今年がうし年だからというわけではないだろうが、牛に関する注目される報告書が出された。体細胞クローン牛を食べても安全とする内容だ。
報告書をまとめたのは内閣府食品安全委員会の専門家作業部会で、体細胞クローン牛と豚は「食品として、通常の牛や豚と同等に安全」としている。将来的にクローン食品が出回る可能性が出てきた。
体細胞クローン技術を使えば、皮膚や筋肉などの体細胞を提供した牛と同じ遺伝的特徴を備えた牛がつくれる。肉質が良く、乳量の多い牛の「コピー」が期待される。国内各地の畜産試験場などでは昨年九月末までに五百五十七頭が生まれた。
おいしい肉を安く食べられるようになればうれしい。とはいえ、食卓に載るのは抵抗がある。生命の誕生は神秘的なものだ。予想もできない事態が起こらないのか。簡単に安全宣言を出すべきではないし、心理的な不安をぬぐい去ることは難しかろう。
世界初の体細胞クローン動物は羊だった。一九九六年に英国で生まれて「ドリー」と名付けられた。牛や豚、マウスもつくられた。いずれクローン人間が生み出されるかもしれないと危ぐされる。
人類は原爆など大量破壊兵器を開発した。このままクローン技術を進歩させても、人間作製を封印することができるのだろうか。