりしったまんま固まったのが」
「んねぇ、あんまり降って顔から表情と色ば失ったんだぁ」

ちらっと顔を出す青空も逃げるように去って、あっという間に白い雲に覆われる。

「おまえガダガダ振るえっだべ」
「狭いどごで反響するんだず」
「動いでいねど耐えらんね」
スコップも雪かきも消火栓も、カタカタ震え空気をピリピリ鳴らす。

「仲間だべぇ、まじぇでけろ」
「色が同じだげで役目が違うがら」
絶対離れないぞと、青い傘が食らいつく。

まもなく雪に飲み込まれて自転車は見えなくなってしまう。
雪を振り払って青々とした葉っぱが心配そうに覗き込む。

「どっちゃ行ったらいがんべなぁ」
雪が進路を隠し、途方に暮れる。

「なんぼ鼻かんでもズルズルてすっきりすねのよぅ」
「垂れだ鼻水凍ったどれはぁ」
鼻水はこれから益々伸びる予感がする。おだいじに。

「なんだて降ったなえぇ」
「んだずぅ、たまげだぁ」
「あんまり突然でよぅ、心の準備もでぎでねっけぇ」
人々の言葉が白い路面の至る所で滑り転がっている。

「みんなで守ろう、うつく・・・ぅ」
かけ声もあっという間に白魔から飲み込まれる。

立ったワイパーでかろうじて車の位置が分かる駐車場。
「空きは有っげんとも、雪で満杯だはぁ」

「せっかぐの年末年始も、雪かきで終わっかもすんねなぁ」
「家の中でごろごろしてんなて言われるよりいいべぇ」

陰鬱な冬の山形には不似合いな鮮やか模様が、雪道をモックラカックラしながら遠ざかる。

「髪型ちぇっとリーゼントっぽいんねが?」
「誰だ俺の脇さいんの、まなぐ隠っでさっぱり見えねぇ」
スノーダンプは笑いをこらえて下を向く。

一陣の風が専称寺を吹き抜ける。
白い雪煙の中に浮かび上がる大銀杏。

誰もいないものだから、ジャングルジムを雪が独り占め。

「寒い時、猿だがみな集まて身ば寄せ合う姿ば猿団子て言うんだど」
「おもしゃい言い方するんだねぇ」
柄杓とバケツはカタカタカチカチ、笑っているのか震えているのか分からない。

「押すなずぅ、俺さ雪かかっべな」
「おまえがおつけっからっだな」
箒は降りしきる雪を見上げ、身を縮める。

ぽつぽつ灯る赤い実を完全に隠すほど、礼儀を失っていない12月の雪。

みんな一斉にべんべろべぇと舌を出す。
突然やってきて、人を食うその態度はなんだ。

「ワラワラ宅配さんなねがら、この季節はクールでなのいらんねぇ」
忙しすぎる宅配便の人々の足下をすくう雪。

「人間腰が基本だがら、ほれヨイショ」
「日本の足腰は、かなり弱ったのんねがぁ」
「日本の将来より、目の前の雪だず」

突然の北風に、人は首を縮めてフードを被る。
突然の不況に、人は首をすくめて財布を締める。

突然不況が襲い先行きが見えなくなるように、
突然の雪は信号を隠して進路を見失わせる。

「おかなくてゆっくりんねど歩がんねぇ」
足元を見ながらソロソロ歩く。
大股で闊歩していた時代が嘘のよう。

「今日はサービスだじぇ」
赤い札が誘いかける。
オレンジのスコップは、突っ立ったままいつまでも目を離さない。

「溺れる〜、プフフー」
かろうじて口だけ出して助けを求める瓶。
後の瓶はただ口笛を吹く振りして知らんぷり。

クリスマスの残り香へ、突然の寒波が雪と氷柱のプレゼントを強引に押しつける。

「たまには柔らかい雪ば積むのもいいべ」
「柔らかい雪も、溶けで凍っど態度が豹変すっから気を付けらんなねんだ」

一本一本のスポークへ丹念に執念深くまとわりつく雪。
自転車は観念し、遠い春を待つしかない。

年末のざわめきが通路に流れ込み、冷たい雪に混じりあって凍り付く。

「段ボール片付げねど来年来ねがら」
かじかむ手で段ボールをしっかり抱え、今年の仕事を片付ける。

「雪はほんてん始末悪れぇ」
「雪のおかげでやっと冬らしくなてきたねぇ」
通りを挟んで、雪へ対する思いは正反対。

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