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『仕事場訪問 名作はここで生まれる』
社会学者・宮台真司の聖域

 
2009/01/13

仕事場訪問 名作はここで生まれる
さまざまなジャンルで活躍するトップ・クリエイターの仕事場を訪問し、そこから生み出された数々の名作のお話を聞く。




原稿執筆の最終段階は、自宅の書斎で

大学の研究室のPCも同じスタイルにしているのだとか。外出にはiPhoneとmacのノートを携えて
大学の研究室のPCも同じスタイルにしているのだとか。外出にはiPhoneとmacのノートを携えて
 社会学者・宮台真司の仕事場は、主に3つあるという。ひとつは、現在務める首都大学東京の研究室(ここは学生たちの集うサロンと化しているらしい)、もうひとつは、執筆目的で2カ月に1度のペースでこもる山荘、そして今回取材させていただいた、自宅の3階にある書斎。ここで、宮台真司は原稿を書く。

 「実際に原稿を書くまでには、いくつかの段階があります。まず紙のノートに概念図を描き、次にアイデアプロセッサを使って、PC上でさらに整理をする。それから実際の執筆作業に入るんです。概念図を描くのは、散歩している時や車の中、大学や講演先など思いついた時に。その方が思いつめて始めるより、いいものが書けるから。外出の時はいつも、携帯パソコンとiPhoneを持って出かけるので、いつでも書斎の資料を見ることができるし、インターネットで調べることもできる。便利さゆえに、すっかりIT漬けの生活です(笑)。そして原稿の最終段階はここでやります。ダブルディスプレイにすると、3つくらい資料を開けながら、原稿を書くことができるので楽ですよ」

家の中で仕事をするのは、優先順位の結果(苦笑)

壁一面に置かれた本棚には、資料が並ぶ。最近は、映画のプレス資料などはスキャンしてPCに宮台氏オリジナルのデータベースを作っているのだとか
壁一面に置かれた本棚には、資料が並ぶ。最近は、映画のプレス資料などはスキャンしてPCに宮台氏オリジナルのデータベースを作っているのだとか
 そう、ここは原稿執筆の最終段階が行われる聖域なのだ。自宅では仕事ができないタイプの男性も世間には多いようだが?

 「それは優先順位の結果でしょうね(苦笑)。家の中で仕事をすれば、必ず子どもに1日2時間は使ってしまいますけど、それは仕方がないというのか……。その分、子どもとは密な関係を築けますから。時々、外出先でよその家の子どもとお父さんの関係を見ると、僕が家にいることで与えられるものはとても大きいと実感します。たとえば、子どもが描く僕の顔には必ず口がある。妻やほかの人の顔には口がないんです。つまり子どもにとって、僕はいつも喋っている人なんですよね。そういうのも一緒にいるからだろうと。そしてこの関係は、子どもにとっても、僕にとってもいいような気がする。昨年の秋に出版した2冊の本は、こういう環境の中にあってようやく書けた本だと思っています」

<世界>の中に生きている感覚を持つための新作はここで生まれた

書斎に置かれた鉄製の人形は、彫刻家・藤井健仁作(藤井誠二氏の弟)の「海を見る少女」
書斎に置かれた鉄製の人形は、彫刻家・藤井健仁作(藤井誠二氏の弟)の「海を見る少女」
 「14歳からの社会学 これからの社会を生きる君に」(世界文化社刊)と「<世界>はそもそもデタラメである」(メディアファクトリー刊)について、宮台氏は「<社会>の中で生きながら<世界>の中に生きている感覚を持つための、前者が入門編で後者が上級編」と語る。

 「こんなに暗く不安定な時代を生きているからこそ、現代は、老いも若きも映画オタクも(笑)、<社会>の本当について深く考える人が増え、人々が成熟しているのだと考えます。そういう受け手側の変化に、映画でも本でも作り手たちは追いつかなくてはいけないという危機感を、この2冊を書きながら感じていました。結果、それがこれまでの僕の著作の根底にあった諦念を、肯定感に変えたのかもしれません。諦念とはたとえば、何か希望していたけれども、それがうまくいかなくて断念したというような、ある種の落差の経験を前提にした感覚だと僕は考えています。でも今って、人々があまり高い期待を抱いていない時代ですよね? だから諦めについて語る必要性がなくなっているとも言える。むしろ願望を持ったことがないから免疫もないという時代。だからこそ、本来自分たちには理屈を超えた力があること、どんな断念があっても前に進めることを書いた方が有意義なんじゃないかなって。もともと人間なんて大したことはできないし、世の中はいつも滅茶苦茶なんだけど、そんなことは百も承知の上で、それでもヴィヴィッドに<世界>を体験できること。加えて、デタラメな<社会>を生きる人々が、それでも前進するとすればどうすればいいのか? を伝えたいという思いがこの2冊には強くありました」

 そしてこの2冊には、今までになく、宮台真司の実存が見えるという興味深い共通項もある。これまで以上にメッセージが深く届くのは、自宅で仕事をしながら、子どもの成長もちゃんと見守るという氏の父親としての背景も影響しているのかもしれない。

宮台真司 Shinji Miyadai
1959年3月3日宮城県生まれ。首都大学東京教授。東京大学大学院博士課程修了。社会学博士。テレクラ、援助交際、オウム問題、郊外、専業主婦、少年犯罪、学校崩壊、盗聴法など、多くの分野で発言を行う。主な著書に、「権力の予期理論—了解を媒介にした作動形式」「制服少女たちの選択」「終わりなき日常を生きろーオウム完全克服マニュアル」「まぼろしの郊外—成熟社会を生きる若者たちの行方」「絶望 断念 復員 映画—「社会」から「世界」への架け橋」などがある。
→宮台真司氏のofficial weblog http://www.miyadai.com/

上から、宮台氏の最新著書2作「<世界>はそもそもデタラメである」(メディアファクトリー刊/1365円)と「14歳からの社会学 これからの社会を生きる君に」(世界文化社刊/1890円)



photographs by Tomoko Tominaga, text by Kana Ishimura(Variety Japan)

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